底無しの夢(麻亜子の勝手に選歌)

短歌人の皆さんの歌や、読んだ歌集を紹介しています。
「古今伝授の里フィールドミュージアム」のことなども…

『月に射されたままのからだで』勺禰子第一歌集   

2017年07月27日 | 歌集・冊子
堺市生まれ奈良市在住、短歌人の歌友であり、短歌人子の会で共に学ぶ、
勺禰子さんの第一歌集『月に射されたままのからだで』が、六花書林より
出版(2017年7月24日)されました。

定刻に擦れ違ふ朝のドーベルマン頭の中にひろがる惨事

この師走クリスマス色に彩られほんまにうれしいんか?通天閣

風の強さは風の気持ちの強さゆゑ吾も立ちたるまま風に向かふ

はつきりとわかる河内へ帰るとき生駒トンネル下り坂なり

吉野では「鬼も内」だと君がいふ今年の桜はひとかたならず

はじめてのそして最後の夕日浴び解体家屋はからだを開く

困難といふとき急に顕はれる国とは今更ながら、概念

ハンプティ・ダンプティは宣る「言葉とは自分が選んだ意味だけで使ふのだ」     

湿度低き初夏の川辺に紙ふぶき踏みしだかれぬままひかりをり

ときどきは峠で耳を澄ますこと月に射されたままのからだで


勺禰子さんとは「短歌人子の会」で共に研鑽を重ね、もうかれこれ10年近く
経つだろうか。それだけに、集中の歌はどれもおなじみのものばかり。
仲間の第一歌集は思い入れが強いものです。
一~三部に部立てされた中の、一部の中過ぎに収録されている「暗越奈良街道」
(暗越は(くらがりごえ)と読みます)は、2010年5月号の「卓上噴水」に掲載
された一連で、クローズドの批評会において忌憚のない批評を交わし合った。
「奈良」は著者にとって特別な因縁の場所。ディープな場所なのです。

四首目、「はつきりとわかる河内へ帰るとき生駒トンネル下り坂なり」
「暗越奈良街道」の中の一首。歴史ある古道、古来よりそこをいろいろな人や
物が行き来した土地の異様なまでのイメージを背景に、作者の心象(ここでは相聞)
が展開されます。「下り坂」を行く時、現実の世界・俗世に戻らなければいけない
ことを、強く受け入れる作者がみえます。

六首目、解体される家屋を擬人化して面白い歌だと思いました。
「からだを開く」はエロスの部分を感じるかもしれませんが、 ここでは機械を
使って毀されていく 受動的なものとして読めばよいでしょう。今日一日の
解体作業もいよいよ終盤、残骸までも夕日に照らされているのでしょう。

八首目、「ハンプティ・ダンプティ・・・」三部目の最初に置かれた「強行採決」
4首のうちの一首。「強行採決」以降の歌は、作者にとって大きな課題だと言う。
言葉には何かを左右する力が潜んでいる、言葉の引力に敏感であり続けることで、
行く末も変わると考えている。これは相当な覚悟なのです。

十首目、作者は自らの根源から聞こえる静かな声に耳を澄ましていくのでしょう。
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2 コメント

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Unknown (文)
2017-07-27 06:29:25
ありがとう。麻亜子さんの評を参考に、もう一度読みます。
Unknown (麻亜子)
2017-07-27 08:45:54
文さん、
さっそくコメントをいただきありがとう!!
歌集を読みながら、ネット歌会のこととか…いろいろ懐かしい皆さんとのやりとりが思い出されました。

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