あべまつ行脚

ひたすら美しいものに導かれ、心写りを仕舞う玉手箱

金刀比羅宮 書院の美 ・芸大美術館

2007-07-10 23:56:42 | 日本美術
朝から雨がショボショボ降って、梅雨らしいお天気ではあったけれど、
芸大まで行くことになって、私の心は晴れ模様~(陽水♪)

チラシには、応挙の虎図が若冲の襖絵をバックにして水を飲んでいる。
この虎ちゃん、ニャン介のようで、ちっとも怖そうじゃないんだ。
あんまり勇ましくないし、
この虎にはご執心じゃないので、若冲のおどろおどろしい花達に期待しよう。

そう思っていたら、
なんと、入ってすぐに
陵王図・桜樹太鼓図衝立 岸岱 天保15年 1844年
がつ~~んとやられてしまった。
かっこいい~~~
舞楽図が好きな私には、なんとも嬉しい初見で、
悠然と踊っている様に惚れ惚れ。
裏を横から拝見すれば、桜咲き誇る中、舞楽の太鼓が賑々しく描かれている。
この飄々たる雰囲気が気に入った。
これを描くは、岸岱。
この人は、岸駒のご長男。
岸駒といえば、プライスコレクションで、見た覚えがある。
中国風の絵。
この岸駒の息子さん岸岱は、画才がないと言われたこともあったらしいが、
なかなかの画力ありと見た。
今回、一番の収穫となった。

応挙はんは、ブレがないから、立派に無難にお仕事お勤めになる。
それで、ひねくれものの私は、応挙にはあまり目配せせずに、
ひたすら岸岱を見ていた。

奥書院 柳の間
あまりにも大きなありえない柳の障壁画。
あんなに葉が茂っている柳は見たことがない。
あんなに太く、横に枝を張らしている柳を見たことがない。
二条城の松の絵のように、雄雄しく張り出している。
しかし全体は繊細で、風にたなびいて、
白鷺も寄ってくる。
所々複製だそうだが、そんなことは気にならない。
今のうち、どんどん複製して、劣化しないうちにコピーしておくのだろう。
残念ながら、描いた人の魂まではコピーできない。
けれど、こんなに正しい写本はないだろう。

菖蒲の間
ここで又驚く。
すそには瑞々しい今や盛りの蓮の花。
その頭上にはなんと、蝶の群生。
菖蒲の花達のなんと生き生きとした有り様。
鶉のようなかわいらしい鳥も見えた。
姫様のお部屋か?
コピーができるなら、あそこの書院の蓮と蝶を壁紙に。
そういうお仕事ができるはずだ。
もう、メタリックな、無機質な白い、コンクリートの壁はやめよう~~
花鳥図の壁紙だ!!

そう一人盛り上がってしまった。

春の間
こちらもまたなんともほほえましい。
松とタンポポのお部屋。
松もまだ幼木。頼りなげに、若々しく緑で季節のこれからを表現。
タンポポがまた、可憐でかわいらしい。
襖絵にこんな脱力の画題で良いのかと思うほど。
澁澤龍彦に見せてあげたい、タンポポ図。
きっと、今回のための欄間なのだろうが、
その欄間も菊模様で、かわいらしかった。

お父さんの代から、虎の絵で評判をとってきた岸派らしいが、
今回は虎の絵はなかったけれど、
とても素直な、素朴な真面目な絵師のように思った。
後から見る若冲爺の花丸図といいバランスが取れていると思った。

その奥に、
上段の間 伊藤若冲 明和元年 1764年
岸岱より80年も前に、花丸図を描く。
若冲らしく、可憐で美しい花も、どこか危なげな気配。
葉の虫食い跡が若冲のサインのようにまとわり付いていたし、
微細な表現に、しつこさが溢れていた。
図譜となって、ぱらぱら手元で拝見したいものだ。

最後に、新しい作家、明治の人の狩の絵。
富士一の間
富士二の間 邨田丹陵 明治35年 1902年

なんともリアルで、山口晃の師匠ではないかと思ったほどの
線の細やかさ、馬の息使いまで伝わって来るような、
空間の表現もとても現代的で、画力に感心してしまった。

フロアー全体が書院のなかに入ったように再現されていて、
展示に工夫がされていた。
畳に直に置かれたライトに違和感があったけれど、
あそこは、自然光が入ってこないから、致し方ない。

襖絵を堪能したら、地下にもぐる。
そこは、奉納されたものが展示されていた。
絵馬の数々、舟の模型など。
その絵馬の中に谷文晁のこれも、舞楽の羅陵王図
それを奉納した証の扁額縮図。
これがすばらしかった。

良く見れば、芳年の絵馬もあり、楽しい絵馬シリーズだった。
絵馬の額縁もなかなかの見ごたえがあった。

それから、隣の会場で、広重が100点揃っているらしいから、
これもまた、壮観な眺め。
これはまた、改めて。

実によいものを拝見させていただいた。
その建物を現地に行かなければ見ることができない襖絵、
絵馬、そのようなものをここ、東京で拝見できたのだから。
本来ならば、現地で、自然の風に吹かれながら、
体験する見学を願いたいのは山々だけれど、
こうして、上京されたことに感謝しなければならない。
いずれの時にたずねるチャンスがめぐってくることを願うばかりです

帰りに不忍池の蓮の花達をみて、
すっかり心癒され、浄土への旅立ちには蓮を持っていきたくなった。
ナマには、勝てまへんなぁ。
ご参考までに。こちら

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18 コメント

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Unknown (すぴか)
2007-07-11 00:32:50
今パソコンしまおうと、ひょっと見ましたら
すてきな記事を見つけて、読ませていただき
ました。
おもしろい!です。私は7日初日に行き、
8日は田中優子さんの講演会に行きましたが、
金刀比羅宮のほうはまだ若冲の「花丸図」に
ついてだけアップです。5月に友人たちと
ナニワイバラがでると、あれこれやってた
ものですから。金曜日都内に行くので、
帰りにまたみてきます。あの邨田丹陵は大発見
でした。
すぴか さま (あべまつ)
2007-07-11 11:40:24
こんにちは~
拙い記事に面白いと行って頂き、嬉しく思います。
本当にノリで鑑賞するので、
落ち着かない文章で、恐縮です。
こんぴらさまにこんな様々なふすま絵があって、
圧巻でした。
狩野派なら、徹頭徹尾狩野派でイメージの統合があるのですが、こんぴらさんの様々な絵に驚きでした。
応挙の虎次郎(勝手に命名)は、ペット系ですよね。
邨田丹陵は、ほんと、グラフィックの元祖のようでした。ぜひまた、芸大お楽しみ下さいませ~
Unknown (meme)
2007-07-11 20:06:48
早々と芸大に行かれたのですね。
期待以上にすばらしい展覧会であることが
よ~く分かりました。

混雑覚悟で私は今週土曜日に行く予定です。

楽しみ楽しみ。

行ってきたらTBさせてくださいね。
meme さま (あべまつ)
2007-07-11 21:53:13
こんばんは。
芸大が今後文化遺産を引き継ぐプロジェクトに
しっかり関わっていくのだと思いました。
それがあっての芸大でのお披露目なのでしょう。
今のところ、大混雑ではなかったです。
私の目線はずれているところがあるので、
お気を付けて下さいませね。

ともかく、土曜日たっぷり上野をお楽しみ下さいませね★
memeさんの記事も楽しみに致します
あべまつさんのところは (oki)
2007-07-11 22:42:34
郵便が早く届くのですね、うちは12時にならないと来ない/笑。
展覧会はまだ観ていないのでなんともいえませんが、金比羅さんにお参りされたことはありますか?
いちにいちに。
石段を上っていい運動ですね
oki さま (あべまつ)
2007-07-11 22:54:27
okiさん、いつもながら、感謝です
私は、四国は未踏の土地、なのです。
瀬戸内をフェリーで抜けたことはあるんですが。

芸大行って思いましたが、
つまりは、現地に行かねば、ってことですね。
でも奥の書院は非公開の場所らしいので、
価値ありです。
階段が凄いらしいので、体力付けることが先決とか・・・
いざ四国 (Tak)
2007-07-12 17:46:06
こんばんは。
TBありがとうございました。

私もまだ四国は未踏の地です。
これを機に初上陸といきたいものです。
冬、初詣にかこつけてちょいと四国まで
そんなに上手くはいかないかな~
Tak さま (あべまつ)
2007-07-12 21:04:59
こんばんは。
コメント、TBありがとうございます。

四国って、アクセスが今ひとつ盛り上がりません。
これを機に、ほんと初上陸したいですねぇ。
四国の美術、知らなさすぎてました。

温泉もあるし、魚も上手い、酒もうまし、
うどんもあるし・・・なにしにいくんだろう?
夏は、水が大変??
妙に気になる四国です。
京都の絵師たち (とら)
2007-07-12 21:36:40
こんぴらさんの絵はイマイチ迫力にかけるところがありますが、きれいで巧いですね。
フランス人の評価はどうでしょうかね?
とら さま (あべまつ)
2007-07-13 20:44:26
こんばんは。
こんぴらさんのHPを拝見すると、
ギメには高橋由一が行くようですね。
そのかわり、岸岱の襖絵は行かないようです。
もはや会場図まであって、面白かったです。
襖や壁に絵を描く名絵師達の技に卒倒してくれると願っています。

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