abeckham@izakaya

飲んで食うなら家でも十分。 それなのになぜ人は居酒屋に行く。 その謎を解く旅が、ここから始まります。

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くさやが繋ぐ、懐かしい記憶

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5月27日
今日は土曜日。しかし僕らは月に一度の土曜出勤だ。こんな日にはイレギュラーな楽しみが必要だ。よし、会社が終わったら嫁さん連れて居酒屋へ行こう。ここのところ毎日、とある店の話を嫁さんに聞かせ、嫁さんの勧誘作戦も成功に近づいていた。きょうは憧れの「山利喜」へ行く。今東京で最も人気のある居酒屋のひとつと言われており、既にここに行った事のある僕の友達も必ず並ばされると言っていた。
会社のある駅から大江戸線に乗り、浮き立つ気持ちを地下鉄内でぐぐぐっと抑えながら森下に到着。勇み足で地上に出ると雨が降っている。しかし雨ならば人の出足も鈍ると逆に喜び、山利喜に向かった。しめしめ・・・
初めて行くので、どこに店があるかわからないが、すぐにここだとわかった。だって既に15人くらいの行列があったから・・・雨なのにね。雨だからと、僕と同じこと考えて、ほくそえんで出かけて来る人が多いってわけか??まあいい、並ぼうではないか。
店の前には大きな狸の焼き物が居座り、古いけど清潔な暖簾が威圧感大だ。その横に店内(厨房)が覗ける窓があるが、その窓の鉄格子が素晴らしい。鉄柵に「山利喜」の細工が施してあり、非常におしゃれ。ちょうちんも昔より小さくなったらしいが、それでも存在感十分だ。
徐々に僕らの番が近づく。この緊張感と高揚感がたまらない。嫁さんはインターネットでダウンロードしてきたメニュー(こんなのがあるのがすごい)を見ながら、今日の献立を考えている。ああ、お腹減った。
さあ僕らの順番が来た。約20分のラマダン(断食)という名の戦いを終え、ようやく店内へ。予想よりこぎれいなモダンな店内は、言うまでもないが満席。カウンターが良かったが、入って左のテーブル席へ通される。2階も賑わい、上から笑い声と、楽しそうな空気が降りてくる。
まずはビールを注文。桜海老ときゅうりの酢の物のお通しはいまいちだが、乾いた喉にビールがうまい。さあ、満を持してオーダータイム。名物「煮込み」は卵入りで「ガーリックトースト」つきにしてみた。「手製レバーのパテ」「マグロ中落ち」「焼トン」はタンとレバーと軟骨。一気にまくし立てた。
手製レバーパテは洋風の盛り付けが美しく、まるでフレンチレストランに来たのかと思わせる質。しかし量が半端ではなく、高田馬場の「L」という店の盛り付けを思い出す。これは2人では多い。フレンチで修行した3代目ご主人のエスプリが光る。もつ煮込みもここに極まる、か。隣のテーブルのお客さんがワインを飲んでいるのも頷ける。少し居酒屋の概念が曲がった。なんでもありとは言わないが、これはこれで良い。しかし煮込みに付けて食べるのが通と言うガーリックトーストは、個人的にはいらないと思う。これは間違いなく日本酒には合わないし、にんにくの香りが良いのだが強烈過ぎて(でもおいしい)、他の料理がかわいそうだ。批判する気はありませんが、僕は次からはオーダーしません。
友達が食べて来いと言ったマグロ中落ちは、はっきり言っていまいち。しかしここは魚を食べる店ではない、と思える絶品の焼トンが届いてからは、マグロ中落ちの記憶は闇の中へグッバイ。
嫁さんは赤ワインのグラスをオーダー。僕は飲んでみたかった静岡の「磯自慢」をオーダー。この店では注文と言うより、オーダーと言う方が相応しい気がする。
土製の片口に注がれた磯自慢は華やかで、切れがあり、やっぱり冷酒はおいしいんだ、と思わせる味。評判は嘘ではない。おいしかった。
「ざる豆腐」を追加し、今度は熱燗に切り替えた。右隣のテーブルは家族で来店しており、ワインを飲む奥さんと、熱燗を注ぎ注がれするお父さんとお婿さん(おそらく父は奥さんのお父さん)。焼トンをたくさん頬張り、スペアリブなる大型の肉が運ばれてきた時には感動の声をあげており、とても良い大衆居酒屋的光景と空気を演出している。大降りの骨付き肉はとてもおいしそう。次はあれを頼もう。残念ながら今日は売り切れだ。
左隣のカップルは、どうやら男の人が僕と同類の居酒屋研究家の様子。さっきから彼女に色々料理やお酒のうんちくを言っている。なかなか的を得ていると、偉そうに僕も耳を澄ます。その隣のおじ様たちは、おいしい日本酒をカッポカッポと空けている。とても豪快で楽しそうだ。
そのテーブルから強烈な香りがしてきた。まるでウ○チだ。ああ、これは「くさや」だ!!!
嫁さんは僕の前で目が点。隣のカップルの彼女も目が点。その様子を見たおじ様が、カップルと僕らに、「すまないね、臭くて。でもこれが日本酒にあうんだよ」と言いながら、くさやをお裾分けしてくれた。初めて口にするくさや。もちろん嫁さんも初体験。子供の頃伊豆に住んでいた僕は、親戚のおばさんが伊豆大島に行った時に買ってくるくさやに辟易していたのを思い出した。うちの爺さんが大好きだったらしく、よく焼いて食べていたが、子供の僕はたまらず逃げ出していた。
さて一口。意を決して口にしたくさやは、以外にもマイルド。噛み砕くと魚の甘味と、独特の味わいが広がる。おいしい、はっきり言っておいしい!!日本酒との相性も確かにすばらしい。口の中の魚の味と臭みが、お酒により一瞬で浄化され、そしてまた欲しくなる。嫁さんもおいしそうにではないが食べている。隣のカップルの彼氏は「やっぱくさやだな!」と言いながら黒ビールをグビリ。ワインを飲んでる彼女は少し困り気味。仕方なく僕は隣の彼女に杯を渡し、どうぞどうぞとお酌のサービス。そんなやりとりができるのも、下町の居酒屋ならではだ。
店を出た僕は、嫁さんに感想を聞いた。嫁さんの感想は僕と同じで75点(生意気ですいません)。でも不満点はガーリックトーストがいらない事、マグロ中落ちの質(予想の質が高すぎたため)、スペアリブの食べ底無い・・・どれも自分たちに非があることがわかり大爆笑。山利喜さん、採点し直しで90点。満足しました。次回はスペアリブを必ずや!!
帰りの電車の中で、僕はおじいちゃんを思いだしていた。戦争に行き、憲兵と大砲打ちをしたじいちゃんは、大砲のせいで耳が遠くなり、憲兵が故に軍隊の嫌なところをたくさん見たらしく、それがあるからだろう、帰国してからは周りの人にはいつも優しく、正しく、町で愛される偉大な人だった。お葬式の時には、市長や県会議員でも亡くなったかのように、ものすごい距離に渡って花輪が並べられた。僕が子供の頃、僕の両親や親戚なんかと、とても楽しくお酒を飲んでいたじいちゃん。そして酔うとばあちゃんがメイクを施し、おてもやんを踊る。古い記憶がよみがえり、あの時のお座敷にタイムスリップしたような気になった。昔は良く家にお客さんが来ていた。座敷にテーブルを出し、お母さんやばあちゃんが料理をたくさん並べ、酒屋がビールや酒を運んでくる。そして飲み、食い、歌い、踊る。今思えば、古きよき日本の姿があった。今ではそんなことは田舎でも行かなきゃ無いのだろう。人を呼ぶとなると、なんか妙に構えてホームパーティーみたいなり、なんだか呼ばれた方はくつろげない。久しぶりにそんな記憶が蘇り、逆に少しさみしくなった。おじいちゃん、おばあちゃん。僕もくさやでお酒が飲めるようになったよ。もし生きていたら、一緒にお酒を飲みたかったね。どんな話をしたんだろうね?なんだかセンチメンタルになった。横では嫁さんが恒例の車内居眠り中。嫁さんを連れて、ふたりのお墓参りに行ったことがある。ふたりのお墓から見える伊豆の海の綺麗さに、嫁さんは感動していた。ばあちゃんの希望で場所を選んだあのお墓。今頃、あの海を見ながら、二人は仲良く何をしているのだろうか?なんだかふたりに会いたくなった。またお墓参りに行こう。僕がいつか年を取り、あの世に行ったならば、お座敷に料理とお酒を用意して待ってて欲しい。きっとそこには僕の両親や親戚やらいとこやら・・・大賑わいだろう。
くさやの香りが思い出させた、昔の記憶でした。
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2 コメント

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Unknown (須恵の男)
2006-08-15 12:25:27
うまいね~。本でも出せるんやないん?機会があったら福岡の話のよろしく!!更新期待しとります。
じいちゃん (まゆみ)
2006-08-23 21:44:32
じいちゃんばーちゃんの話は

じーんとくるね~



沖縄には“しーみー”があって

夏入る前くらいだったかな~

親戚一同集まって

お墓で飲んだり食べたりして

死んだじいちゃんばあちゃんを迎えるんだって

傍から見たらお墓でパーティーよ。



いい風習よね!

きっとじいちゃんもアベッカムと飲みたがってるよね!

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