ADONISの手記

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29.儀礼艦(アトラス暦30052年=西暦2002年)

2013年08月15日 01時21分52秒 | 小説

 終末の時を迎え、滅亡寸前のマブラヴ世界の地球圏に一隻の巨大宇宙船がデフォールド(ワープアウト)してきた。
 その宇宙船の名はレッドノア。『ふしぎの海のナディア』において、ネオアトランティスが企んだ世界征服の切り札となった代物だ。
 最もこの宇宙船はレッドノアという名称ではあるが、これは三万年ほど前に監察軍がレッドノアを元ネタにブリタニア皇帝専用艦として建造した宇宙戦艦を元にしている為、原作とは変更点も多かった。

 ちなみにアトランティス帝国がネタ兵器を作るにあたって真っ先にレッドノアを作る事にしたのは、同じネオアトランティスの艦船でもガーフィッシュは唯の潜水艦にすぎないし、デウス・ウキス・マキナは空中戦艦でしかなかったからだ。
 これではとてもではないが銀河間国家であるアトランティス帝国では使い物にならない。その為、原作で唯一まともな宇宙船であったレッドノアを原型にするしかなかった。

 こうしてアトランティス支部に所属するトリッパー達の異様な熱意の元で建造が決定されたレッドノアであるが、これにも色々と紆余曲折があった。というのもレッドノアは宇宙戦艦として使うにはいささか非効率だったからだ。
 確かに円盤形で横や後ろなどの死角がなく、360度に攻撃できるというのは利点であるが、上や下が死角になっているし、艦隊として運用するには構造的に無駄が多いと判断されてしまった。
 まぁそれはそうだろう。そもそもアトランティス軍では宇宙戦艦を単独で運用するというコンセプトはない(単独で行動するのはステルス機能が高い航行艦ぐらいだ)。
 それに艦隊運用するならばレッドノアのような円盤型の宇宙戦艦である必要はなく、従来の箱型宇宙戦艦で十分だった。

 こうした事情もあり、彼らはレッドノアをどういうコンセプトで建造するか議論する羽目になった。ここで建造を諦めるという選択肢はナディアファンのトリッパー達にはなかった。
 ここでブリタニアではレッドノアが皇帝専用艦(聖王のゆりかごの後継艦)として建造された事を参考にして、皇帝専用の儀礼艦として建造することにした。儀礼艦であれば艦内に凝った内装をしても問題ないし、ネタに走ってもある程度は許容範囲となる。
 勿論、ただの儀礼艦というわけでなく、要塞級の多重ディストーション・フィールドによる強力な防御力に加えて、ボソンジャンプの演算ユニット(翻訳機付)に跳躍砲を多数装備して、止めにクロスゲート・パラダイム・システムまで採用している辺り、戦略兵器として扱っても問題ない艦船であった。

 そんなレッドノアに乗り込んでいたのはアトランティス帝国宰相(自称ガーゴイル)だった。彼はラスボス仕様の衣装、つまりレッドノア搭乗時のボディスーツ状の服と赤黒いマントをきており誰がどうみても悪役にしか見えない姿だった。
 そして、そんな彼の傍にいる一人の普通のスーツ姿の男性は普通であったので傍目にはあまり目立っていなかったが、彼こそが日本帝国の元首相、榊是親だった。

「ガーゴイル様、通信の準備が整いました」
 ネオアトラン幹部の姿をした者がガーゴイルに報告してきた。

「よし、では手筈通りにしろ」
「はっ!」
 ガーゴイルの命令によってアトランティスは地球全域で観測できるように最大出力で通信を送った為に、それは地球各地の国家で傍受されており、その中にはアメリカ合衆国も含まれていた。

 

アメリカside

「やっとアトランティス帝国が現れたか!」
 アメリカ大統領の元に地球近郊に全長18㎞以上という常識外れに大きい円盤形宇宙船が突如として現れたという一報が届いた直後、今度はその宇宙船からアトランティス帝国を名乗る通信がされたと情報が入ってきた。

「これでアトランティスとコンタクトを取る事ができるかもしれないな。それで彼らはなんといっているのだ?」
「彼らは調査目的で地球圏に来ており、侵略に来たわけではないと言っています。それとアトランティスは地球には干渉しないので余計な心配はしなくていいと宣言してきました」
「地球に干渉しないだと! 何だってわざわざそんな通信を送ってきたんだ?」
「恐らく、我々が宇宙人の侵略だと誤解して過剰な反応をしないように配慮したのではないでしょうか?」
 確かに普通に考えればそう判断するだろう。しかし、ガーゴイルはそんな配慮をしたわけではなかった。

「とにかくアトランティスに会談を申し込むんだ。彼らと合わなくては話にならない」
 大統領の命令で至急アトランティスに会談を申し込むメッセージを送る事にした。そして、このメッセージの返答によりアトランティスの宇宙船がホワイトハウス上空にやってくることになったアメリカは大騒ぎとなった。

 しかも、それだけでなくアメリカとアトランティスが会談すると聞いた(通信を傍受していた為バレバレだった)各国が会談への参加を次々に申し出てきた。
 この各国からの横槍は、かつてのアメリカならば突っぱねていただろう。しかし、現在アメリカの立場はかつてないほど低下していた為、それができずにアメリカは各国の代表が話し合いの場に参加するのを認めるしかなかった。

 そんなドタバタがあったが、ホワイトハウス上空にアトランティスの超巨大宇宙船が現れた。アメリカ国民が注目する中、宇宙船の真下から光の柱が出て一人の男性が降りてきた。
 これはレッドノアに搭載されていたトラクタービームであったが、問題は降りてきた人物であった。

「榊是親だと!」
 その人物はとても有名というか、既に死んだはずの榊是親であった。
 この予想外の人物の登場にアメリカだけでなく各国の代表者たちは驚愕した。特に日本帝国の驚きようはなかっただろう。

「各国の皆さん。私が来た事に驚いでおられるでしょうが、私は日本で発生したクーデターの際にアトランティスに助けてもらいました。そして現在は皆さんにアトランティス帝国のメッセージを伝える為の先触れの使者としてこの場に来ました」
「メッセージだと!」
「ええ、あの宇宙船にはアトランティス帝国の宰相閣下が乗っておられます。そして宰相閣下は皆さんがお望みならば話し合いの場を設けても良いと仰っています」
「宰相!」

 その場にいた者たちは地球に来たアトランティス人の地位の高さに驚いた。まさか重臣中の重臣と言える宰相が来ているとは思わなかったのだ。
 しかし、これは彼らにとって好都合と言えたので、是非お願いすると、榊に頼むことにした。

「では、その様にアトランティスにお伝えします」
 と、答えた榊がアトランティスに通信を送って暫くすると、再び宇宙船からトラクタービームが発射されて誰かが降りてきた。
 あれがアトランティスの宰相かと、彼らがその人物に注目するが、その姿を見たとき彼らは固まった。
 その人物は、仮面に赤いボディスーツ状の服に赤黒いマントを羽織っていたからだ。はっきり言ってどっからどう見ても悪役にしか見えない。

「初めまして地球人の諸君。私の名はガーゴイル。アトランティス帝国の宰相だ」
 と、言い放つ人物に各国の代表たちは唖然とした。

 


6 コメント

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駄文 (ADONIS)
2013-07-01 22:59:39
ついにガーゴイルの登場です。原作にあわせてレッドノアをホワイトハウスの上空に配置して、衣装もラスボスモードにしてみました(笑)。
Unknown (ななん)
2013-07-01 23:28:27
榊元首相も元々は国家宰相なんですから、何を持ってマヴラヴ世界への支援に対するアトランティスへの利権供与を考えてるのでしょうかね?
春秋戦国時代の申包胥の故事と違って、七日七晩泣けば助けてくれるわけでもあるまいに。

そろそろ榊もマヴラヴ世界に見切りをつけて、家族だけ亡命させて、その手腕を監察軍に提供すべきですね。
返信 (ADONIS)
2013-07-02 22:22:54
>ななんさんへ
確かに、泣いて頼めば見ず知らずの異世界人の異種族国家が情けをかけてくれるワケではありませんからね(笑)。まぁその辺りも考えてみます。
Unknown (小説スキー)
2013-07-03 08:40:39
榊元首相が出てきたところでアメリカが暗殺未遂に関与していたことがもしもばらされたらアメリカ完全に
内乱発生で政府関係者皆殺し確定じゃないですか。
アメリカオワタ。これからの展開が楽しみですよ。
感想 (目玉)
2013-07-03 10:09:28
疑問なんですが榊は本気でアトランティスに地球を救ってもらえると思ってるのでしょうか?例え別の惑星に移住させても必ず争いを始めるでしょうし、そのたびに榊が救ってくれ~とか言いそう。その内榊事故死に見せかけて殺されそう。

更新お疲れ様です。
返信 (ADONIS)
2013-07-03 19:57:36
>小説スキーさんへ
アトランティスも榊も今更それを蒸し返すきはないので、アメリカがそうなる事はないでしょう。

>目玉さんへ
その辺りはガーゴイルの腕の見せ所ですね。ただ榊も自分の言っていることがアトランティスに迷惑である事ぐらいは理解しているので、アトランティスが地球を救わなくてもやはり駄目かと納得するでしょう。元々ダメ元だし(笑)。

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