abyman の折り紙と日記

折り紙、本、旅の日記

折り紙と昭和の熱き男たちの日記

2017-09-11 07:59:15 | 日記
折り紙教室の後に、
毎回参加してくれている親友のT氏と二人で駅前の立ち飲み屋に行った。
日曜日だというのに満員の店内の隅っこに陣取った。
他の客と触れ合うような感覚は久しぶりだ。
コンクリートの三和土や昭和レトロの雰囲気の店内の装飾、
ましてや昭和の雰囲気プンプンのT氏がいると、
昭和にタイムスリップしたかのようだ。
ぼくとT氏は折り紙教室が終わり、祭りのあとのような感慨にも酔っていた。
それに店内の客は六十代、七十代が主流なのだ。

禿げた頭にハンチングを被ったオッちゃん、
場末のバーの女風の黒いワンピース姿のおばちゃん、
タバコを吸いながら片手でビールを飲むお姉ちゃん、
金のネックレスやブレスレットをチャラチャラつけた
土建屋風の社長だったんだろうなと思われるちょいワルじいさん、
汚れた作業着を着ているあんちゃんたち、
これって本当に昭和だよね。
ぼくたちは嬉しくなって、昭和のあの頃の話しに熱くなった。
T氏も長らく役者をやっていた。
あの頃の芝居の話しをすると心が躍ってくる。

一時間ぐらいしたら店がざわついてきた。
入ったときより客が増えていた。
七十代とおぼしき禿げて白髪のチンチクリンのオッちゃんが、突然
「おれの体に触んじゃねえよ」
と叫びだした。
後ろに立っていた五十代らしきひ弱そうな男が真っ赤な顔して、
「じいちゃん、イチャモンつけんじゃねえよ」
「なんだとこの野郎、じいちゃんとはなんだ。おれはお前のじいさんじゃねえよ。
表に出やがれ!」
チンチクリンはひ弱の襟首を掴んで殴り付けようとしている。
後ろから羽交い締めで止める作業着のあんちゃん、
チンチクリンは後ろのあんちゃんに向かって、
「この馬鹿、離しやがれ」
そこにひ弱の横にいたネックレスチャラチャラのじいさんが、
「おめえ、おれにも体に触れて来たろう、馬鹿やろう!」
チャラチャラはひ弱の襟首を掴みかかる。
チャラチャラの隣にいた場末のバー女が、チャラチャラの体を押さえ、
「あんた、やめなさいよ年なんだから」
「馬鹿やろう、年が関係あるか!」
店の従業員が、
「やめて下さい。やるんだったら外に出て下さい」
と喧嘩の渦の中で悪戦苦闘している。
でも満員電車の中のような有り様の店内、ぼくは笑って見ている。
チンチクリンは羽交い締めしていた作業着に、
「てめえ、文句があるんか!」
と逆恨みの言葉を投げかけている。
作業着は逆上して、
「なんだと、止めに入ったおれになんて言い草だよ、ふざけんじゃねえ」
チンチクリンの胸ぐらを掴みかかる作業着。
それをまた止めにかかる片手タバコのお姉ちゃん、
「禿げ相手に馬鹿みたい!」
チンチクリンは、
「禿げってなんだ、この女」
あちらこちらと火花が飛んで、もみくちゃな店内、
叫ぶやつ、掴みかかるやつ、殴りかかるやつ、
必死で止めるやつ、詰る女、笑って見ている外野、
昭和の熱き男たちのバトルが映画のように繰り広げられている。

三十分ぐらいたってどっと店を出て行った野郎たち、
ガランとなった店内、げっそりしている従業員、

するとT氏が隣にいないことに気づいた。
ハッと思った。T氏がいたら店は潰れていただろうな!
T氏がゆっくりとした笑顔で戻って来た。
「ずっとトイレにいたんですよ」
「そうなんだ!面白かったよ」
「そうでしょうね。トイレで聴いてましたから!」
ニコニコ笑っているT氏。
そしてぼくたちは、閉店まで昭和の昔のことを語りつくした。






折り紙と折り紙教室の日記

2017-09-11 06:53:03 | 日記
日曜日、折り紙教室を開催しました。
今回は蝶の折り方と、それを額にいれる作品を作りました。

それにしても、毎回来てくれる82歳のおばあちゃんと
久しぶりに参加してくれた86歳のおばあちゃん二人には頭が下がるばかりです。
その熱心さと、的確な質問、ぼくはタジタジでしどろもどろ
笑ってごまかすしかないって感じ。

それに他の若い生徒さんより正確に折り、
ぼくが作った折り図をじっと見て何回もチャレンジしてるんです。
86歳のおばあちゃんが、
「先生、この千代紙にはどの台紙が合うかしら?」
上品な笑顔でぼくをじっと見つめる視線が熱い、ぼくは、
「そうですね?何色の台紙がいいかな?」
すると若い生徒さんが(若いといっても四十代、五十代だけど)
「この人、色のセンスないから訊いても無駄ですよ!」
「そうそうセンスない、あるのはウチワぐらいよね!」
冗談もキツイ、でもやんやの喝采で盛り上がる。

ぼくは、
「そうなんですよ、そういう色のセンスないんですよね!」
と頭を掻きながら苦笑いで答える。
「だいたいこの人脱線ばっかりして無駄口も多いしね!」
「そうそう変な横道にそれたり、面白くない冗談ばっかり言ってね」
「それに説明下手よね」
「だからいつも時間が足りなくなるのよ!」
ぼくはいつの間にか「先生」から「この人」に降格されている。
本当に舐められている。

すると82歳のおばあちゃんが、
「先生はいつもちゃんと説明されていますよ。それに色合いも分別されています」
ぼくは涙目でおばあちゃんを見つめる。
「え〜、こいつがですか?」
一斉に若い生徒さんのブーイング!
ついにぼくは「こいつ」扱いに降格されてしまった。

教室の終わりに、ぼくが作った蝶のペンダントをみんなにプレゼントした。
「え〜先生これ貰っていいんですか?」
いきなり「こいつ」から「先生」になる。
「先生はやっぱりセンスいいわ!」
女性はすぐに変貌する。
でも八十代のおばあちゃん二人には感謝感謝です。