いつかの疑問とちいさな理想

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「多様性を認める社会を望みます」の頼りなさ

2017年02月22日 02時19分12秒 | どうしたものか

「子供の弁当に母親が消耗する必要はない」というネット記事を見た。フランスの子供のお弁当事情を紹介しながら「日本の母親も忙しいのだから、お弁当づくりはもう少し簡素化できないか」という締め括りだった。これに寄せられたコメントの中には例によって「人はそれぞれ違うのだから、どちらでも好きな方を選べる社会であって欲しい」という意見が散見されたが、いかにこの記事の論点が甘かったからといっても〝皆んなそれぞれが自由〟賛歌は、議論において意味がないと指摘せずにいられない。

この弁当の話に限らず「各人の自由が認められ、その選択が許される世の中になって欲しいです」ともっともらしい顔して花咲か爺さんする人はよく見かける。そりゃ弁当どうするか、朝はご飯なのかパンなのか、パンツは右から履くのか左から履くのか、どうぞ遠慮なさらず個人で選択して下さいな?と言いたくなる。ええ、ええ、皆んなそうしているからと。しかし、おしなべて意見を問われるということは、その選択に至る理由を教えてくれということで、その過程と根拠を示しておくれということなのだが、どんな問いにもオールマイティーな〝多様性を認める社会〟を金言として掲げる人たちは…大丈夫なのだろうか?私には単なる思考停止にしか見えないのだが。

また、この〝多様性を認める社会〟系は事の大小を問わず、あくまでも「なって欲しい」「そういう世の中を望む」というスタンスが多い。希望を語るのは自由だが、先んじて気付いているのは「私」で、実現するには「私以外」の人が目覚めてくれなきゃ…という自我は、そろそろ本気で相手にされなくなるのではと老婆心ながら心配になる。

医師兼タレントの思想」でも書いたが、人を殺してはいけないのはさもなくば自分が殺されるからである。「してはならぬ」という大きな枷(かせ)だ。個人が集まり家族となり、家族が集まり地域となり、都道府県となり、国となり、世界となり、それぞれが生きるために約束(制約)が社会にはある。法律、文化、慣習、常識、校則、家訓、暗黙の了解、座右の銘(笑)……挙げれば切りがないけれど、どれも約束と言えば約束だ。なんとも世の中は約束尽くし。

これを踏まえた上で「私」の生き方、あるいは生きやすさをどう確保するかを考えてみる。その答えこそが〝多様性を認める社会〟であると前述の花咲か爺さんは言うのだろうが、オールマイティーがゆえに概ね同じ結論に達しそれを正当性の証しとして確信する前に、もうちょっと踏ん張って考えてみて欲しい。これも「医師兼タレントの思想」で書いたが、「私」を担保するには取りも直さず「あなた」の生きやすさを担保するということに還流する。個人の自由を認めつつ社会の構成員として生きる。「私」と「あなた」がそもそも矛盾だらけ。この視点が本当に花咲か爺さんにあるだろうか。

この手の人に出会うと、私は必ずそういったことを尋ねてみる。が、満足な回答を得たことはついぞない。言うまでもなく多様性とはただのテンでバラバラではないし、自由とは責任逃れでもないから、そこをきちんと見据えてどう目指しているのか教えてもらいたいのだが、往々にしてそこはポッカリ空白のままだ。また〝多様性を認める社会〟の人は象徴的に偏見や差別も障壁として取り上げるが、私から見れば「個性なのだから障害なんてものはない」という扱いの方が、よっぽど激しい排除に思われる。こういう風に言うと、花咲か爺さんは私を叱るだろうか。

さまざまな経験のすり合わせや議論を経て「やっぱり、それぞれの選択は実現しやすい世界にしなきゃね」という結論を見ることはあるだろう。それは清々しい。なぜなら、共生のバランス感覚があるからだ。お互いの気配をきちんと感じ合って、共にやっていけるといいな!と思わせるのだ。それこそが本当の〝多様性を認める社会〟を後押しするのではないか。

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