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【米大統領選】:ヒラリーが抱える「もう一つの選挙戦」真の勝敗は・・・

2016-11-08 06:15:30 | 国際・欧州・中東・アフリカ・北米・南米

【米大統領選】:ヒラリーが抱える「もう一つの選挙戦」真の勝敗は連邦議会選で決まる ■エレクション・デイ直前レポート

 乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:【米大統領選】:ヒラリーが抱える「もう一つの選挙戦」真の勝敗は連邦議会選で決まる

 エレクション・デイ直前レポート 

 ◆「大統領選挙」に隠れているが…

 ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンの支持率は「再捜査」問題で縮まっている。これが「もうひとつの選挙戦」に悪影響を与えれば致命傷だ。「もうひとつの選挙戦」とは連邦議会選挙、とりわけ上院選挙だ。

 大統領選挙に勝利しても、議会選挙で民主党が勝てなければ、就任初日からヒラリー政権は「レームダック」政権になってしまう可能性がある。

 上院選では、あの「負けたはずの男」、共和党の期待の星マルコ・ルビオも静かに復活中だ。「大統領選に敗退したら公職を去る」との約束を撤回。フロリダで再選に王手をかけている。

 「もうひとつの」選挙の意味と動向を解説する。

                                                  〔PHOTO〕gettyimages

* * *

 偶数年の11月第1月曜日の翌日の火曜日は「エレクション・デイ(Election Day)」と呼ばれる。4年に1回オリンピック年に大統領選挙が行われ、そうでない間の年を中間選挙という。

 しかし、「大統領選投票日」ではなく、あくまで「エレクション・デイ」なのは、同日多数の選挙が行われるからだ。

 たとえば、連邦議会選挙である。下院は2年ごとに改選なので全議席、上院も3分の1の議席が改選される。大統領選挙と同じ投票所で、同じ投票用紙(画面)で行われる。

 日本でいえば、衆院選と同時に行われる最高裁判所裁判官の国民審査に似た「セット」感だが、有権者の関心事の比重からすると似て非なるものだ。

 「国王」と「首相」を兼ねたような人物を選びながら、片方の院の全議席、もう片方の3分の1を改選する方式で「衆参同一選」をやっているようなものだといえば、このアメリカの「選挙の日」のインパクトをおわかりいただけるだろう。

 ◆大統領選挙の投票率を左右する

 選挙直前でCNNなどの全国メディアだけを見ると大統領選挙一色だ。だが、この時期、アメリカ観光や出張のついでに大統領選挙の雰囲気でも味わえれば、という方は要注意である。オハイオ、フロリダといった「激戦州」とそれ以外の州では事情が異なるからだ。

 民主党、共和党のどちらかが圧倒的に強い州に行くと、大統領選挙のCMはあまり流れていない。大半の非激戦州は、州知事選、上院選、州議会選、市議選などのローカル選挙のヤードサイン(庭に立てる紙の立て札)であふえかえっている。ニュースも地元の選挙戦ばかり。電話や戸別訪問も地元選挙の呼びかけだ。

 投票所に行く「気力」、すなわち投票率は、各州・各選挙区の地方選挙の盛り上がりに左右される。地方選挙に行き、(その州ではどうせ予定調和だったりする)大統領選挙にも「ついでに」投票するという感覚の有権者は少なくない。

 大統領候補2人の競争を見る「全国支持率」の何ポイント・リードというのは、指標としては参考程度の意味合いしかない。

 州ごとにまず総取りで勝敗を決めてからの選挙人の「足し算」においては、各州の議会選の接戦度などが投票率にリアルな影響を持つ。「大統領選挙だけのため」に選挙に行く人は、党派的な人にはあまりいないからだ。

 ◆もし上院で多数派をとれなかったら?

 今回、3つの理由で連邦議会選挙、特に多数派逆転の可能性がある上院選が注目だ。

 1つは、ヒラリー政権が実現したとしても、その行方を握るのは連邦議会選挙の勝敗だからだ。アメリカの大統領の立法権限は極めて限られている。大統領側の政党が議会で多数派を握ってなければ、野心的な法案は何も通らない。

 振り返れば、オバマ大統領の大型景気刺激策、医療保険改革法など目玉の立法成果は、すべて1期目の最初の2年間だ け。その時期だけ民主党が上下両院で多数党だったからだ。

 2010年の中間選挙で民主党は大敗し、下院で少数党に転落。ティーパーティの台頭もあって、「片肺飛行」のオバマ政権は立法面で立ち往生した。さらに民主党は2014年中間選挙で、上院も喪失。オバマ政権2期目の目玉法案「銃規制」「移民改革」は実現できなかった。

 このことが何を意味するか。民主党は最低、片方の院で多数派に返り咲かないと、ヒラリー政権は初日から立法面で完全に立ち往生する。いきなり「レームダック」になる。 

 ヒラリーはただでさえ第二次大戦後初の民主党3期目を目指している。再選のハードルは高い。無党派層の有権者心理的に、特定政党の長期化を望まない振り子の作用もあるからだ。相当な快進撃で大成果を1期目に残す必要がある。

 だが、議会を共和党に握られたままでは難しい。最高裁判事の指名にも上院の承認が要る。

 ◆トランプの巻き添えは勘弁してほしい

 2つめは、大統領選挙の投票率への影響だ。

 トランプの女性問題の勃発以降、共和党主流派のトランプ離れが雪崩を打ったかに見える。なるほど、ジョン・マケイン上院議員、ポール・ライアン下院議長など、トランプに厳しい発言で事実上の決別をしている。しかし、彼らがトランプに距離をとるのは、自分が再選年だったり、議席数に責任をもつ議会指導部であったりという事情が絡んでいる。

 トランプ政権は共和党議会指導部としても制御不能かつ予測不可能だ。それよりは、共和党議会多数派の維持のほうが、共和党の主流派の望む保守政治継続の確実な道でもある。

 今回の連邦上院選挙は民主党に追い風だ。2010年のティーパーティ旋風で「棚ぼた」当選した議員の再選年が、今年2016年に集中しているからだ。

 改選議席は民主の10に対し、共和は24。トランプ勝利でも、民主党は上院で5議席勝利すれば多数派の地位を奪還できる。ヒラリー勝利の場合は、副大統領が議長として1議席に含まれるので、さらに少ない4議席でよい。

 11月1日時点の「リアル・クリア・ポリティクス」世論調査平均の予想では、共和党は落選確実が1議席、当落線上が7議席もあるのに対して、民主党は落選確実が0で、当落線上も1議席だけだ。

 トランプに対する好悪が共和党内で割れていることは、議会選挙の結果予測を複雑にさせている。通常、中間選挙は地元議員を支持する党派的な有権者しか参加しないので投票率が低いのに対して、大統領選挙は議会選挙の票を活性化する。

 しかし、今回はトランプを好まない共和党有権者が「棄権」を選択し、それが議会選挙に悪影響を与える可能性も皆無ではない。

 予備選挙では共和党参加者が民主党を上回っていた。その点だけを切り取れば、共和党の本選投票率は高くなるかに思える。

 しかし、熱心なトランプ支持者の多くは、初めて予備選に参加した無党派層だ。彼らは反移民、保護貿易主義などでトランプ個人を好いている。大統領選挙の投票率を底上げしてくれるが、共和党には関心がなく、議会選挙を左右する献金や動員など草の根活動にも興味を示さない問題がある。

 主流派の票の行方も見えない。女性問題でトランプに嫌悪感を感じている郊外女性や穏健派を失えば、議会選挙の共和党候補が巻き添えをくらう。地盤の弱い共和党議員から順に、トランプ支持を取り下げているのはそのためだ。

 ◆ルビオ復活

 3つめは、2020年大統領選挙の前哨戦としての意味だ。

 上院選は大統領選の陰に隠れがちだが、将来の大統領候補の台頭の現場でもある。2000年のニューヨーク州の連邦上院選ではヒラリー・クリントンが勝利した。2004年全国党大会では、イリノイ州から連邦上院選に出馬中だったバラク・オバマが「1つのアメリカ」演説を披露した。

 今年の注目選挙の1つはフロリダ州。大統領選挙で敗退したマルコ・ルビオの再選選挙だ。

      「神の思し召し」で上院議員引退宣言を撤回、再選を目指すルビオ候補〔PHOTO〕gettyimages

 筆者は2015年夏から2016年大統領選挙の各陣営の現地調査を本格化させ、気がつけば民主、共和ほぼすべての候補者集会で演説に参加してきたため、各陣営に登録したメールアドレスに陣営広報メールが送信されてくる。その推移と量を並べると興味深いが、ダントツで多いのはルビオ陣営だ。10月末からは1日、5〜6通以上のペースだ。

 大統領選挙の激戦州なのに、メールにはトランプの「T」の字もない。「ルビオを救ってくれ」「上院多数派維持はフロリダにかかっている」の説得攻勢だ。 

 ルビオは上院議席を放棄して大統領選挙に出る宣言をしていた。その「背水の陣」の決意を評価してほしいという選挙戦を展開し、敗北したら「民間人」になるはずだった。

 しかし、「上院議員引退」宣言を突如撤回。再選を目指すことになった。

 地元の後援会筋は大歓迎だ。もともと、ルビオが大統領に興味を示してせっかくの上院議席を放棄する態度に、支持者らは裏切られたと落胆していたからだ。

 再選回数が議会での権力への道であり、地元への利益誘導もそれで決まる。ルビオの若さに「永久再選」の利益をあてこんでいた支持層は、ルビオ復活を応援している。

 だが、ルビオは2020年の大統領選挙出馬を疑われている。対抗馬の民主党候補パトリック・マーフィー陣営は「どうせまたルビオは上院の職を放り出すのだろう」と攻撃してきた。それを受け、ルビオは「神の思し召しで、6年の任期を全うする」と約束した。だが、大統領選挙への出馬については明言を避けている。

 「どうせ2020年直前になればルビオは、神の思し召しで、上院議席半ばで大統領に挑戦する、とでも言うに違いない」とフロリダ州民主党関係者は手厳しい。たしかに「神の思し召し」は便利なエクスキューズだ。

 共和党のトランプ指名も、ルビオ再出馬のエクスキューズになった。ルビオは「私が考えを変えて再選を目指しているのは、(ヒラリーとトランプ)どっちが大統領になっても議会上院で大統領と戦う必要があるからだ」と述べている。

 ◆ジェブとルビオの休戦

 「トランプ要因」はジェブとルビオの休戦原因にもなった。ルビオはフロリダ州を地盤にしながら、元フロリダ州知事のジェブの支援者との暗黙の約束を破って2016年予備選に出馬し、ジェブの面子を潰した経緯がある。

 腹を立てたジェブも「上院でルビオは何の成果も残していない」とかつての「弟子」を攻撃。ジェブは撤退後もルビオを支持せず静かに妨害した。フロリダでジェブの組織がまったく動かず、ルビオはトランプに敗北する。

 だが、頭を冷やしたジェブは、「ルビオの反乱」ではなく、「トランプ旋風」こそ伝統的共和党にとって真の危機と再認識する。「トランプに投票しない」と今年5月に明言。ブッシュ家は今年の共和党全国大会をボイコットした。共和党主流派が将来的に「トランプ旋風」を封じ込めるには、主流派若手の星ルビオがやはり必要と、ルビオの上院再選支持に転じた。

 11月1日時点での世論調査平均では、ルビオと民主党対抗馬は49.2対44.8で、ルビオが4.4ポイントほどリードしている。ルビオは2017年1月に議員バッジを外す予定だったのに、奇跡の復活を遂げつつある

 共和党大統領候補への「党内反発」が、共和党上院選での「支援連合」を活性化させるという不思議な展開も、いかにも異例尽くしの選挙年を象徴している。

 11月8日(現地)の投票日は、大統領選挙の勝敗以外に、連邦議会選挙で民主党が上院で多数派を握れるか、下院の議席がどの程度縮まるかも注目点である。

トランプ候補の登場で、ますます亀裂を深める超大国は、どこへ向かうのか。元インサイダーとして、大統領選挙の実情を知り尽くしている著者が、アメリカの「リベラル政治」の複雑で厄介な構造を読み解き、新政権の課題を占う。

 元稿:現代ビジネス 主要ニュース 国際 米国・大統領選 【担当:渡辺 将人・北海道大学准教授】  2016年11月05日  09:15:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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