久しぶりにMISIAから離れた今週末、きのうは埼玉県立近代美術館(MOMAS)に出かけて「遠藤利克展 -聖性の考古学ー」を観、
きょうは東京国立博物館(トーハク)に出かけて、「親と子のギャラリー びょうぶとあそぶ 高精細複製によるあたらしい日本美術体験」ほか、
本館と平成館の常設展(総合文化展)を楽しんできました。
何度出かけても、そのたびに新発見があり、まいどまいど楽しんでいるMOMASとトーハクですが、今回も、ホント、楽しかった
でも、MOMASの「遠藤利克展 -聖性の考古学ー」(衝撃的ともいえる展覧会)とトーハクのことは後日に廻しまして、きょうは、MOMASが開館35周年記念企画として実施中の「ベストデザインの椅子グランプリ」のことを書くことにします。
この企画は、
「椅子の美術館」でもある当館。所蔵のグッドデザインの椅子から人気No.1を選ぶグランプリを開催します。エントリーは16脚。見た目、座り心地、椅子にまつわるエピソードなどにおいて、いずれ劣らぬ愛され椅子たちです。対象の椅子は投票期間中館内に設置され、自由にお座りいただけますし、写真撮影もOK。予選は館内投票ボード、または公式twitterアカウントにて行うアンケート(期間中不定期開催)にて投票いただき、あなたのベスト椅子を応援してください! 4部門の予選の後、各部門で勝ち抜いた上位2脚、計8脚を対象に館内に設置した投票ボックスで決勝投票を行い、栄えあるグランプリを決定します。
というもので、既に予選1組(王様気分の椅子部門)の選考が終了していまして(私も清き1票を投じました)、現在、予選2組(個性派ぞろいの椅子部門)の投票が実施中です。
で、予選2組の椅子4脚、だけじゃなく、エントリーされている16脚すべてに座ってきました
どれも「個性派ぞろいの椅子部門」の名にそぐわない個性派ぞろいで、しかも、驚いたことに、見た目が凄いだけでなく、座り心地も良い(=良くできた椅子)
「館内投票ボード」ではダントツの人気を集めていた「マリリン/ポッカ(スタジオ65)」は、
見たまんま、ふんわりした座り心地でしたし、古代中国の青銅器の文様をぬいぐるみにしてしまったような「エクストレム(テルイェ・エクストレム)」もまた、見たまんまでゴニョゴニョした座り心地でした(でも、悪くない)。
こんな「個性派ぞろいの椅子部門」で一番の問題作品は「XL (プラクトン1.8) (グラフ)」でしょう
写真で観る限りでは、学校とかに普通にありそうな椅子なのですが、問題はそのデカさ
その名のとおり、「XL」サイズなのですよ
「個性派ぞろいの椅子部門」にエントリーされているライバルと一緒に写真に撮ると(マリリンはカメラアングルの都合上省略、一番手前は「パントン(ヴァルナー・パントン)」)、
遠近法に逆らうように、一番遠くにあるのにデカい
座ろうとすると、「椅子に座る」というより「椅子によじ登る」感じです。
そして、背もたれに背中をつけて座ると、座面の奥行きがありすぎて、誰もがパンダ座りになってしまい、それはそれで、脚を伸ばすことになって、心地良いのですよ
眺めもいいし…
降りるのも大変なので、このままずっと座っていたい気分になったりして…
「個性派ぞろいの椅子部門」からは「マリリン/ポッカ(スタジオ65)」と「XL (プラクトン1.8) (グラフ)」が決勝進出するんだろな、と予想いたしました。
今後予選が行われる「モクメ部門」と、
「The 椅子? 部門」のエントリーも
眺めたり 座ったりしましたけれど、前記のとおり、どの椅子も、デザインはもちろん、座った感じもイイ
岡本太郎の作品に「坐ることを拒否する椅子」という、とてつもなく座り心地の悪い椅子もありますが、MOMASの椅子コレクションは、普段、来館者の休憩にも利用されている実用的な椅子ですから、当然といえば当然…
ただ、激しく驚いたのは、一部の椅子の製作年でした。
映画「2001年宇宙の旅」(1968年公開)の宇宙ステーションを思い出した「ジン(オリヴィエ・ムルグ)」(「The 椅子? 部門」の一番奥の赤い椅子)は1964年の製作だそうで、それ相応なんですが、こちらの斬新な形かつカラフルな「レッド・アンド・ブルー(ヘリット・トーマス・リートフェルト)」の製作年はいつ頃だと思われます?
直面と直線だけで構成され、座るとゴツゴツしそうに見えますが、実際に座ってみると、ギシギシいいながら、座る人の体型に合わせてくれる律儀者のこの椅子の製作年は、なんと「1918年」
日本の元号でいえば、大正7年ですゾ
また、「モクメ部門」にエントリーされている、
これまた直面と直線だけで構成されている「ジグザグ(ヘリット・トーマス・リートフェルト)」の製作年は1932-33年、昭和7-8年です。
座ると、これまた予想に反して座り心地が良いのですよ。
材料の木の弾力性が、この椅子の単純な構造ともあいまってカンチレバー的にユラユラしてくれて、心地いい~
「レッド・アンド・ブルー」にしても「ジグザグ」にしても、発表当時はぶっ飛んでいたんだろうな…と思います。
ほんと、この2脚には驚きました。
ところで、既に結果が出ている「王様気分の椅子部門」ですけど、私が投票した「トーテム(トールスタイン・ニールセン)」は、
3位にとどまり、あっけなく予選敗退…
形も色合いも、そして、座った感じもいいと思うんだけどなぁ…
で、「王様気分の椅子部門」からの予選通過は、1位は、椅子の傑作として名高いチャールズ・レイ・マッキントッシュの「ヒルハウス1 / ヒルハウスのベッドルームのためのハイバック・チェア」(1903年)、
ではなくて、ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエの「バルセロナ・チェア」(1929年)でした
観た感じ、「ヒルハウス1 / ヒルハウスのベッドルームのためのハイバック・チェア」の個性が圧倒的に光るのですが、実際に座ると、「バルセロナ・チェア」の心地よさときたら、立ち上がりたくない、このままずっと座っていたい と思うほど。
背もたれが、人体を無視するように垂直に立つ「ヒルハウス1 / ヒルハウスのベッドルームのためのハイバック・チェア」は、見かけとは反して悪くない座り心地なのですが、単純に「椅子」の機能としてはどちらが優れているのかと考えれば、圧倒的に「バルセロナ・チェア」に旗を揚げますな、私は…
それにしても、「バルセロナ・チェア」の製作年は1929年(昭和4年)、「ヒルハウス1 / ヒルハウスのベッドルームのためのハイバック・チェア」に至っては1903年、明治36年ですぞ
信じられますか?
ちょっと大げさかもしれないけれど、人類は進歩しているのだろうか?… と考え込んでしまったのでありました。