Sixteen Tones

音律と音階・ヴァイブ・ジャズ・ガラス絵・ミステリ.....

たすけて,おとうさん

2016-12-25 10:12:57 | 読書
大岡玲,平凡社 (2015/7).
平凡社の雑誌「こころ」に連載された古典を下敷きとした 12 の短編.ときどき原典のテキストが挿入される.
出版社の CM では*****古今東西の名作を現代におきかえて“翻訳”した実験的な12の創作。柔らかい語り口ながら強烈な毒をふんだんに含む、痛烈かつ新鮮な、世の中への警鐘。待望、著者13年ぶりの小説!*****

目次は

たすけて、おとうさん—カルロ・コッローディ『ピノッキオの冒険』
ちんちんかゆかゆ—太宰治『トカトントン』
蒔く人—サン=テグジュペリ『星の王子さま』
悪魔はだれだ?—トルストイ『イワンのばか』
淫らと筋トレ—モーム『月と六ペンス』
もちづきのかけたることも—紫式部『源氏物語』
負けるようには創られていない—ヘミングウェイ『老人と海』
うそつきは何の始まり?—トーマス・マン『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』
硬くてきれいで無慈悲で—カフカ『変身』
男の子じゃなくても—ガルシア=マルケス『エレンディラ』
食べる?食べられる?—魯迅『狂人日記』
ブドリとネネム—宮澤賢治『グスコ−ブドリの伝記』『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』

文章は童話風.主人公はマツキ君,コウタロウ君,ジロウ君などと呼ばれるが,子供ではない.連載時のタイトルは「男の子の風景」だったが,原典を『源氏物語』『エレンディラ』とする2編では主人公は女の子.二世政治家を主人公とする「ちんちんかゆかゆ」あたりは原典との対比が面白いが,後半は原典によりそう材料が多い.
要するに,連載開始時の方針から次第に逸脱したらしい.後半では現実の世界からも離れがちになる,カフカ『変身』に倣って人物が昆虫化したり,魯迅『狂人日記』に倣って人肉を食べたり,と,だんだん怖くなる

サン=テグジュペリと宮澤賢治はオリジナルも似たところがあるが,ここではどちらも 3.11 を思わせる設定で,後半ファンタジー寄りになるところも共通している.

原典を読んだのは半分くらい.ぼく的ベストは「うそつきは何の始まり ?」かな.

図書館で借用.

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