あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

ザ・ベスト・オブ・山種コレクション(後期) ・山種美術館

2012-01-09 23:37:57 | 日本美術
山種美術館がこの恵比寿から歩いた広尾に移って3年目。
開館記念は堂々と「速水御舟展」
その人気ぶりに館内の熱気が今でも思い出される。

その山種美術館が創立45年を迎え、年末年始にかけて
コレクションのザ・ベスト・オブ・コレクションとして
特集を組んでの展覧を開催中。
前期の展覧に伺えなかったのが残念だが、
後期にお邪魔できてホッとした。

ブログやTwitter上でこの企画の情報を得るような昨今。
そのツールを上手に駆使して沢山の人たちと
同じ空間で鑑賞できるという不思議な時代。
それもまた、新しい交流の仕方でフレキシブルに利用できれば
いいのだと、思って、中年なことを足かせには感じつつも
お若い方々と一緒にトークを伺えたことは楽しい限りだった。

さて、山崎館長がお見えになって驚いたのは
思いの外華奢で小柄だったということ。
しかし、ひとたびマイクを持ちコレクションの絵について
語りはじめるとまろやかな低音のボイスで心地よく、
ゆるりとした気持ちになっていったのも不思議だった。
当然ながら、お話も流れるごとくよどみなく、
貴重な作者との交流なども交えての話は興味が尽きなかった。

まずは洋画コーナー
山種に洋画とはどうかと思う感想も持つ暇なく、とてもなじんでいた。
あの壁に佐伯祐三がフィットしていた。
彼はキャンバスを戸外に出して描いたので、
絵の中にはゴミも混じっているそう。
他には古径の静物、黒田清輝の湘南の海水浴。
梅原龍三郎のバラと蜜柑。
静物画の油絵群。
複製品ではあっても昭和の家の応接間にはなんとはなしに
梅原龍三郎とか安井曾太郎などの小品油彩が掛かっていた。
デパートからもらうカレンダーも、
彼らの作品が選ばれて、気軽に絵と暮らしていたように思う。

近現代日本画
ここの作品群を見るとやはり、山種らしさが溢れているように思った。
川合玉堂の早乙女は館長のお気に入りの作とか。
奥村土牛の名品、城、鳴門、醍醐
城は姫路城、鷺城と呼ばれる美しい城。
鳴門の静かな潮の渦は翡翠色で透明感がある。
醍醐は有名な桜の絵。この桜色には土牛も苦労をされたのだろう。

ガラス一面のケースには大型の屏風が2作品。
速水御舟の翠苔緑芝
そこに描かれている瑞々しい紫陽花の花に彩色の様々な苦心が見て取れた。
薬局で色んな薬を求め調合して色々試してみたという
お話を伺った。
2羽のウサギと対峙する黒猫の目線、
盛り土のバランス、緩いカーブの重なり方、
近代の琳派だなぁと嬉しくなる。
その隣には落合朗風のエバ。
なんとも熱帯的なうっそうとしたジャングルに
蛇に絡まれた美女が現れる。美女の目線よりも
蛇の目線が美しい。む~っとした熱帯のくぐもった
濃い命の香りが伝わってくる。

美術館の一番奥の突き当たりの壁が一番広い面積を持っている。
それはこの東山魁夷作、満ち来る潮 この大作を入れるためだったとか。
コレクションの中でも最大の作品。
大海原で岩に波しぶきをあげ、変化し続ける景色を
雄大に金を散らし、怒濤も聞こえてきそうな作品。

海つながりで
次に現れたのが 川端龍子の鮮やかな青と白のコントラストが付いた
鳴門。
この青は日本にない激しく、眩しい青だ。
だから、海も遠い海のように見える。

会場をぐるり回り込んで次に展示されているのは
福田平八郎。
最初になまめかしい牡丹。
一双の屏風仕立て。
中国絵画にありそうな、深い臙脂色と薄いピンク、
葉の色が実に控えめな緑。
牡丹は今が盛りの花や、つぼみ、はらはら落ちている花弁、
様々な様子が一面にびっちり書き込まれた超リアル路線。
裏彩色もされているとか。
妖艶なリアルな牡丹が大変気に入っている。
その隣には
リアルから離れた、すっきりとしたデザイン的な作品2点。
筍、花菖蒲。
近美所蔵の屋根瓦に雨が描かれた作品を思い出す。

あの時代、超リアルに行かざるを得ない、そんな機運があったのだろうと思う。
その後ろに麗しい作品群。
小倉遊亀、伊東深水、橋本明治ら。
その壁の一番端に横山操の墨絵のような作品。
この絵はシリーズもので、あの瀟湘八景を意識しての連作で
越路十景のうちの一つ。
十景ずらり並ぶ姿を一度拝見したいものだ。
しかし、線の描き込みが激しく、遠くに飛ぶ鳥も凝視しないと
見えない。
中国の牧谿などの墨絵に取り組んできたこともこれで見て取れるのだった。

小野竹喬のほのぼのとした 沖の灯。
あぁ、やさしいな~と思う。

横山操の墨書きしたあきれるほどの細い林にしびれると
その背後から加山又造の満月光 が襲ってきた。
黒々とした山の頂きは雄々しいが、その裾野には
可憐な秋草が風に吹かれている。
思い出すのは武蔵野図屏風。
加山又造のストイックな線が好きだ。

上村松園を母に持つ上村松篁の白く輝く
白孔雀。
館長さんは自ら慶応を出た後に芸大に入り日本画を学んだそうだ。
その情熱たるや、いかばかりのものだったことだろう。
それで、岩絵の具とのつきあいも実体験があるので、
説明に体温が入る。
この白を作るのには貝殻をつぶしたものをもっとなめらかにすりつぶし、
膠水で耳たぶ位の柔らかさになったら、
また膠水で溶いていく,そういう気の遠くなる作業が
あるのだと言うことを伺った。
また、松篁氏のご自宅には
上野動物園をしのぐ鳥の数を飼育されているとのこと。
上野動物園から実際観察にみえたそうだ。
絵の画題にとことんつきあうのは、
若冲を思い出させてくれた。

高山辰雄の坐す人。
仏の存在を彷彿とさせる絵なのだが、
重厚な色の重なりがその人らしい。
那智滝を思い出す。

このテーマ最後は平山郁夫 バビロン王城。
シルクロードの画家平山郁夫らしい、エキゾチックな画材なのに、
実に穏やかな気配の建物。

そしてラストは
速水御舟の特設コーナー
あの炎舞が妖しく今も燃えている。
特筆すべき、逸品であることはその存在感で
示されている。

小品の紅梅、白梅の対の軸も可愛らしいし、
墨牡丹は色っぽい。
ともかくは御舟のお宝所蔵の第一の美術館で
この特設コーナーは薄暗くじつにいい雰囲気を醸し出している。

楽しい館長さんの盛りだくさんのお話であったが、
その中でも
絵との出会いを大切に、様々なものを見ていくことの大切さ
それをとても大事にお話くださったのが印象的だった。
まさに、この日、間近にお話しできる機会を得、
新しい出会いを頂けたことになった。

拙いブログを通して、お誘い頂いたり、ご案内頂いたり、
本当に好きなことを続けてきてよかったと、
これかからも好きなことを続けることに迷いがなくなり、
ますます、現場で熱く活動されている方々を
尊敬し、応援したくなった。

美術を、アートを愛する気持ちは
無償の愛に通じると確信した。
ただ好きという純粋が光をもたらすのだと。

山崎妙子山種館長ほか、学芸の皆さん達の
ますますのご活躍と山種美術館の繁栄を願ってやまない。

また、この企画をされた、@takutwiさん他の皆様にも
お礼申し上げます。

この展覧は2月5日まで。
次回は「和のよそおい」展。美しい着物美人が勢揃いします。
和服で鑑賞に特典もあるようです。ぜひ!!

メモをとらずに記事にしたので、間違いがあると思いますが、
見つけた方、ぜひコメントに一言載せてくださいまし。
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