「久しぶりの水戸(その1)」のつづきです。
私が水戸に出かけるのは2度目で、前回も水戸芸術館がお目当てでした。このときは、「開催されていた展覧会を観に」ではなく、「噂に聞く水戸芸術館を観てみよう」というのが目的で、実際、展覧会の記憶はほとんど残っていませんただ、タワーに登ったら、案外つまらなかった・・・ということだけが刷り込まれています
それはともかく、水戸駅から水戸芸術館を目指して歩き始めました。駅前から水戸中央郵便局までの約400mは、かなり緩やかながらも、だらだらと続く上り坂で、健康に良さげです。降っているか止んだか判らないような小雨の中、途中で昼食を挟んで、約1.5kmの道のりを歩き(水戸芸術館のHPでは、「水戸駅からは、バスをご利用になると便利です。」の由)、水戸芸術館に到着
お久しぶりぃ~
と、正面の噴水(大きな岩が、吊されて水責めにあっているかのような意匠)の奥にある垂れ幕は何だ?
アップにしてみましょう。
調べてもこの「○×4個 ○ △ た」が意味しているところが判りませんどなたか御存知でしたらご教示くだされ(こちらのツイートによると、これは山口さんの作品っぽい・・・)
さて、大山崎、、、(こちらの記事をご参照方)じゃなくて、「山口晃展 前に下がる 下を仰ぐ」のこと。
いやはや楽しかった往復で3時間半の時間と約6,000円の運賃(そして観覧料800円)を費やして出かけただけのことはあったと思っています。
山口画伯は、一応「画家」という範疇に括られるのでしょうけれど、ただ絵画が展示されている展覧会に留まっていないところが、「山口晃展」なんだろうと思います。
インスタレーションが出展されていることだけでなく、展覧会の「順路」からして相当にユニークで面白い
右のフロアプラン 兼 出展リストに示されているように(って、右図だとよく判らないでしょうから、右図をクリックすると開くPDFをご覧くださいませ)、動線が3か所でクロスしています。
クロスしている地点には、山口作品ではおなじみのポリカ波板の屋根が架けられた機械式(?)交差点装置が設置され、観客が間違った順路に迷い込まないように淡々と誘導していました。
また、「順路」に数ヵ所ある黒い壁の通路が、ワクワク感を高める効果を発揮していたのには感心ただの屈曲した通路なのにね…
この展覧会では「電柱」系の作品が展示されている第3室のみ、撮影可でした。
世の中から「邪魔者扱い」されて、電線の地中化が進められているご時世ですが、こうしてみると、下が細くて上に大きな箱(変電関連機器)が据え付けられている不安定な構図も、直線と曲線が入り乱れる電線の取り回しも、ある意味、アートですなぁ・・・
ただ、残念なのは、「伊万里焼の碍子」が使われていないこと・・・
この記事を書くにあたって調べてみると、実際に「染付の碍子」が使われていたことを知って愕然
私、てっきり山口画伯の冗談だと思ってた…
この展覧会で初めて拝見した作品の一つに「紙ツイッター」がありました。
パソコンやスマホやケータイで「つぶやく」のではなく、「ノートに鉛筆でつぶやく」という、私的かつ閉鎖的なツイッターです。それでも、途中から1人だけフォロワーが付いているのが何とも微笑ましいこの延々と書き綴られた「紙ツイッター」を延々と読んで思うのは、山口画伯が、その絵画作品で感じられるとおり、きわめて繊細かつ几帳面かつ誠実な文字を書かれるということ。うん、、なかなか面白い
また、「食日記」や「日々のてならし 夫婦善哉」を観て感じるのは、山口画伯は、絵を描くことがひたすら好きなんだということ。山口画伯は北斎ばりに長生きされて、そのうち画狂老人と自称するようになるんじゃなかろうか・・・
「Tokio山水(東京圖2012)」を拝見するのは、そごう美術館での「山口晃展~付(つけた)り澱(オリ)エンナーレ老若男女ご覧あれ~」(記事はこちら)以来ですから約2年振り。
いやぁ~、やはり凄い
墨一色で描かれた大東京、薄い雲の隙間から俯瞰した眺めが、どっかぁ~んと視界を独占します。そして、近づいてしげしげと見つめると、いったいこれはいつの東京なのかと、時間的感覚をぐしゃぐしゃにしてくれます(東京スカイツリーは建設中)。
また、新作の「ショッピングモール」も「Tokio山水(東京圖2012)」と同系統の作品で、これもまた見入ってしまいます。なんとなくまだ「制作中」っぽくて(山口画伯の場合、よくあること)、会期末には別の様相を呈しているかもしれませんな。
この分だと、展示されていた全作品についてコメントを書いてしまいそうですこの辺で終わりにしたいところですが、あと2作品だけ、書かせていただきたい
まず、「九相圖」(2003年)。
「九相図」というのは一般名詞で、Wikipediaによれば、
九相図(九想図、くそうず)とは、屋外にうち捨てられた死体が朽ちていく経過を九段階にわけて描いた仏教絵画である。
だそうです。
もちろん山口画伯のことですから、普通に「死体が朽ちていく経過」を描かれるはずもなく、期待に応えて、おなじみのアレが朽ちていく経過を描かれています。
そのアイデアはもちろんお見事ですが、落ち着いて考えれば冗談以外の何ものではないアレが朽ちていく経過が、凄惨かつ無常感を持って目に飛び込んでくる迫力ときたら、、、、鳥肌が立つ絵力(えぢから)です
一方、「どこでもドアは行きたい場所を想い描かなくてはどこへも行けない」には、ホントにドキッ会場の係員さんは、私のようにビクッとしている観客を何人も見ているんじゃなかろうかと思います何がどうで私がビクッとしたのかはネタバレになりますので、ここでは書きませんぜひぜひ、実際に作品を体感していただきたいと思います。
そうそう、この展覧会の図録はまだ制作中で、
本展カタログは青幻舎より2015年4月下旬より全国書店で発売4月19日より当館で先行販売予定
だそうです。
発売されるまではこちらで我慢しましょう。
山口晃 大画面作品集 | |
山口 晃 | |
青幻舎 |
いやはや、楽しかった 「山口晃展 前に下がる 下を仰ぐ」、超お薦めです
最後にとっておきのこの1枚
つづき:2015/03/10 久しぶりの水戸(その3:偕楽園まで編)
ある意味、つづきのようなもの:2015/03/23 「東宝スタジオ展」で、あ~~~!!!
これもまたつづきのようなもの:2015/04/27 判ったような判らないような…
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