用事があってホームセンターに行くと、中古DVDを売っているコーナーがあったので、見るとはなく眺めていると、「キツネとわたしの12ヶ月」という、明らかにファミリー向けのDVDがあった。こんな映画を作るとしたらディズニーくらいしかないだろうと手に取ってみると、なんと昔観て大感激した「皇帝ペンギン」の監督さんの次の作品ではないか。「皇帝ペンギン」を観た人は知っているだろうが、ドキュメンタリー映画としてはおそらく画期的な映画で、僕は箱入りのプレミアム・エディションのDVDまで買い、撮影の裏側まで観て感動したのだ。
で、「キツネとわたしの12ヶ月」は、どこかのレンタルビデオ屋さんのお古らしく、妙なラベルが貼ってあったり、パッケージが焼けて白っちゃけていたりするのだが、200円ちょっとという値段なので買わない手はない。早速、家に帰るとDVDをセットして鑑賞会だ。
「皇帝ペンギン」で世界的な大ヒットとなった前作を受けてか、今度は十分な予算が組めたようで、映像は頭から終わりまで、信じられないくらい目の行き届いた繊細で美しい風景ばかりが映し出され、キツネの表情もどうやって撮影したのかと思うようなものばかりだった。
登場人物は、人間ではほぼ少女だけ。あとは狼や熊や穴熊や鹿といった野生動物。淡々としたナレーションで、物語は野生のキツネをどうしても撫でてみたいと思った少女と、キツネの1年間の物語だった。
日本でも、よく動物を主人公とした映画は作られるが、大概がお涙頂戴ものか人情ものになって、見ているほうが冷めてしまうことがよくある。日本人は、どうも突き放した冷静な描写というのが苦手なようだ。
アメリカ映画といえば、エンターテインメントな豪華な作品は多いが、人生の機微に触れるような映画では単純すぎるものが多い。フランス映画は、ドラマに関しては昔のような勢いはなくなったが、環境や野生動物などのドキュメンタリー映画の分野に関しては、いいものがたくさんある。