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カーとキャロライン・ウェルズ その3

2017年11月15日 | JDカー
「名の無い男」
以下ネタばれ

被害者の部屋には、秘密の個人エレベーターが備えてあり、
被害者はその中で胸を撃たれて死亡していた。
1階にあるこのエレベーターの出入り口には管理人がいて、
誰も出てこなかったと証言。密室の中にさらに密室がある二重密室ですね。
しかし最後に明かされた真相とは、
被害者が犯人から逃れるためエレベーターへ入った瞬間に犯人が発砲。
威嚇射撃だったのに(と後でわかりますが)、被害者が振り返ったため心臓に命中、
それに先立ち被害者はエレベーターの下降ボタンを押していたため、
死んだ被害者を載せたままエレベーターが動いた、というまことにお粗末な顛末。
作者が書きたかったのは不可能状況の謎を解くことではなく、
ヒロインの恋の行方であって、当時はこれでよかったのでしょう。

で、この謎解きを読んで「おや?」と思ったことが。
カー「赤い鎧戸のかげで」に登場する怪盗鉄箪笥の警官殺しの謎説き場面。
カーは同じ言いわけを使っています。
話の設定もキャロライン・ウェルズやそのころの作品からインスパイアされたものでは?
戦後に書いたH・M卿もの「笑う後家」「分かれた妻たち」「騎士の杯」あたりもそんな感じがするなあ。
「饗宴の骸骨」の出だしだけを見ると「時計の中の骸骨」を思い出すような、そうでもないような。
せめてキャロライン・ウェルズの全作品を検証しないと、断言できないことですが。


藤原編集室の「幻のポケミス」を見ると、
カロリン・ウエルズの名前で探偵フレミング・ストーン物「The Clue」(1909)が
ポケミスから出る予定もあったそう。

さらに、新青年アンケート「〈新青年〉海外探偵小説十傑」で翻訳家田中早苗が
「いま翻訳したい作品」の1位に「饗宴の骸骨 カロリン・ウェルズ」(「The Skeleton at the Feast」1931)
を挙げています。
理由は「殺人の動機も犯人も最後まで隠して読ませる技巧がとても勝れている」から。
おお、そうなのか。

「The Skeleton at the Feast」
「大晦日の夜、五番街のカールトン邸は新年を祝う来客でにぎわっていた。
しかし主人のチャールズと客たちは不気味な雰囲気につつまれていた。
見たこともない人体標本の入った箱が送られてきたのだ。
『昔おまえはおれを殺した。今のおれがお前の未来だ』というメッセージとともに。
そしてその予言は現実となった。主人のチャールズ・カールトンが書斎で殺されたのだ。
しかも厳重に施錠された部屋で。誰が、どうやって殺したのか。
元俳優で探偵のケネス・カーライルが謎に挑む」

密室ものみたいですが、どうなんだろうなあ。
成句で「The Skeleton at the Feast」は宴会で白けること、とあるので、
本当にパーティ現場へ骸骨を登場させてみたというシャレなのかな。
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