阿部ブログ

日々思うこと

明日、いよいよNHK 『クローズアップ現代』 でトリウムがメインテーマで報道されます。

2010年11月09日 | 日記
いよいよ明日、NHKの『クローズアップ現代』でレアアース採取後に廃棄されているトリウムを原子燃料として利用する動きが海外で顕著であると言う内容で報道がなされる。
鈴木ディレクター、映像さん、音声さん、お疲れ様でした。敬意を表します。

さて、トリウムの利用についての研究開発についてはヨーロッパ諸国で進んでいる。
ノルウェーのハルデン試験炉(この試験炉は日本の電力会社も照射試験で利用している)で来年2011年にトリウムとプルトニュウムの混合燃料に照射試験を行なう。またEUでも超ウラン元素研究所がトリウム燃料の照射を行ないトリウムとプルトニュウムの振舞いを研究している。そもそもドイツでは統一前の西ドイツ時代からトリウムを燃料として利用している歴史があり、受入れ易い土壌がある。米国エネルギー省でもロシア、イスラエル、韓国と原子力研究イニシアティブを立上げ、現行の加圧水型原子炉でのトリウム燃焼用集合体の開発を行なっている。

レアアース大国・中国においては更に積極的に利用しようとしており、現在、世界最大のレアアース鉱山・包頭では、カナダと共同でトリウムの燃料集合体を開発しており、ほぼ実用の目途が立った模様。また上海郊外の泰山原子力発電所では2012年にトリウムによる発電を開始し、早ければ2014年までにトリウム燃料専用炉を稼動させる計画が粛々と進行している

我が国日本においてはどうか。スマートグリッドに後ろ向きであるのと同様にトリウムについても電力業界は否定的である。そもそも1950年代後半に国内の希土類企業からトリウムの国家管理構想案が出されたが、当時は受入れられなかった。また1980年代にもトリウムが注目を集めたが、冷戦が最高潮に達している時期で平和利用よりも軍事が優先され、その後忘れ去られた経緯がある。

尖閣諸島での事件をきっかけにレアアースが広く国民一般に知られるようになったが、このレアアースがトリウムと言う放射性物質を随伴する事までは理解されておらず、日本企業はこのトリウム問題があるために中国以外でのレアアース調達が出来ずにいる事は広く衆知されねばならない。

この度の件で鉱物資源業界はトリウム問題を避けて通れない事を察知したが、原子力業界は破綻しかけているウラン=プルトニュウム路線から抜出そうとしていない。トリウムも原子燃料として利用する柔軟なエネルギー・ポートフォリオの構築が必要だ。

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