『ルポ 改憲潮流』、9月に読了。斎藤貴男著。岩波新書。2006年5月刊。
改憲派だった「小林節教授が”変節”した最大の理由」(p.62) は意外だった。「小泉政治の傲慢さと軽さに耐えられなくなりました」(p.42)。大臣にまでなった新自由主義信奉者の経済学者とは一味違う模様。
「過去の非道、罪責に向き合おうとすることさえ、この国の権力は拒否」(p.V)。例えば、横浜事件 (先日10月30日、横浜地裁で再審開始が決定。無罪を言い渡すべき新証拠が見つかったとの判断。遺族による4回目の請求でようやく開始)。
東京新聞(http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2009033002000193.html)から。
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4次再審請求も免訴 横浜事件
訴訟終結補償手続きへ
(2009年3月30日 夕刊)
戦時下最大の言論弾圧とされる「横浜事件」の第四次再審請求の再審判決が三十日、横浜地裁であり、大島隆明裁判長は、治安維持法違反罪で有罪が確定した雑誌「改造」元編集者の故小野康人さんに対し、検察側の主張通り、有罪か無罪を判断せずに裁判を打ち切る「免訴」を言い渡した。第三次再審請求に続き、元被告の遺族らが求めていた無罪判決はならなかった。
弁護団は「判断を先送りした形で、前進は全くなかった」と批判した上で、控訴せずに刑事補償手続きを取って名誉回復を目指すことを明らかにした。ほかに再審請求の動きはなく、事実上、最後の再審判決となる。
大島裁判長は拷問の事実を認め、共産主義再建準備会とされた会合も「行楽や酒食のもてなし」と指摘。「免訴判決では死者の名誉回復を望む遺族らの意図が十分には達成されない」とした。
しかし、「免訴事由がある場合は実体判断をすべきではなく、免訴判決が言い渡されるべき」と指摘。
その上で「今後の刑事補償請求の審理で、免訴事由がなければ無罪の判決を受けるべきか、実体的な判断を示すこととなる」と事件への実質的な判断を回避した。有罪判決を出した当時の裁判所の責任にも触れなかった。
旧刑事訴訟法は「刑の廃止」や「大赦」があったとき、免訴判決を出すよう定めている。大島裁判長は「再審でも異なる取り扱いをする理由にはならない」と述べた。
小野さんは、共産主義を宣伝する論文の編集に関与したとして、神奈川県警特高課に逮捕され、終戦直後の一九四五年九月に懲役二年、執行猶予三年の判決を受けた。
小野さんの次男新一さん(62)と、長女斎藤信子さん(59)が再審請求していた。別の元被告の遺族らによる第三次再審請求は、最高裁で免訴判決が確定した。
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