ADONISの手記

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19.扶桑樹(東方扶桑史編)

2017年10月05日 21時30分15秒 | 小説

※19~22は、『東方Project』の世界が舞台になっています。

 

『東方Project』の世界では、かつて穢れがなく地球の生命に寿命はなかったという。それが古生代(5億~3億年前)に海の生物たちの生存競争によって発生した穢れによって海が穢れた。更に古生代~新生代に陸上に生物が進出したことで更に陸上でも壮絶な生存競争が起こり地上が穢れていった。

 この穢れによって地球に住まう生命は寿命を持つようになったが、それを恐れた者たちは穢れのない月に移住して月の都を作り上げた。これが月人と呼ばれる者たちである。

 つまり約38憶年前の生命が誕生した直後ならば地球は生存競争が起こる前の穢れなき世界なので、私たちはその時代の地球に行くことにした。勿論、そんなとてつもない古い時代だと大気成分が現代と全く違うし、地上には強い紫外線が降りそそいでいるので、私たちは生身ではなく宇宙服を着ています。

 そんな私たちはこの時代の地球を見て回り穢れのない地上や海という存在を〝理解″した。つまり穢れがある世界と穢れのない世界の差を認識してそれを把握したわけである。

 ちなみに私とアイシャが持つ転生特典の一つたる理解は私たち自身が直接見聞きしたものでないと効果を発揮しない。つまり何かを理解しようとする際にモニターごしや他人の視界ごしに間接的に行っても駄目なのだ。

 この制限がなければわざわざ宇宙服を着て私自身が確認しなくても、偵察機を送り込んでモニターごしに理解するというより安全な方法が取れたのですが、能力の特性上無理なものは仕方ありません。

 それにこの世界は海で原始生物が誕生したばかりなので、私たちに危険を及ぼす存在はいません。まあ、例えまともな生物がいても私たちに脅威となる存在などそうはいないので特に問題にならない。

 

 さて、もうここには用はないので、次に私たちはこの『東方Project』の並行世界に移動した。選んだ時代は14世紀で、地球から1万光年ほど離れた地球型惑星に来ていた。

 この惑星は調査の結果、環境は地球とほぼ同じであるが、知的生命体どころか類人猿すらいない完全な未開惑星である。おまけに危険をウイルスなども確認されていないという移住先と考えるならかなり有望な惑星だった。

 そんな惑星であるが生物そのものは存在しており、海だけでなく地上も生存競争を行っている為、この時代の地球と同じく穢れに満ちており、寿命があることから月人からすれば地球と同じ穢れた惑星であった。

 そこで、ここで穢れを浄化する実験を行うことにした。手順としてはある程度の大きさの島を結界で覆い、その島に穢れを浄化する特殊な木を植えただけである。

 当然ながらこの木は私が遺伝子操作などを駆使して人工的に作り上げた植物で、光の代わりに穢れを葉から吸収することで成長する特性を持っている。その為、この木は周囲の穢れを吸ってあっと言う間に大木に成長してしまった。

 結論から言うと、この実験は成功して島の穢れを取り除くことに成功した。勿論、この島にも生物は檻生存競争があるので穢れは常に発生し続けているが、この木が常時浄化し続けているので穢れのない領域を構築できたのだ。

 私はこの木を扶桑樹(ふそうじゅ)と名付けた。最も扶桑樹一本だけでは惑星そのものを浄化できるわけではない。扶桑樹はあくまで周囲の極めて限られた範囲だけ浄化できるだけなのだ。

 この木で一定範囲だけ浄化しても外部から穢れが流れ込んでくるので上手く行かない。つまり結界で閉鎖空間を構築してその中で穢れのない領域を作ることしかできないのだ。勿論、この木を量産してこの惑星の全土に植えれば何とかなるでしょうが、そこまでやるのは面倒だからやらない。

 そもそも私たちは月人のように穢れの有無に拘っているわけではない。寿命など監察軍の技術でいくらでも解決できるからそんなものに頓着する必要はない。穢れを浄化するという月人が喉から手が出るような技術にしても、あくまで興味本位でやっただけなのだ。

 そんなわけで実験そのものは終了したが、この惑星には別の使い道がある。その為にも私たちは地球に向かうことにした。

 


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