プロジェクト○川

学生に本を読んでもらおうという,ただそれだけのはずでした

オランダ焼

2011年10月28日 | 本の話

和田芳恵『暗い流れ』の冒頭に,「オランダ焼」というカステラをせんべい状に焼いたお菓子の記述が出てくる.

舞台は大正時代の北海道長万部町(和田の故郷).「オランダせんべい」は根室にだけ入ってきたのではなく,根室にだけ残ったってことなのかも.

僕の母は長万部育ちだけど,オランダ焼なんて聞いたことがない.和田芳恵とほぼ同じ頃の生まれの祖母なら知っていたのかもしれない.存命なら105歳だけどね(和田芳恵も故人).

この『暗い流れ』という小説,僕は図書館でぱらぱらめっくったことがあるだけなんですが,なかなかすごいらしいです.だからなのか,講談社文芸文庫版はAmazonで高値がついてる.どうすごいかは,気が向いたら調べてみてください.

ちなみに和田芳恵は男性です.『順番が来るまで』(講談社文芸文庫)所収のエッセイによると,ずいぶん後まで女性だと思われることがあったらしい.実は僕もわかってなかった一人・・・しかたがないよね.

 

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同じものを注文しない

2011年10月26日 | 本の話

ある居酒屋での実験.

二人以上の客がいるテーブルで「地ビールの試飲」をやっていると伝えて,メニューを見せる.ビールの種類は4種類あり,簡単な説明が書いてある.

そして,

(1)半数のテーブルでは,ウェイターが順番に一人ずつ注文を聴き,

(2)残りのテーブルでは,客にカードを配り,相談せずに注文を書いてもらった.

そうすると,(2)のテーブルでは客が同じビールを注文することが多かったが,(1)のテーブルでは重複がずっと少なかった.わかるよね.

その後,無料サンプルの評価をしてもらったところ,(2)のテーブルの方が評価が高かったそうです.

(2)のテーブルの人たちは,誰かが注文しちゃったものは避けよう,という意識が働いて,ほんとうに「自由」には選べなかった.だから不満が出たってことだね.

ぼくらは「主体性を誇示したい」「人と同じだと思われたくない」という動機から,選びたくもないものを選んじゃったりするものらしい.

ただし,(1)のテーブルにも一人だけ(2)のテーブルと同じくらいの満足度の人がいる.もちろん,最初に注文した人だ.

以上,シーナ・アイエンガー『選択の科学』(文藝春秋)より.

学術的に面白いだけでなく,日常生活での教訓にもなりそうな話だね.

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科学的

2011年10月26日 | 本の話

森博嗣『科学的とはどういう意味か』(幻冬舎新書)を読んだ.

文字どおり,科学的とはどういう意味かを,工学者の視点から明確に語った本.

森博嗣さんは元名古屋大工学部助教授.『すべてがEになる』に始まるエッセイシリーズは「現代の寺田寅彦」と呼んでいいのではないかとさえ思います.

科学を支える制度への信頼は強すぎる気がするけれど(ジャーナルの査読がここに書かれているほどに公正だとは思えない),とにかく正論.

惜しむらくは,"文系"攻撃がやや強すぎること.肝心の「私は"文系"」という認識の人が読んだときにすんなり受け入れてくれるかどうか.この点は,明晰な森博嗣さんとは思えない戦略ミスに思えるな.

あと,テーマに比べて入れ物がちょっと大きい気がする.いちばんおいしいところ80ページ程度をまとめたパンフレットにでもなっていれば,余計な「攻撃」や説教臭が薄くなったんじゃないかなあ.少し残念.

 

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卒論の状況

2011年10月25日 | つぶやき

この春に卒業したOB諸君は,後輩たちの卒論の進み具合が気になっていることでしょう.なに,気にならない?冷奴だねえ(©CB).

で,どうなっているかというと,それはもう・・・(笑).昨日の後期2度目の報告は,5人で30分ほどでした.N岸はまあまあかな(この先ちゃんと進むかはわからないが).

今年は「まあ,書けなかったら仕方がないさ」というスタンスで進めております.

2人は卒論ができないと卒業できないそうなんだけど,昨日も漢字クイズで盛り上がってただけだし,今日も午前中は誰も来ていません(雨だからか).

きっと家でやっているか,夜遅くまでやっていたのでしょう(いやまさかそんな).

 

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ミュスカデに砂糖

2011年10月24日 | 本の話

クノーの『地下鉄のザジ』(「けつ喰らえ!」)を読んでたら,カフェでミュスカデ(白ワイン)を頼んだ男が「砂糖は二つにして」と言う場面があって驚く.50年くらい前の小説だけど,白ワインに砂糖?紹興酒じゃないんだから.

もうひとつ驚いたのはこの本の値段で,230ページ少々の薄い文庫本が740円もするんだよね.以前僕が持っていた古い版は,確か280円だったと思うんだけど・・・.長くデフレに近い状態が続いているっていうのに,文庫はずいぶん高くなったなあ.

まあ,さして売れない本を絶版にしないためには仕方がないんでしょう.問題は出版環境全体なんだろうね.そもそも『ザジ』は,クノーが6年かけて書いた本で,このくらいの価値は十分にあるといえばある.

で,僕はこういう,よくわからない冒険譚(?)って大好きです.映画でいうと『アフター・アワーズ』とかスコリモフスキの『バリエラ』みたいなやつ.

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TPPへの下地作り

2011年10月19日 | つぶやき

昨日,小宮山厚労相が,閣議後会見でBSE対策(国内)の見直しに言及した.アメリカ産牛肉の輸入規制も見直されそうな気配.

これらの動きに,TPP交渉への下地作りという側面があるとしたら,急速な展開もありえるように思う.

どちらも見直すこと自体はかまわないと思うのだが,タイミングは嫌な感じ.

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日本農業新聞は,農業分野以外へのTPPの影響を宣伝し始めた.農業サイド(JA)の戦略として,これは正しい.

TPPは農業以外の産業にも大きく影響を与えるから,反対したい業界や団体はたくさんあるはずだ.でも,「抵抗勢力」のレッテルを貼られることや,規制に守られている産業だと思われてしまうことを避けるために,口をつぐんでいるのだと思う.

彼らにとっては,「農業が悪者になってTPPがつぶれる」ことがもっとも都合が良いのだろう.でも,野田内閣は完全に財界と財務省(とアメリカ?)の方を向いているようだ.黙っていてはまずいでしょう・・・.

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僕はTPPにはもちろん反対です.

ただし,理由は関税撤廃よりも「ルールの統一」が怖いから.これは日本をアメリカのような国にしたいか,って話だと思う(まあ,だいぶそうなっちゃってきてはいるのだけれど・・・堤未果『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)を読んでみよう).

特に日本は,租税システムが所得の不平等をほとんど改善しないという異常な国(ゼミでは飯田泰之さんの本に出てきたでしょ).ヨーロッパ諸国との比較はもとより,「あの」アメリカよりも改善度合が低いというのだから驚く.

名大の生源寺教授が昨日の日本農業新聞で,カルドア・ヒックスの補償基準を持ち出して冷静な議論を呼びかけていたけど,政策のプラスの効果とマイナスの効果は,ひとりでに相殺されたりはしないわけで,TPPで一部のセクターが多少潤っても,マイナス効果のかなりの部分は社会で負担することになる.

日本は税の再配分効果がアメリカよりも弱いうえに,労働の流動性も低い.つまり,競争で負けてしまった場合のフォローのメカニズムが弱い.さらに,かなり長いこと,教育への公的投資も低い水準に抑えてしまっている(韓国と競争するっていうなら,まずは教育じゃないかな.お互いいろいろ問題を抱えているようではあるが).

ということで,この国にこれ以上アメリカンスタンダードを導入するのは自殺行為だと思います.判断している人たちは死なないから,他殺行為というべきかもしれない.

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ところで,昨日yahoo!に「フランスの有機食品,350兆円規模――学校や病院でも有機食広がる」という記事が出てました.

http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20111018-00000306-alterna-int

そんなバカな.フランス人がどれだけ有機食品が好きでも,国民一人あたり5万ユーロ(500万円以上!)も買わないって(笑).

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70

2011年10月19日 | ワインとか

この半年ほど,過去15年で最もアルコール摂取の少ない日々を過ごしています.別に体調が悪いわけではなく,思うところあってというかなんというか,まあ,酒を買うより本を買いたいし,酒を飲むより本を読みたい,といった程度の話だと思って下さい.

9月の終わりに職場の健康診断があって,今日結果が届いた.懸案のγ-GTPは・・・70.期待ほどではないけれど,去年が99,その前が113なので,けっこう改善したな.

そういうわけで,ワインじゃなくて,こういうもののお世話になっているのだ.このサントリーの「どパクリ」商品は,さすがにどうかと思うけれど,ノンアルコール飲料の選択肢が増えること自体は歓迎してます.

でも,ノンアルコールビールってどうしてどれもこれもあんなにまずいんだろ.

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そんなこんなで,残念ながらOB諸君の期待には答えられないのです.

禁酒しているわけではないから,たまには飲んでますが,家で開けるのはストックしてあるワインばかり.2007より古いものがほとんどで,新しいのはエミリアーナのピノ(eS!ワインで売ってる)くらい.

ただ,ワイン屋さんのメールは止めていないから,日々誘惑が届く(笑).

なんといっても空前の円高,しかも対ユーロでも円が高いんだから,必然的にフランスワインも安くなる.よくは知らないけど,もう安いレートで仕入れたロットが中心なんでしょう,なんだかべらぼうに安いものも見かけます.

そういうところに,去年亡くなったマルセル・ラピエールの「遺作」なんて言われると,あやうくクリックしそうになってしまう・・・.

http://www.eswine.jp/product/seibun/sei_691188.html

安くて美味しいワインをまとめ買いしたいという人は,大魔王のカーヴドリラックスでペログビセットでも買って下さい.

http://www.cavederelax.com/index.html

いま売ってるセットには,僕が大好きなエステザルグ・テラヴィティスのコート・デュ・ローヌは入ってないみたい.ちょっと残念.

でも,タイのワインや,ノストラーダの樽熟60か月ってのは飲んでみたいなあ.

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30位

2011年10月17日 | テニスに目が眩んで

錦織くんが30位に躍進.「ついに」なのか「やっと」なのかは別として,松岡の記録を錦織くんが超えたことにはいろいろな感慨があります.

上海マスターズでの準決勝進出って,テニスファン以外にはピンと来ないかもしれないけれど,かなりすごいこと.

マスターズはグランドスラムに次ぐレベルの大会で,トップの選手がだいたい出てくる.上海で決勝に進んだフェレールなんて,現在世界ランク5位で,5年くらいトップ10にいる選手なんだけど,それでもマスターズの決勝進出は初めて.それくらいレベルの高い大会です.

マスターズでのベスト4は,グランドスラムのベスト8と同じポイント.先日のマレーシアオープンベスト4に続く好成績で,この30位をキープできれば,グランドスラムでシードがついちゃう.すごいね.

僕もドルゴポロフ戦とマレー戦はGAORAで見ました.

マレーには完敗だったけど,彼はこの大会で3大会連続優勝と絶好調だし,トップ4は別格だからまあ仕方がないです.実力差というよりも,早くにじれて無理に前に出たりと,戦略面でミスがあったかも.その前のドルゴポロフ戦はいい勝ち方でしたね.

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準決勝のもう一試合でフェレールと戦ったのは,僕が大好きなフェリシアーノ・ロペスでした.ロドラと並んで,もっとも美しいネットプレイをする選手.

錦織-ロペスの決勝になったら,どちらを応援しようか,と思いながら見ていたんですが(ウソです.もちろん・・・),残念.

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Take you higher

2011年10月17日 | つぶやき

僕らは世界でも有数の,住みやすい国に生まれている(らしい).でもそのことが,良いことだとは言い切れない.

楽しいことは,思い出にはなるだろう.でも,君たちを鍛え,もう一段高いところに連れていってくれるのは,苦しいこと,嫌なことの方だ.

だから,逃げてばかりではいけないのだ.

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OB訪問

2011年10月13日 | つぶやき

今日,Tトロが遊びに来ました.

詳しくは明日12時公開の「Rっかな日々」で!

 

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スリック

2011年10月11日 | 音楽

しつこいようだけど,9月は研究でものすごく忙しかった.で,9月末の出張あたりで風邪をひき,授業開始後はいつもながらの自転車操業.

僕の場合,ほんとうに忙しいときのBGMはなぜか・・・ユーミンなんだよねー.なんだかすごく恥ずかしいんだけど.

熱心なユーミンファンだった時期もないし,普段はあんまり聴かない(ただし,夫・松任谷正隆さんの『夜の旅人』は,長いあいだ,うちの晩ごはんの音楽でした).

Wikiでアルバムタイトルを眺めても,聴いたことがあるのは1980年代半ばくらいまで.今年新作が出ていたこともさっきWikiで知った.

でも,忙しいとなんとなく聴いてるんだ,これが.なんでだろうと思い返してみると,FM北海道が開局するときの試験放送でずっとユーミンがかかっていたことがあって,それが僕の受験期と重なっていたんじゃないか・・・と仮説を立ててみたが,たぶん違うな(笑).

でも高校くらいからずっとこうな気がする・・・そう考えると,このこと自体が理由か.要するに習慣ってですかね.

で,この間ユーミンを聴いていて,ふと「グレイス・スリックの肖像」(『昨晩お会いしましょう』)が,ジェファーソン・エアプレインのグレイス・スリックのことだと気付いた.30年くらい,わからずに聴いてました.むかしは簡単に調べたりできなかったし,ジェファーソン・エアプレインなんて聴くようになったのはずっと後だもの.

で,そう思いながらジェファーソン・エアプレインの"Surrealistic Pillow"を聴くと・・・思ってたのと違う(笑).

ああ,誰に向けて書いているのだろう.

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死せる孔明

2011年10月07日 | つぶやき

そのむかし,吉川英治の『三国志』が好きで,何度も読みました.ああいうふうに「何度も読み返す」っていう読書は,もうなかなかできないなあと,当時の自分をうらやましく思うことがあります.

特に好きだったのが「死せる孔明,生ける仲達を走らす」のあたり.もう30年も前なのであまり覚えていませんが,自らの死後の国運を悲観しつつも,できる限りの配慮を残す孔明の姿に感銘を受けたのでしょう.

ジョブズ死去の報に接し,思い出したのはこの逸話でした.

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発表

2011年10月06日 | 本の話

Tomas Tranströmer だって.スウェーデンの詩人で,ここ何年かずっと有力候補とされていた人(のはず).

直前オッズは12倍くらいだったかな.

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明日発表

2011年10月05日 | 本の話

明日発表だそうですね,ノーベル文学賞.

今年は日本で震災があり,神戸の震災の時に発表した短編集『神の子どもたちはみな踊る』が"After the Quake"の英訳タイトルで知られる村上春樹氏は有力ではないか,との観測が流れているそうで,各ブックメーカーのオッズも上位なんだそうです.

僕がときどき眺めているLadbrokesだと,1番人気はずっとAdonis(シリアの詩人,4倍)だけど,村上春樹は3位グループ(8倍).いま見たらボブ・ディランも3位に上がってきてるな.

少し前にはピンチョンかフィリップ・ロスっていう話もでていたけど,オッズは伸びていないみたい(20倍).クンデラも低いなあ(40倍).

「直前にリークがあって,本命のオッズが急上昇する」という根強い噂もある.ただ,去年はコーマック・マッカーシー(映画『ノーカントリー』の原作者)や,僕の知らないケニヤの作家が急上昇と報道されてたし・・・受賞したバルガス・リョサのオッズは上がったんだっけ.

単純に考えて,この手のオッズには知名度がかなり大きく影響するだろうから,オッズが高いからといって期待しない方がいいんでしょう.それよりは,Fukushima 50に平和賞という方がありそうな気がするなあ.

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追記.

いま(日本時間10月6日午前10時)Ladbrokesをみたら,上位はこうなってました.

1.ボブ・ディラン5倍

2.アッシェア・ジェバール,村上春樹 6倍

4.Adonis 7倍

 

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2位の時代

2011年10月02日 | つぶやき

後期が始まって,今日は今年最後のOPC(石油輸出国機構じゃないよ)でした.

ゼミはまだ1回目,恒例の「私の夏休み」の発表?があっただけ.とりあえず,だいたいみんな元気なようです.

ソツロン?さて,それはなんのことでしょうか.

(放っておくとどうなるのかなと思って,今年は放置してみています)

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長いけど,以下引用です.

社会の中で,その矛盾がある特定の集団に集中するということはあります.その集団がこうむっているゆがみや不合理が,社会全体の歪みや不合理の集約的な表現であるということは確かにあります.その集団のかかえている問題を解決するためには,社会全体をその制度設計そのものから見直す必要がある,ということもよくわかります.

でも,その逆に,社会全体の歪みや不合理が,すべてある特定の「罪」で説明できるということはないんじゃないかと思うのです.その集団を排除すれば,社会全体が浄化され,原初の健全を回復するというような,そんな便利な集団があれば,それはそれで,たしかに社会改革はずいぶんシンプルになるでしょう.でも,経験的に言って,そんな都合のよい「悪の集団」は存在しません.

社会の歪みや不合理はふつうシステム全体にゆきわたった制度疲労が原因です.どこか一箇所だけ病んでいて,あとはぜんぶ健全なので,病んだ部位だけ外科手術的に抉り取れば,たちまちシステムは健康を回復するというようなシンプルな仕方で社会制度は劣化するわけではありません.

(内田樹・石川康宏『若者よマルクスを読もう』,かもがわ出版,pp.99-100)

内田先生による「あのマルクスでさえも」という批判部分なんだけど,「社会」を「芸能界」,「ある集団」を「紳助」と読みかえると,いまの紳助批判にもだいたいそのまま当てはまる.おんなじことの繰り返し.

紳助なんか擁護するつもりはないからね,念のため.

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ところで,しばらく前に「1位じゃないと・・・」とかって書きましたが,世の中の一部はどうやら2位の時代ですね.

1位の呪い,とでもいう方がぴったりくるかもしれませんが.

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