Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

音色の感性学 - 音色・音質の評価と創造

2011-01-21 09:08:57 | 新音律
日本音響学会 編 岩宮眞一郎 編著 コロナ社(2010/08)

れっきとした学術書.そのためかカバーデザインも堅い (ダサイ?).
CMよれば
*****「音色」や「音質」を学問的にとらえることは困難である。しかし,どちらも日常生活にもかかわるとても身近な存在である。騒音制御から音楽芸術まで,音響学の各分野にまたがる学際的な分野に,多角的なアプローチでせまる一冊。*****
裏表紙には
***** 音や音楽に興味を持つ方に,ぜひともお勧めしたい一冊 ******
とあるように,一般の読者も視野に入れているようだ.

音の三要素は,大きさ・高さ・音色だが,最初の二つは一次元に数値化できるのに比べ,最後の音色は一筋縄ではいかない.第1章の基礎知識では.「音色の評価方法」として,多変量解析が紹介されている.工学はともかく,理学では (農学・薬学・生物学等では使うかもしれないが,物理学では) あまりなじみのない解析手法である.

この多変量解析は,第2章「音色・音質を表現する手法」の前半で活用される.たとえば,すでに1960年代に,音色を,美的叙情的因子,量的空間的因子,明るさをあらわす因子,柔らかさをあらわす因子,の四つに分解することが行われていたという.心理学みたい...とはいうものの,心理学は良く知らないけれど..

続く第3章はスペクトルが多用され,個人的には興味のある話題だし,理解しやすかった.ちなみに本書にはCD-ROMが付録としてついている.位相と音色の関係などはまさに「百見は一聞にしかず (音響学の格言だそうだ)」である.

第4章ではラウドネス,シャープネス,ラフネス,フラクチュエーションストレングスなどの「音質評価指数」が記述される.つぎの第5章「音色・音質評価のさまざまな対象」とともに,オーディオ装置・電子楽器,あるいは建築での音響性能を客観的に行うための基礎になるのだろう.またこういう産業に直結した対象があるからこそ.この本のような研究も行われているのだろう.

最後の章は「音色の創出」.コンピュータ・ミュージックを系統的に扱うと,自分になじみがある midi とか Max/MSP とかが どんな位置に来るのかなどと考えるのは面白かった.

6 人の共著だが,著者の中には博士 (芸術工学) という肩書きの方もおられる.
音響サイエンスシリーズ の一冊目.続刊予定のなかには「音楽はなぜ心に響くのか?」というタイトルもある!

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