乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:

 在野の政治研究家乾龍が『漂流日本の闇』を斬る! 日々の政治・経済等の時事ニュースの深層を探る。

【社説②】:医学研究と個人情報の両立を

2016-07-23 00:11:35 | 【パーソナルデーター・個人情報保護、情報

【社説②】:医学研究と個人情報の両立を

 乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:【社説②】:医学研究と個人情報の両立を

 個人情報保護と医学研究の間にあつれきが生じている。昨年の個人情報保護法の改正で匿名化の条件が厳しくなり、大学病院などが患者の病歴や検査結果などを外部に提供し共同研究をするのが難しくなったからだ。

 このままでは医学研究の進展を滞らせかねない。個人情報の保護と医学研究の両立へ、早急に制度を見直す必要がある。

 医師や研究者は、氏名や住所など個人の特定が可能な情報を取り除いた患者のデータを「非個人情報」とみなし、様々な研究に活用している。厚生労働省と文部科学省が設けた指針(ガイドライン)に基づいて進められている。

  しかし改正法の下では、従来のやり方だと匿名化が不十分とみなされ、データを外部に提供する際に患者本人の同意を改めて取り直す必要が生じる。すべての研 究で同意を取り直すのは現実的には難しい。厳格に法を適用すると、再生医療などの先端分野を含め幅広い医学研究に影響する。

 欧州でも同じ問題が起きた。欧州議会などでの議論の末に今年、個人情報の保護強化策を医療には適用しないとする妥協策を決めた。その代わり、医学研究者らには情報を安全に管理するよう強く求める仕組みだ。

 医学研究に比較的寛容な米国でも個人情報保護を強める動きがあり、対応策の検討が始まった。

 欧州の議論は参考になる。実は日本の改正法にも「学術研究」を適用除外にする条項がある。ただ「学術研究」では対象が大学などに限られ範囲が狭い、といった課題がある。

 情報通信技術の発達で個人情報を保護する必要性は増している。一方で、医療のように公益性のある活動が必要以上に制限されるのも、好ましくない。

 改正法は来年施行の予定だ。日本学術会議や日本医学会など専門組織がこの問題に発言をしていないのは不可解だ。研究者の側から制度のあり方について積極的な提案をすべきだ。

 元稿:日本経済新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2016年07月22日  00:10:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【記者の目】:パーソナルデータ活用をめぐって=日下部聡

2014-11-18 02:30:40 | 【パーソナルデーター・個人情報保護、情報

【記者の目】:パーソナルデータ活用をめぐって=日下部聡(大阪社会部)

 乾龍の『漂流日本の羅針盤』・【最新ニュースから見え隠れする闇】:【記者の目】:パーソナルデータ活用をめぐって=日下部聡(大阪社会部) 

 ◇乱用阻止、ルール化急げ

 コンピューターやセンサーの発達によって、企業や公的機関が個人の行動記録を「パーソナルデータ」として大量に収集・蓄積するようになった。「気 持ち悪い」と言う人は多い。それを「感情論」と片付けてはいけないと思う。個人の側はデータを取られるばかりで収集を拒むことも難しく、得をするのは大組織だけ−−という情報流通の不公平性を直感的に感じ取った言葉だと思うからだ。その感覚は、個人の意思や自由を尊重する民主主義のあり方とも根深い部分で つながっている。

 大阪本社発行紙面を中心に同僚と執筆した企画記事「情報デモクラシー2014 私の記録は誰のもの?」で、顔認証や位置情報を利用したビジネスなどを報じた。

 パーソナルデータを利用した商品やサービスについて企業に取材を申し込むと、警戒を込めて問い返されることが多かった。「どのような趣旨の取材で しょうか?」。顔認証システムを扱うメーカーの担当者は「別の新聞に『監視技術』として書かれたことがあるもので……」と話した。

 JR大阪駅で独立行政法人「情報通信研究機構」が予定している通行人の顔認証実験は、昨年11月の計画発表文では「施設内の状況を映像データとして取得する」などと、あいまいに表現されていた。

 パーソナルデータを利用する事業者の間に、「批判されないよう、そっとやりたい」−−という空気を感じる。

 ◇収集した情報、使い道説明を

 しかし、人のものを使うのであれば、それを提供してくれた人に使い道をきちんと説明するのが近代社会のルールだろう。投資信託など金融商品を扱う 業者は、取引方法やリスクについて、お金を出した顧客に説明する義務が法で定められている。パーソナルデータについては、そうしたルールが確立していな い。

 政府はパーソナルデータ利用をアベノミクスの「第三の矢」、つまり成長戦略の一つと捉えている。昨年6月に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」にはこう書かれている。

 「利用価値が高いと期待されている(中略)『パーソナルデータ』の取扱いについては、その利活用を円滑に進めるため、個人情報及びプライバシーの 保護との両立を可能とする事業環境整備を進める」。つまり「事業環境整備」が主眼なのだ。政府が来年の国会で目指している個人情報保護法の改正は、この 「宣言」の延長線上にある。

 しかし、欧米を中心に発展してきた個人情報保護法制は、コンピューター化で個人に関する情報を大量に保有するようになった政府や大企業などに対し、その乱用に歯止めをかけて監視社会化を防ぐことを出発点としている。

 歯止めのない究極の暗黒社会を描いたのが英国の作家、ジョージ・オーウェルの小説「1984年」だ。独裁者「ビッグ・ブラザー」が電子的な監視ネットワークを通じて全国民の一挙手一投足を把握し、それに疑問を抱いた主人公は逮捕され、拷問される。

 ◇国家だけでなく、利用主体が分散

 現実には、ビッグ・ブラザーではなく「リトル・シスター」の時代になったといわれる。国家だけではなく、大小の企業もパーソナルデータを蓄積し、 利用する。最近ではグーグルが個別のウェブサイトの閲覧履歴情報を提供するサービスを始めるなど、個人にすら利用が開放されつつある。主体が分散している のだ。ネット上に散らばったパーソナルデータを統合する「プロファイリング」によって、誤った人物像が独り歩きする危険性も高まっている。

 こうした状況の中で、データを持つ大組織と持たれる個人との非対称(不公平)な関係を少しでも対称な関係に近づけるには、自身のデータがどう使わ れているのかを確認でき、場合によってはそこから離脱できる権利を個人に確立することが必要だろう。自分のデータを誰が保有しているのか分からないケース もある。データの悪用を総合的に防ぐためには、官民双方に権限を行使できる独立した監督機関も不可欠だ。

 このような点を踏まえると、個人情報保護法制は個人の自由を基本とする民主主義と不可分の関係にある。しかし、法改正のたたき台となる「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」を検討した有識者会議では、こうした議論は乏しかった。

 個人情報保護法制が専門の石井夏生利・筑波大准教授は「現行法には『骨組み』がなく、手続き法としての色が濃い」と指摘する。「骨組み」とは、法によって実現すべき理念や原則のことだ。

 法改正は必要だが、短期的な利便性や現実との整合性にのみとらわれた議論に陥ってはならない。

 元稿:毎日新聞社 東京朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【記者の目】  2014年11月18日  02:30:00 これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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