日本中の鳥の生息地がどう変化したかを調べる「全国鳥類繁殖分布調査」が、約20年ぶりに進められている。過去2回は環境省が実施し、政策に役立ててきたが、今回は国の予算確保のめどが立たず、日本野鳥の会(東京)などが民間主体でスタートさせた。東日本大震災などの影響を探る意義もあるが、調査員は高齢化が進み、資金難にも悩まされている。
仙台市宮城野区の蒲生干潟。青々と広がっていた松林は、震災の津波にのまれてほぼ壊滅した。6月、日本野鳥の会宮城県支部長の竹丸勝朗さん(77)が調査すると、松の木をねぐらにしていたカッコウの姿は全く見つからなかった。
「カッコウは『仙台市の鳥』。昔は街中にたくさんいたのに、今ではほとんど見かけない。震災だけでなく、宅地開発や、越冬する東南アジアでの森林伐採の影響もあるだろう」と竹丸さん。
一方、津波でヘドロが流されて、餌となる貝などが増えたため、シギやチドリの数は震災前より増えたという。
過去の調査は1974~78年、97~2002年に行われ、結果は環境省のレッドリスト改訂などに活用された。今回は20年までの5年間、主に繁殖期の春に約2300地点で、鳥の様子や鳴き声などを記録する。
慶応大大学院の樋口広芳特任教授(保全生物学)は「鳥は種類が豊富で、生態系の変化を示す指標として優れている。特に繁殖期はさえずり、縄張りをつくるため目につきやすく、魚や虫より観察しやすい」と解説。「ヒバリやスズメなど日本に一年中いる鳥も、渡り鳥も、近年減少している。その傾向が分かるはずだ」と結果に注目する。
頭が痛いのは費用だ。5年間で必要なのは調査員の交通費など約3千万円。現在手当てできているのは、助成金1件の300万円だけだ。ある民間基金に別の助成金を申請した際には「環境省がやるべき調査ではないか」と断られたという。
環境省は「他の動物の調査もあり、すぐにできる状況にない。ただ全種類の鳥の全国的な動向が分かる貴重な調査で、結果のとりまとめは担当する」としている。
調査員は20年前の前回調査に関わった中高年層が中心。体力面や、高音が聞き取りづらいといった懸念もある。野鳥の会の担当者は「若い世代にも野鳥観察の楽しみを知ってほしい」とボランティアでの参加を呼び掛けている。〔共同〕
仙台市宮城野区の蒲生干潟。青々と広がっていた松林は、震災の津波にのまれてほぼ壊滅した。6月、日本野鳥の会宮城県支部長の竹丸勝朗さん(77)が調査すると、松の木をねぐらにしていたカッコウの姿は全く見つからなかった。
「カッコウは『仙台市の鳥』。昔は街中にたくさんいたのに、今ではほとんど見かけない。震災だけでなく、宅地開発や、越冬する東南アジアでの森林伐採の影響もあるだろう」と竹丸さん。
一方、津波でヘドロが流されて、餌となる貝などが増えたため、シギやチドリの数は震災前より増えたという。
過去の調査は1974~78年、97~2002年に行われ、結果は環境省のレッドリスト改訂などに活用された。今回は20年までの5年間、主に繁殖期の春に約2300地点で、鳥の様子や鳴き声などを記録する。
慶応大大学院の樋口広芳特任教授(保全生物学)は「鳥は種類が豊富で、生態系の変化を示す指標として優れている。特に繁殖期はさえずり、縄張りをつくるため目につきやすく、魚や虫より観察しやすい」と解説。「ヒバリやスズメなど日本に一年中いる鳥も、渡り鳥も、近年減少している。その傾向が分かるはずだ」と結果に注目する。
頭が痛いのは費用だ。5年間で必要なのは調査員の交通費など約3千万円。現在手当てできているのは、助成金1件の300万円だけだ。ある民間基金に別の助成金を申請した際には「環境省がやるべき調査ではないか」と断られたという。
環境省は「他の動物の調査もあり、すぐにできる状況にない。ただ全種類の鳥の全国的な動向が分かる貴重な調査で、結果のとりまとめは担当する」としている。
調査員は20年前の前回調査に関わった中高年層が中心。体力面や、高音が聞き取りづらいといった懸念もある。野鳥の会の担当者は「若い世代にも野鳥観察の楽しみを知ってほしい」とボランティアでの参加を呼び掛けている。〔共同〕