底無しの夢(麻亜子の勝手に選歌)

短歌人の皆さんの歌や、読んだ歌集を紹介しています。
「古今伝授の里フィールドミュージアム」のことなども…

『男歌男』奥田亡羊第二歌集

2017年04月25日 | 歌集・冊子
「心の花」所属の奥田亡羊さんの第二歌集(2017年4月17日短歌研究社)
『男歌男』です。
第一歌集『亡羊』から10年、「短歌研究」の連載に手を入れた作品を中心に、
『亡羊』以後の作品を加えた312首が収録されています。
奥田さんは、{「男歌」とはつきつめれば信頼と肯定の歌}だと述べています。

第一歌集のタイトルにも自身の筆名を採用していますが、『男歌男』という
タイトルにも、著者のこだわりを感じさせます。

名は多胡の入野よりとる四歳なり多胡の入野の奥へとかえす

永遠の欠落として故郷を受け取れ父のいない故郷を

どこに捨てても黙って家に戻り来るふたり子あるは恐ろしからむ

石の上に焚きし火のあと縄文の家族はここに首を寄せけむ

人はみな走る姿に眠りたり夜より暗くそびえ立つ山

やさしさは遠くにひとを見るこころ屋上に降る雨に傘さす

冷蔵庫に石を冷やしているような男であろうしゃべりつづけて

世を捨てて暗く我執を生きいしがやすやす死んで見するぼろぼろ

波が寄せ波が引きゆくしずけさに語らうごとく子を叱りおり

なにもない大地に風が吹いていた いつかぼくらがよろこびますように


一首目は、「万葉集」の中の有名な東歌、

我が恋はまさかもかなし草枕多胡の入野の奥もかなしも (卷14・3403)

より。
まさか=現在、奥=将来 と対になっており、今という時間、そして
奥にあってみえない将来の時間に思いを馳せるとき、いま現在の切実さ、
緊迫感を感じてやみません。

「心の花」佐佐木幸綱氏の系譜に連なる男歌と言えば、「金色の獅子」のような
力強い歌をイメージしがちですが、奥田さんの歌は、日常や家族を詠んだ
歌にも情念と虚無、人間の弱さを感じますし、(十首目にみられるような)
「我」に拘泥することなく、個を離れた世界に繋がろうとする独特の世界を展開
しています。

八首目、「世を捨てて・・・」徒然草百十五段が下地になっています。
(「ぼろぼろ」とは、非僧非俗の乞食。我執深く闘争を事にする卑徒のこと)

読んでいくうち、2005年短歌研究新人賞受賞作品の「麦と砲弾」を強く思い
起こしました。どこからか他者の声が入りこむというミステリアスな印象、
「調べ」というのは、そういうところから自然と生れてくるのではないでしょうか。
時空間を超えて、我もまた「途上の人」に過ぎないと感じさせてくれます。

「麦と砲弾」より

兵士1 ニンゲンは 
兵士2 犬に食われてしまうほど
兵士3 自由なりけり
兵士4 空が青いな

兵士  砲弾は錆びゆく
 女  麦は青みゆく
兵士  僕らはいない
 女  永遠にいる
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