ダルデンヌ兄弟『サンドラの週末』はいい映画だと思いましたが、見終わって、ちょっとおかしいと思うところがいくつかありました。
太陽光パネルの会社に勤めるサンドラはウツ病で休職していたが、職場に戻ろうとする。
ところが社長は、サンドラをクビにする代わりにボーナスをもらうか、サンドラを復職させてボーナスをあきらめるか、16人の同僚に投票で選ばせる。
そういう話ですが、そんな酷なことを社員に決めさせる会社があるのかとまず思います。
そのボーナスがいくらかというと、1000ユーロ。
サンドラは食料品店でペットボトルの水を買いますが、これが80セント。
1ユーロ140円とすると、約112円です。
ある同僚は、大学生の娘の下宿代が600ユーロ(だったと思う)かかると話しています。
日本の物価から考えて、1ユーロが140円は妥当なところでしょう。
となると、ボーナスは14万円。
父子で勤めている人も、新入りも1000ユーロで、ここもおかしい。
サンドラは夫や子供と一戸建てに住んでいるし(ローンがあるにしても)、同僚たちもそれなりの生活をしている中流層のようです。
日本の月給が30万円前後だとすると、1000ユーロのボーナスは月給の半分以下です。
ヨーロッパのボーナスはそんなものなのでしょうか。
驚くことに、新入りの臨時雇用(アフリカからの移民?)は月給が150ユーロ(2万2千円)だと言ってました。
いくらなんでも月に2万円ちょっとの給料なんてあり得ないです(字幕の間違いでしょうか)。
それに、サンドラは病気が完治したと言ってますが、薬を何錠も飲むサンドラはとても治ったようには見えません。
サンドラの会社があるのはベルギーかフランスかわかりませんが、ネットで調べると、フランスの若年失業率は2015年で24.8%から23.7%。
ベルギーでは2014年の若年失業率は22.5%、2015年は19.9%。
スペインはもっとすごくて、2012年の若年失業率は60%、現在が49.3%と、大学は出たけれどという状態です。
非正規雇用の割合も多く、フランスでの2011年の若者の非正規雇用の割合は53.5%。
サンドラは同僚の家を訪ねて、職場復帰に賛成してもらうよう説得します。
それは『舞踏会の手帳』のように、訪れた人の生活状況を明らかにすることになります。
労働者の環境が非常に厳しい状況を描くことがダルデンヌ兄弟のねらいかもしれません。
そうはいっても、細部のつじつまが合わないのはちょっとなあ、というのが感想でした。
右の人が月給150ユーロ