最近、リラはとても憂鬱なのです。幼い頃から大好きなアンジョルラスが、もうすぐ遠いパリへ行ってしまうからです。
リラは13歳になっていました。少しずつ、リラの周りにもいろいろなことが起きています。
今では、リラは2人の小さな弟達の“お姉さん”です。
捨てられていた赤ちゃんだったリラを拾って育ててくれた両親に、実の子が生まれたのです。
2人は、まだ3歳と1歳で、リラにとっては可愛い可愛い弟達です。
★ひとりは顔がでかく、もうひとりは女装癖があったが、リラには可愛い弟たちであった。★
実の子ができても、おとうさんとおかあさんは、今までと何も変わらずリラを愛してくれています。
リラは、それをとても幸せに思っていました。
そして、今でもリラはアンジョルラスの母にもとてもかわいがられていました。
時々、部屋に呼ばれて、いろいろ綺麗なものを見せてもらったり、手芸や行儀作法を教えてもらったりしています。
でも…、幼い頃にしていたように、その後でアンジョルラスの部屋に走って行って扉を叩くことは、いつのまにかしなくなりました。
誰に止められたわけでもなく、リラ自身ができなくなったのです。
いつの頃からか、アンジョルラスは、とても大人になってしまっていました。リラの眼には、なんだか眩しいのです。
あの遠い幼い日…アンジョルラスを天使にそっくりと感じ、『キレイなおめめだな…』と思った時よりもっともっと、
アンジョルラスは素敵になっていました。
たまに、せっかくアンジョルラスに会えても、嬉しくてたまらないのに、急に胸がどきどきして、顔も見られなくなる時もあります。
いつも…というわけではないのですが。。。
あたしは、彼を愛しているのかもしれない…。最近、リラは、そう思うのです。
それは、今までずっと感じてきた、大好きとは少し違います。
大好きというのは、ただ嬉しくて嬉しくて、周り中の人に聞いてもらいたいような気持ちです。
でも、今のリラの気持ちは…甘やかなのに時々とても胸が痛く、そして誰にも知られたくありません。
おかあさんにも、おとうさんにも…もしかしたらアンジョルラス本人にさえも。
アンジョルラスを好きということは何も変わっていないはずなのにこんな気持ちがするなんて、リラには不思議でした。
また、だんだんに、リラは自分が使用人の娘であることを意識するようにもなっていました。
そして…本当は、リラは使用人の娘ですらないのです。捨て子だったリラは、どこの誰なのかもわからない娘なのです。
今でも、リラは心のどこかで“自分は、拾われる前はリラの花の妖精だった”と思っているような子でした。
でも、そんなはずはない…ということも、幼い頃よりはずっとよくわかっていました。
憂鬱な心を抱えたまま、リラはぶらぶらと歩いていました。
アンジョルラスの出発は、いつのまにか、もう数日後に迫っています。
アンジョルラスはいつかはパリの大学へ行く…ということは、何年も前から、リラだってちゃんと知っていました。
でも、それはずっと先のことだと思っていたのに…。
大好きなリラの木が見えてきました。リラは、はっとします。アンジョルラスが木の下に座っていたのです。
ここ何日間か、リラはアンジョルラスに全く会っていませんでした。姿も見ていませんでした。
幼い頃から時々教わっていた勉強も、最近は、アンジョルラス自身の勉強がとても忙しかったために、そんな機会もなかったのです。
リラはゆっくり近づき、アンジョルラスの前に立ちました。
彼は本を読んでいるのだろう…と思ったのですが、そうではありませんでした。
アンジョルラスは、本は傍に置いて、辺りをぼんやり眺めていたのでした。
「…こんなところにいていいの?…出発の準備で忙しいんだと思ってた。」
「…そんなに忙しいわけじゃないんだ。」
リラは、そっと草の上に座りました。何か言いたい…と思い、アンジョルラスの顔を見ましたが、何も言えません。
眼が合って、慌てて下を向きました。そして、やっと口を開きます。
「ほんとに、もう、すぐに出発なのね。」
「ああ。」
また、二人は黙っていましたが、今度はアンジョルラスが言いました。
「俺がいなくても、ちゃんと勉強するんだぞ。」
「いや!勉強なんてしない!」
アンジョルラスが、少し驚いたようにリラを見ました。
もっと驚いたのはリラ自身でした。リラが、こんな口のきき方をするのは初めてのことでした。
でも、かまわずに続けます。
「勉強なんてできないわ。教えてくれる人がいなくなっちゃうんだもの…。」
「…一人でだって、勉強はできるさ。」
★ リラはひとりじゃできないことを、勉強したいの!★
リラは顔を上げます。
「じゃあ、どうしてあなたは大学へ行くの?大学へ…遠いパリへ行かなくったって、ここでだって勉強できるじゃない。」
アンジョルラスは苦笑しました。「それは、また違う話だ。」
リラはがっかりして、また下を向きました。
「…そうやって、すねると頬をふくらませるのは、小さい頃と変わらないんだな。」
「すねてなんかいないわ。あたし、もう、そんな子供じゃない…。」
…そう、すねてなんかいない。あたしは…ただ、悲しいだけ…。
リラが、今、本当に言いたいことは1つだけです。行かないで…その一言が言えません。
言ってはいけないということもわかっています。
それに…もし、リラがそう言ったとしても、それでもアンジョルラスはパリへ行くのでしょう。
悲しみが止まらなくなる、別れの日、もう今日なのね
私を夢中にさせた男の子が行ってしまう
彼は乗車券を手に入れたわ
自分のぶんだけね しかも片道、帰ってくる気なし
私は置いて行くのね
ざまぁみろって思ってるでしょう
彼はあたしと一緒にいると、気分がアガらないって
縛られてる気がするんだってさ
何、舞い上がってんの?そんな嬉しい?
自分があたしにしたこと、もういっぺん考えてみた?
さよなら言う前に、考えないわけ?
あの男、ぜんぜん、あたしはどうでも良いって感じだよね。
カーペンターズ(元歌はビートルズ)の『涙の乗車券』やさぐれた歌詞は超訳(少々でたらめ)です。
まるでモーツァルトのピアノソナタのように綺麗なアレンジですよね。
ビートルズバージョンも、ラフで好きですけどね。★
やがて、アンジョルラスが言います。
「パリへ行っても、リラのことは思い出すよ。…勉強してるかなって。」
「…それだけ?」
「…元気かなって思うよ。」…それだけ。。。リラは、そっと溜息をついて立ち上がりました。
「帰らなくっちゃ…。」小さく呟くと、とぼとぼと歩き出します。
アンジョルラスは黙って座ったまま、リラの後ろ姿を見ていました。
♪yuriさま
今回のリラ、私の中では、お誕生日の時の絵の、“お祈りリラ”が少し大きくなったようなイメージです♪
と、Lilasさんが書いておられたので、探したんですが、適当な画像がみつかりません。ごめんね。
この画像の数年後を各々で想像してください。
★神様、アンジョルラスを変な女の手から守ってください。
★あ、男の手(グランテール、ルイ、ヤマザキ)からも!
とうとう、アンジョルラスがパリへ出発する日がやってきました。
お屋敷中の人が外へ出て、玄関の前にずらりと一列に並んでいます。
大切な坊っちゃまの旅立ちですから、皆でお見送りするのです。
リラは、両親とも離れて、列の一番端っこに隠れるように立っていました。
リラは考えていました。なんとかして、泣かないであの人を見送りたい…。
アンジョルラスに泣き顔は見せたくありません。晴れやかな旅立ちの日なのですから。
周り中、皆、笑顔なのです。
でも、涙をこぼさないためには…、笑顔は無理でも、アンジョルラスの前でせめて泣かないようにするには、
いったいどうしたらいいのでしょうか…。
アンジョルラスが、使用人達一人々々と順番に短い言葉を交わしているのが見えます。
リラの両親とも何か話していました。小さな弟達が騒いでいるのが聞こえます。
リラは下を向きました。もう、涙が出てきそうです。どうしよう、どうしよう…リラは考え続けていました。
…はっとして、リラは顔を上げます。いつのまにか、アンジョルラスがすぐ前に立っていたのです。
アンジョルラスは、リラをじっと見つめています。
その顔を見ていると、リラの眼にはますます涙がたまってきました。今にも溢れ出しそうです。
突然、アンジョルラスは身をかがめると、リラの額にキスしました。
びっくりしたリラの涙が、一粒だけころがり落ちます。アンジョルラスがリラにこんなことをするのは初めてでした。
そして、アンジョルラスはリラの髪をくしゃくしゃっとなでると、小さな声で「元気で。」と言いました。
リラが何も言えないでいるうちに、アンジョルラスは、さっと背を向けると馬車へ歩いてゆき、乗り込みました。
すぐに馬車は動き出し、どんどん離れていきます。リラは身動きすらできず、馬車を見送っていました。
やがて、皆はぞろぞろとお屋敷の中に戻り始めました。向こうで、おかあさんがリラに何か呼びかけています。
リラは返事もせずに、ぱっと後ろを向くと駆け出しました。
うん、普通、こういうときは、ひとりでキスの意味を考えたいと思うよね。
走って走って…リラは、また、いつものリラの木の下にやってきました。
幼い頃のように、ぺたんと草の上に座ります。
ついさっきアンジョルラスの唇がふれた額を、そっとなでてみます。涙がぽろぽろとこぼれてきました。
茫然としたまま、リラは涙を流し続けます。
アンジョルラスは行ってしまいました。今度会えるのはいつのことなのでしょう。
クリスマスには帰ってきてくれるでしょうか?
…いいえ、アンジョルラスはクリスマスだからといって帰郷するような人ではないでしょう。リラは、そう思います。
パリは大きな大きな都会です。珍しいこと、おもしろいことが、きっとたくさんあるでしょう。
そして、大勢の人達がいるのでしょう。アンジョルラスには、たくさんの新しい友人ができるに違いありません。
何人もの男の人、そして…女の人も。彼はリラのことなんて忘れてしまうかもしれません。リラのことなんて…。
★きっとパリに行ったら羽根を伸ばすに決まってるわ。たくさんの女を射落として、酒池肉林よ、毎日!
・・・と想像していらつくリラ。(←どう考えてもこれはyuriの発想ですね、ごめんね)★
泣きながら、リラは空を見上げました。いったい、この空のどの方向にパリはあるのでしょうか…。
ふっと、何の前触れもなく、リラの心にひらめいたものがありました。リラは、あ…!と思います。
…そうだ。。。もし、あの人が帰ってきてくれないのなら、あたしがパリへ行けばいいんだ。
そうです。なぜ、今まで気がつかなかったのでしょう。アンジョルラスがここへ帰って来ないなら、リラがパリへ行けばいいのです。
急に眼の前がぱあっと開けたような気がしました。今すぐにでも、飛んで行きたいような気持ちです。
いいえ、今すぐは無理でしょう。おとうさんとおかあさんが心配して、反対するに決まっています。
でも、何年か経ったら…もう少し大きくなったら、きっと…。
リラは立ち上がりました。涙はすっかり止まり、また、空を見上げます。
今のリラには、まだ、どの方向にパリがあるのか、そこに行ったらいったいどんなことが起こるのか…知らないことがいっぱいです。
でも、この空は、確実に、アンジョルラスが向かったパリの空と繋がっているのです。
…あたし、必ず行くわ。あの人がいるパリへ。
リラは久しぶりに笑顔になり、空を見つめていました。
私がどこへ行くとしても
遠くどこまでも行くとしても
どんなときも あなたは輝いている
暗い闇夜を抜け 私に呼びかけてくるように
私がどこかへ昇っても
遠くどこまでも昇るとしても
私を空の向こうへ 高く引き上げてくれる
嵐の夜にも 私を抱き上げてくれるように
精霊よ来たれ 天より御使いを
ここに歌詞があります。
さて、財布は腹巻きに縫い付けたし
えーっと、乗り換えは?って悩みは、まだ鉄道ないから不要だし
そういえば、先輩は上京組なんですよね。俺とレーグル以外は皆上京組みかぁ。
そう、レミゼは田舎ものばかりで話が進む。
バルジャン 田舎出身 地方を転々としてパリへ
ミリエル司教 田舎の司祭(位は高いよ)
ジャベール 転勤族
テナルディエ一家 食い詰めてパリへ(経済難民)
コゼット、エポ、ガブも、田舎生まれ
ファンテーヌ 田舎からパリへ、子ができてパリから田舎へ都落ち
アンジョルラス、南部生まれ
いや、別に自慢なんかしちゃいないんすけどね。
主要キャラでパリ生まれは俺だけかなぁとかね。
まあ、パリといっても色々あるけど、マレ地区育ちなんですけどね。
ああ、別に貴族的という人もいるらしいけど、今でもおしゃれな街と言われてもいるけど
ユゴー先生も住んでたらしいし、まあ、やはり本当の主役はマリウスかなって
思われる人も多いでしょうね。しかし、僕としては・・・云々・・・(エンドレス自慢)
(・・・聞いてない。というか、せっせと荷造り中。)
あ、これこれ、去年リラが手作りしてくれたアンジョルラス人形だ。忘れないようにしなくちゃ。
アンジョルラスは星雲の志とアヒルの人形を懐に抱き、故郷を旅立ったのであった・・・
…にもかかわらず、とりあえず、つっこみをさせてください~。
一番最初の出だしは、“最近、リラはとても憂鬱なのです。”から始まるのですよ~。
“とうとう、アンジョルラスがパリへ出発する日がやってきました。”はね、出発当日の、“お屋敷中の人が外へ出て…”の文の、直前の文章だよw
細かいこと言って、すみません…。
…そ、そして、弟達ったら、顔がでかいのと、女装癖?!…うぇ~ん!!
感想は、また後で、ゆっくり書かせてくださいね。
…マリウスの自慢がいい!
つっこんでしまったけど、いつも本当にありがとうございます☆
ごめんごめん、なんでこんなことに?
コピペしたときに、ミスしたのかな?
細かくないですよ、だって、私のミスのやつだと、
意味不明な出だしになるもの。
弟たちの画像、ぜんぜんみつけられなくて・・・
あれはたぶん姉妹ですよね。
だから、女装癖ということでw
編集画面だとちょっとわからなくなって、結構間違えちゃうんですよね。どんどん指摘してください。
曲も、最近ネタ切れでw
こっちの曲のほうが好きっていうのがあれば差し替えますよ。遠慮なく言ってください。
みんな、それぞれ微妙に違うアンジョルス像なんで、面白いです。
キス、リラびっくりしたでしょうね。
他の人たちは、どう思っただろう?
もうどうせパリに行くから、思い切って、リラに人前でキスしたのかな?アンジョルラスはw
パリに着いたアンジョルラスとか、アンジョルラスの道中記とかも読みたい。もっと読みたい~~
アーロンのクリスマスもいいけど、アンジョルラスのクリスマス読みたい~
色々と今回も悲しかったです。
すみません、過去ログのコメント気付きにくかったよね。私、最近ヤマザキSTORYにハマり過ぎて、あっちに投稿してばかりでした。ヤマザキSTORYに関係ないコメントは、これからは最新記事に送ります。
ヤマザキ関連のコメントはあちらでいいのかな?スズキ様、あえて過去記事に投稿なさってるから、目立たずやって行きたいのかなぁ?っと思いまして…。にも関わらず、私がしつこく食い付いてるんだけどw 熱は下がったんだろうか?
アントンは現地の評判が良いから来年も続投するのかな??早くスケジュールを発表して欲しい。
私は管理画面から、いくらでも過去のコメントにたどれるんですけど、皆さんは難しくないですか?
そのコメントが付いてた記事を覚えてなかったら、コメントの表示が消えたら(左のバーの)探すのが大変かなと思いまして。
機能をみたら、コメントの表示が20件まで増やせたので、一応増やしておきました。
ヤマザキストーリーと関係あっても、なくても、最新のコメント欄で私は構いませんよ。
要は、見易さと探しやすさだけの問題なので。
あまり気付かれたくないコメントなら、過去に書いてくださっても、構いませんけどw
Lilasさんの描かれるアンジョルラスは、すごくリラのことを思ってますよね。ここで、幼いリラに愛を打ち明けることに責任をもてないので、黙って去ったんだと思います。
うう・・・リラが羨ましいよ。といっても、読むときは、わたしは完璧リラになりきってるんですけどね。
本当はリラを連れて行きたいんだよ~
キスしたいのは、額じゃないんだよ~
はぁ・・・また私が想像するとケモノンジョルラスになる。
馬車の中ではどうしてたの?気になるw
リラ、ものすご~くうらやましいです★
だって、アンジョラスとひとつ屋根の下(あれ、違うかな?)で暮らしているんですもの。
そして今日のリラのストーリー、切なすぎる!
でも最後のアンジョルラスからのキス。うらやましい限りです。
してもらいたいですよー。私だって!リラがされるなら私もされるもの!(んっ、違うかな?・・・うん、絶対にされない涙)
このストーリー、結構長いですよね♪
最後はどうなるんでしょう?
いつもキュンキュンしながら(子供のくせに・・)読んでます^^♪
これで少しは女子力upでしょうか?
いつもyuri様とみなさんの文章力のすごさに圧倒されています。その文章力、私にも分けてほしいです~!
ずうずうしく来た上に(自覚はしてます、もちろん)長文で失礼しました。
ヒュー・ジャックマン、皮膚ガン(涙)
鼻にガーゼの痛々しい写真がアップされてましたね。。顔が命なのに。。。
共演者も心配してるだろうな、と。
ヒューさま、全快お祈りします。
アーロンはまだ若いから大丈夫だね。
yuriさま
いろんな素敵なストーリーにここでは会えますね!いろんなアンジョルラスさんや、映画よりはるかに描写されてるバリケードボーイズ!
しかし、ここに参上(切り込み?)するには、もはや文学部レベルの文才が必要です。
通信講座(笑)とかで、作家コースとか随筆コースとらなきゃ?ヤバイー。
A.Z.さま
確かに!ヤマザキには惚れますよね。
まだプラトニックなとこが、また泣けます。
つくづく、スズキさま凄いです。熱いです。
バリケードが燃えてます。
私もこっそり、リラちゃんのストーリーとか探してたら過去ログから見つけました。
あ、私は、ある年代(発達段階)に特化した医療施設の、その中でもまたまたblood関係に特化した部署です。
なんだろねー(笑)
Lilasさま
私のお返事、もはや過去ログに行きました~
(笑)絶対目黒シネマ行きます!レミゼだけでも!