ADONISの手記

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新任士官と銀河天使 その三

2016年06月05日 21時24分55秒 | 小説

 俺とケインはミルフィーたちと共に監察軍本部を見て回った後で、俺が艦長を務めることになる空母エルシオールを案内してもらった。このエルシオールは846mの大型空母でありながら僅か六機の戦闘機しか運用できないという欠陥品にしかみえないが、これは紋章機がブリタニア軍が使用している通常の可変戦闘機よりも大きい紋章機を使用しているからだ。

 また紋章機の整備運用に長けた専用空母として機能しているが、空母でありながらレールガン×4門、対空ミサイル、対空レーザー砲×16門を搭載しているなど火力もそれなりにある為、ある程度の単艦での行動も可能になっている。というか艦隊行動が基本の帝国軍艦艇と違って、監察軍艦艇は単独もしくは数隻で行動することをコンセプトに建造されている。

 また、有人艦には民間船にもある居室、食堂、スポーツ室、医務室などの他に、連絡艇(シャトル)、タンク・ベッドが備わっている。といってもブリタニア軍が相手にしているのは小規模な宇宙海賊だけで帝国軍とまともに艦隊決戦ができる敵など存在しない為に、連絡艇やタンク・ベッドはあまり役に立っていないのが実情だったりする。

 ちなみにブリタニアで使用されている軍艦の分類では艦載機を運用するために軍艦は空母とされており、物資などを輸送する艦艇は輸送艦となっている。それ以外にも戦艦、巡洋艦、駆逐艦、ミサイル艦がある。

 駆逐艦は全長200m未満で、艦隊の防空を担当しており、レーザー砲やガトリングレールガンなどでミサイルや敵機の迎撃を任されている。その為、攻撃と防御を同時に行う必要からディストーション・フィールドではなく陽電子フィールドを使用している。

 巡洋艦は全長200m以上500m未満で、優れた航行能力とグラビティブラスト(重力波砲)を艦首に備えており、攻撃力・防御力・機動力などのバランスが良い艦種である。

 戦艦は全長500m以上で、グラビティブラストなどの強力な火力を搭載している。その強大な火力は正に大鑑巨砲主義の権化と言えるだろう。

 ミサイル艦はその多くが戦艦並に大きい艦が多く、リニアキャノンや対艦ミサイルなどで大量に武装している。というか、ミサイルや砲弾などは誘爆の危険も多い為に、ダメージコントロールの点から各艦に配備せずに専門の艦艇に集中配備していた。

 

「まあ、悪くないな」

 このエルシオールは帝国軍艦艇と違ってどうも器用貧乏の印象を受けなくもないが、艦隊行動ではなく単独行動を基本とする以上それも致し方ないだろう。それを考慮すれば性能、居住性なども含めて問題ない艦だ。

「なにより、可愛い女の子たちが配備されているのがいいね」
「といっても、エンジェル隊のメンバー以外はアンドロイドだぞ。ブルーノ」
「まあ、見目がいいから見るだけなら目の保養になるさ」

 女好きであることを自覚している俺でもアンドロイドを口説く気にはならないが、鑑賞するだけならありだと思う。それに口説くのならエンジェルたちの女の子たちがいるのだからまったく問題ない。

 現在このエルシオールに配備されている人員は俺とケインとエンジェル隊の女の子たちを除けば全員アンドロイドだった。

 監察軍では人間そっくりのアンドロイドを採用して人員を確保しているが、それだと人間とアンドロイドの区別が付かないため制服を色分けすることで一目でわかるようにしていた。

 アンドロイドの制服が山吹色、一般兵の制服が緑色、特殊な資格を持ち監察軍でも特別な扱いを受ける兵の制服が赤色となっている。現在のエルシオールの人員は赤が一人、緑が七人、他は山吹色という構成になっていた。

「実験艦と聞いていたが機関とかは標準の物を使用しているようだね」
「まあ、そうだろうな。艦載兵装はこれまで実験を繰り返しつくして最適の物を得られているんだ。早々新規格の兵装がでてくるわけもあるまい」

 エルシオールはかなり広いが、兵員自体はアンドロイドを含めてもかなり少ない。これは機械化が進んだ監察軍では兵員をさほど必要としないからだ。その為、居住区は割と狭く、その分格納庫や兵装などにスペースを多く取られていた。その関係もあって、俺たちは何とか勤務時間内にこのエルシオール内をすべてまわることができた。

「あの、まだとっておきの場所があるんです」
「とっておきか。そんなのがあるんだ?」
「ええ、凄いんですよ!」

 もう勤務時間を過ぎてしまうが、案内係のミルフィーが言うとっておきとは何なのか気になるので行ってみる事にした。そして着いたのはかなり広いにも関わらず中央に球状のガラス瓶のようなミニチュア模型があるだけの殺風景な部屋だった。

「何もない部屋だけど、ここがとっておきなのかい?」

「これはダイオラマ魔法球なんです」
「ダイオラマ魔法球?」

 このミニチュア模型の名前だろう。模型自体は島を意識しているようで周囲を海に囲まれて森、平原などがあり、また和風の屋敷などがある。確かに精巧な模型だと思うが。とても魔法球という仰々しい名称が似合うような代物には見えなかった。

「そういえばこれは一般には知られていない物でしたね。このダイオラマ魔法球は空間を圧縮したものでこの中に入ることができるんです」

 ミルフィーたちの案内に従って魔法球の前の魔法陣に立つと、光があふれ俺たちを包み込んだ。俺たちが目を開けるとそこは広大な海が広がる浜辺になっていた。

「これは本物の海なのか?」
「そうよ。このダイオラマ魔法球は直径10kmほどの島とその周囲の海を取り込んでいるんだから、海水浴場としても使えるわ」

 蘭花の言う通り辺り一面に広がる海、青空、太陽とどう見ても海にしかみえない。まさかあのミニチュア模型にこんな機能があるとは思わなかった。なるほど魔法球と言うだけはあるな。

「どうですかブルーノさん。これはちとせさんの別荘なんですが、エルシオールのクルーには使用許可が出ているんですよ。丁度そこに海の家があって水着とかも用意できますからみんなで泳いでみませんか?」

 ここの海の家では食事や休憩だけでなく更衣室あり、水着などの販売などもやっているらしい。なら泳いでみるのも一興だろう。

「そうだな。じゃあ泳いでみるか」
「おい、ブルーノ。いいのかよ」
「いいじゃないか。どうせ勤務時間はもう終わっているしな」

 俺たちの勤務時間は既に過ぎている。ならば遊んだところで問題はないだろう。

 

ちとせside

 ちとせにとってダイオラマ魔法球は別荘というよりも本宅であった。というのも監察軍で艦船勤務をしている彼女にとって純和風な屋敷や弓道場など中々用意できるものではないという理由があった。

 元々、ちとせの前世は理想の大和撫子を追及しており、転生後はギャラクシーエンジェルの烏丸ちとせの真似事をやるようになり、和風の屋敷に住んで、弓道を嗜むようになったわけである。

 しかし、監察軍のスペースコロニーはともかく巡洋艦でそれらを揃えるのが無理であったことから、その手の制限を取り除くためにダイオラマ魔法球を得ていたのだ。

 その後、紋章機専用空母エルシオールが完成すると、ダイオラマ魔法球をエルシオールの一室に移したのだ。

 もちろん、エルシオールにもちとせの個室はあるが、別荘の規模には勝てないし、エルシオール内に広大な屋敷があるのに、わざわざ狭苦しい個室を利用する意味がなかったこともあり、これまで利用することはなかった。

 この魔法球は内部時間を加速させる事が可能で、1から72倍まで調整できるが、緊急時の対処能力を確保する為にあえて時間加速は行われていないから、原作の魔法球と異なりいつでも出入りできるし、外部との通信もリアルタイムで問題なく行えるようになっていた。

 そんなちとせはブルーノがミルフィーたちと混ざって海で遊んでいるのを眺めていた。ブルーノの役割上とにかくミルフィーユたちと打ち解けないと始まらないから、彼が早速上手くやっているのは都合がよかった。

 折角だから私も海で遊ぶとしましょう。テンション管理のためにはミルフィーたちだけでなく私もブルーノたちと打ち解けた方がいいですからね。

 

解説

■エルシオール
 監察軍本部第22防衛隊に所属する空母。元ネタは『ギャラクシーエンジェル』のエルシオール。原作のように儀礼艦として過剰なまでの設備はオミットされており、代わりに性能向上に重点を置いている。また効率などの悪さからクロノストロングエンジンとクロノブレイクキャノンは採用していない。

■連絡艇(シャトル)
 有人艦に搭載されている小型艇で、通信妨害などによる劣悪な通信環境下もしくは無線封鎖時における伝令や人員の緊急脱出などに使われる他、作戦会議を開く際に分艦隊司令官や艦隊司令官を旗艦に集める移動手段としても用いられる。といっても、ブリタニア軍の艦艇を撃沈したり通信妨害できる敵や、司令官を集めて作戦会議を開かなければならないほどの敵がいないため実際には使用されることは少ない。元は『銀河英雄伝説』を参考に監察軍が開発してブリタニア軍に正規採用された装備である。

■タンク・ベッド
 一時間の睡眠で八時間分の睡眠効果が得られるようになっており、短時間で人員の交代を行わなければならない戦時において非常に重要な役割を果たしている。早急な疲労回復の他にも冷凍睡眠モードもあり人員が冷凍睡眠に入ることも可能になっている。また、民間でもカプセルホテルに採用されている他、物好きな富裕層などが仮眠用に購入している。元は『銀河英雄伝説』を参考に監察軍が開発してブリタニア軍に正規採用された装備であるが、ブリタニアでは軍民問わず幅広く使われている。

■ディストーション・フィールド
 ブリタニア帝国軍艦艇に使用されているバリアシステム。ブリタニア軍艦艇の惑星規模の物質すら破壊可能なグラビティブラストを防ぐことができる防御手段の一つ。しかし、展開中は内部から攻撃できないという欠点がある為に防空には不向きとなっている。

■陽電子フィールド
 ブリタニア帝国軍の駆逐艦に使用されているバリアシステム。質量兵器に対する防御力はディストーション・フィールドに勝るもののグラビティブラストを防ぐことはできないために防御力に難がある。それでも内部から攻撃できるという特性から防空を担当する駆逐艦に採用されている。陽電子リフレクター(機動戦士ガンダムSEED DESTINY)を軍艦全体を覆うフィールドにして更に目立たないように無色に改良したもの。透明となっているため展開しても目立たないし視界を遮らないようにされている。ちなみに陽電子リフレクターが内側から攻撃できるのはハイペリオン(機動戦士ガンダムSEED X ASTRAY)に搭載されていたモノフェーズ光波防御シールド「アルミューレ・リュミエール」の改良型だからである。

■ダイオラマ魔法球
 監察軍が採用している広大な空間を魔法球内部に圧縮しているマジックアイテム。内部の時間を加速することができる。元は『魔法先生ネギま!』のマジックアイテムで『魔法少女リリカルなのは』の世界でも使用可能なために監察軍がそれをそのまま生産している。今回登場した魔法球はちとせが個人的にコレクションにしている別荘で海水浴場としても使えるが、ちとせ好みの和風な屋敷などがある。また、外部と通信も可能で緊急時であっても即座に対応できるようにしている。

 


2 コメント

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Unknown (スペースマソ★)
2015-11-04 13:21:13
>これは機械化が・進んた・

>これは機械化が・進んだ・
返信 (ADONIS)
2015-11-05 00:35:50
>スペースマソ★さんへ
誤字報告ありがとうごさいます。修正しました。

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