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死者はよみがえる

2013年03月16日 | JDカー
中学生のときに読んだきりなので、
今あらためて読み返したら新しいなにかが発見できるかも。
と思って読んでみましたが、やっぱり印象は変わらなかったです。

誰がどうみても失敗作ですよね。

カーの評伝「奇蹟を解く男」では、
作品を仕上げる必要にせまられて、全体の構成を考えずに書いたと、
この評伝にしては厳しい評価が下されています。

この年は(1938年)この作品の他、「曲がった蝶番」「五つの箱の死」「ユダの窓」と
長編を都合4本も発表しています。
「ユダの窓」が本塁打、「曲がった蝶番」は三塁打とするなら、
「五つの箱の死」は三振したあげく振り切ったバットが自分のチームのダグアウトへ飛んでいき、
「死者はよみがえる」はチップボールが自分の顔に当たって
そのままキャッチャーのミットへ収まりアウト、という感じで打率5割かな。

ですが、乱歩や正史にとってはお気に入りみたいで、
乱歩は「カー問答」でAランク(一番面白い作品)に入れているし、
正史は「すばらしく面白い」と持ち上げています。
乱歩は評論家なので、この作品の肝心な部分の分析も忘れてはいません。
いったいどこにそんな魅力があるのか、分かりません。
分かりませんが、以下読んでみてあらためて感じたこと。

以下ネタバレあります


1 冒頭部のクリストファー・ケントのエピソードが書かれた理由
マーク・トゥエインの「100万ポンド紙幣」みたいなマクラは、いったいなんのためだったのか。
クリス・ケントが容疑者になるかと思いきや、
第一の殺人にたいするアリバイが成立してちゃっかり捜査陣に加わっているのが不思議です。
第一の殺人でアリバイが成立したクリス・ケントが容疑者から外れるならば、
第二の殺人でアリバイが成立した(と思われた)犯人を
読者の容疑者リストから外させようというカーの目論見かもしれません。

2 「死時計」の再演
カー自身も「死時計」が成功していたとは思っておらず、
その再挑戦という形で「死者はよみがえる」を書いたのでは。
○明らかにクロに近い容疑者を、フェル博士とハドリー警視が
「犯人ではない」と断ずるアンフェアなミスディレクションが両作の冒頭部にある。
○犯行現場へどうやって犯人が出入りしたかが問題ではなく、
犯人が密室(とそれに準じる状況)からどうやって脱出したか、
という不可能興味がメイントリックになっている。言うなら逆密室とでも。
※「死者はよみがえる」でのフェル博士による謎解きパートの言い訳がヒドい。
そしてハドリー警視の無能ぶりは特筆モノです。
なんてったって犯人と部下のタナー警部を間違えてるんですから。


3 チェスタトンの「奇妙な足音」の本歌取り
創元推理文庫版86ページで、
著者のカーが講釈師のごとく顔を出して、ホテルでの盗難事件の実例を解説しています。
これをを読むと、チェスタトンの「奇妙な足音」を連想せざるを得ません。
江戸川乱歩の有名な「J・D・カー問答」でも、
「死者はよみがえる」「死時計」の2作がチェスタトンの大きな影響にあるだろう、とあります。
「奇妙な足音」の視覚化が「死者はよみがえる」ではないでしょうか。



※ところで「J・D・カー問答」で
『「死人をおこす」では「死者再現の神秘が描かれて」』と書かれているけど、
乱歩はいったいどこを読んでこんなことを書いたのでしょうね。
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