底無しの夢(麻亜子の勝手に選歌)

短歌人の皆さんの歌や、読んだ歌集を紹介しています。
「古今伝授の里フィールドミュージアム」のことなども…

秋のプロムナード(「短歌人10月号」)より

2016年10月08日 | まあこよみ
いろんなとこに行った歌    斉藤斎藤

客待ちのおなじ地元のタクシーが二人掛かりで二台を磨く 
 
クーラーはのどがかわいていま何時ねむくて顔におとすiPhone


ぎんいろきんいろ    武下奈々子

溝ソバのはなの骸(むくろ)はほろほろと夏のかけらの星を零す

汗冷ゆる間なき一夏(いちげ)の労働を嘉(よみ)せよ 稲架(はさ)にイネの追熱


イタリア寸景   岩下静香

果てまでを歩めば崖の向こうにはカーラ・ロッサのうつくしき海

昨夜食べし平たき桃をカラバッジョ描きたる果物籠に見つけつ


雨の日々   西川才象

恋人と午後の時雨を凌ぎたる桃色の傘のその後を知らず

やがて来ん雨を待ちつつ合戦の前のもののふめく心あり


七月    猪 幸絵

隙間なく緩みなく締められてゆく縄を目で追う四百年分

人混みに母がいてその母もいて今は私の目で鉾を見る


おろかばえ   今井千草

ニンゲンヲユメシンズルナあじさいの根方にうずくまる野良猫の目は

おろかばえの合歓か舗道の継ぎ目より七、八センチばかりに育ちて


鷺草   藤本喜久恵

熟れすぎて黄が赤になり破裂せしゴーヤの自爆わが庭に見ゆ

炎天下に刈られし草を燃やしをれば炎の高さわが丈を超す


断簡    泉慶章

山々はインクで流す青色でこだま返しが塗りつぶし行く

抱き上げて桃のジュースの汗匂ふ欲する生がただそこにある


ひそやかに    魚住めぐむ

ふりむくと消えているから安堵して波打際に残すあしあと

日蔭の道ばかり歩いて会いにゆく夏の終わりはゴッホのばらに


晴海橋梁     佐藤大船

東洋の果てに来たりて異国びと行列せしむカラバジオ法悦のマリア

日除けなす茱萸の木繁りわが庭に落とせる翳濃くして夏深む


AKB48選抜総選挙    森澤真理

フェミニズム思想で掬えぬものもある超ミニの下かがやく素足

ブルーブラックインクの色に空は暮れ極東行きの飛行機の過ぐ


過酷なるもの    菊池孝彦

雨過にして霽(は)れゆく雲の切れ間よりまさをはあはしふかしはかなし

くらき潮のごときは四囲に生じつつわれは流され方を思案す


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