「はあああっ!!」
令子が放った気功波がBETAを凪払う。勿論、BETAを潰すだけだからそれほど強力なものにしておらず、省エネでやっていた。
実の所、BETAはそれほど強くなく、戦闘力で換算すると精々二桁程度にすぎない。それでも常人よりは遥かに強いが、私の相手にはならない。だから軽く攻撃する。
確かにもっと強力な攻撃もできるのだが、エネルギーの消費もバカにならない。ザコには軽く対処するだけで良いのだ。
令子の現在の戦闘力は30,000。これは能力抜きでBETAの大軍と正面からやり合っても圧倒的に勝利できる戦闘力だ。
ちなみに上条当麻は戦闘力180程度。これはBETAを生身で倒すには十分であるが、大軍と戦うには心許ない。確かに百体程度なら何とかなるだろうが、後が続かないのだ。
当麻の最大の利点は幻想をうち消す事なので、幻想もへったくれもないBETAの大軍とは相性が悪すぎる。それに幻想殺し(イマジンブレイカー)が私の能力行使に悪影響を与える可能性も否定できない。
そもそも監察軍の人間は負傷時に備えて仙豆を持っている。仙豆は『ドラゴンボール』の世界で製造法を入手して監察軍で量産されたものだ。
あらゆる怪我を食べるだけで瞬時に治して、体力も回復させるので重宝されている。勿論、怪我や病気を治せるメディカルポッドもあるので、時間を掛けてもいいのならば仙豆を使う必要はない。
しかし、仙豆は異能の力を帯びていて、当麻が触るとただの豆になってしまうのだ。だから当然ながら当麻には仙豆は支給されていない。
おまけに当麻は能力や魔法などによる治癒もできないので不利になるから今回の戦いに関わらないように伝えておいた。正直いって当麻が出しゃばっても邪魔にしかならない。
「これで終わりのようね」
世界に散らばったBETA達は粗方排除されていた。今、令子が駆逐したBETAで終わりのようだ。
ここ数日で世界情勢は大きく変化していた。
イギリスでは軍隊ではBETAに歯が立たないので、女王が自ら無双をやっているらしい。流石に天使長の力があると豪語するだけはある。
他の欧州各国はフィアンマが無双をやっている。確かにあの聖なる右を使えばBETA粉砕も可能でしょう。
その他の地域に関しては私が叩いておいた。
しかし、私が言うのもなんだけど、欧州もかなり追いつめられていた。魔術の秘匿をやる余裕もなく、堂々と戦略レベルで魔術サイドの力を使う羽目になった。
元々『とある魔術の禁書目録』の世界では魔術は公になっておらず、一般には秘匿されている。だから魔術師がどれだけ活躍してもそれは公にならない。
ついでにいうと欧州の魔術の秘匿ってどうするんだろう? あいつらその辺り考えているのかな。まあ、いいけどね。
でも学園都市はそんな秘匿とは無縁で、むしろ宣伝とばかりに私の活躍をバンバン流している。その為、一気に世界規模での英雄扱いです。
さて残念だが、ここでめでたしめでたしとはならない。今回の戦いで死者行方不明者が10億人を超えるというシャレにならない被害が出ている。
その被害は原作の第三次世界大戦の比ではない。原作では二週間で戦争が終わり、その被害も最小限に抑えることができた。
しかし、今回は一週間とより短い期間で終わらせられたが、その被害は凄まじいことになっている。BETAがその物量にものをいわせて人間を無差別攻撃したからだが、まさかこの短期間にここまで被害が出るとも思わなかった。少々甘く見ていたかも知れないね。
それにしてもこれからどうするか。アレイスターのプラン所か、原作すら思いっきり崩壊している。これでは私の計画もぶっこわれたと判断して良いだろう。
まあ、私の計画は優先順位が低いから別に痛手ではない。元々、第二の人生をより楽しく為のものにすぎないし、ダメになったというのならば、別の楽しみを見つければ良いだけのことだ。
でも監察軍本部がやられたのは痛い。
幸いベヅァー撃退には成功しているが、いつベヅァーが再び復活するか分からないという不安もあるしね。
そこにウィンドウ(空中モニター)が展開された。
『久しいな佐天令子』
「レディ・アン、今回の用件はベヅァーが復活して監察軍本部を消滅させたことですか?」
モニターに写っているのは監察軍副司令官補佐官をつとめている女性だった。
『……知っていたのか』
彼女は私がまだ知らないはずの情報を知っている事に驚いたようだ。
「私の能力の一つはアカシックレコードだから、その気になればどんな情報でも手に入れる事ができるわ」
『まあいい。ならば話は早い。幸いベヅァーは何とか倒したが、ベヅァーはあちこちの世界にいるトリッパーに刺客を送りつけている。其方はどうだ?』
「それは問題ないわ。今返り討ちにしてやったところだからね」
『そうか、それはなりよりだ。しかし、他の世界では多くのトリッパーが討ち取られている。我々が動き出したときには既に手遅れでな』
「そうですか」
それも既に知っていることなので構わないが、痛手である事には変わらないね。
「それより、こうして連絡をしてきたということは、帝国軍のユクドラシル・システムの使用許可が下りたのですか?」
『そうだ。これからどうする?』
「そうね。とりあえずブリタニア帝国に戻るとしますわ。状況の確認もしておきたいから」
『では転送する』
「ええ」
その瞬間、佐天令子は『とある魔術の禁書目録』の世界から消えた。
後書き
今回は第三次世界大戦の変わりにBETA大戦が勃発しました。その為、様々なプランが崩壊してしまいました。特にアレイスターのプランは修正不可能でしょう。学園都市では今回の一件を宇宙からの侵略者との戦争と発表しています。真実を知っているアレイスターもそれを話す必要を感じなかった、というよりもあまりにも突拍子もない話なので言っても誰も信じないと判断しています。