三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、インチキ宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり、そしてそのことを日記にまとめてみたり。

浜井浩一、芹沢一也『犯罪不安社会』4

2007年11月10日 | 厳罰化

 4章「厳罰化がつくり出した刑務所の現実」 浜井浩一

厳罰化を行われている結果、刑務所は受刑者で一杯となり、新しく施設を作らなければ追いつかない状況である。
しかしながら刑務所は、凶悪犯ではなく、精神障害者や知的障害者、高齢者や仕事を失った外国人など、社会的弱者で溢れかえっているそうだ。
社会から排除された人、福祉行政では救済できない人たちが刑務所に入らざるを得ないというのが現状なのである。

「アメリカの研究でも福祉予算の比率が相対的に低く、弱者を切り捨てる不寛容な社会(州)ほど、刑務所人口比が高いという研究がある」
「所得格差が少なく、社会保障費の割合が高く、人や社会に信頼感を持っている国ほど、刑務所人口が少ない」
「相互に信頼がない社会ほど、厳罰化を指向し、刑務所を社会的弱者であふれさせるのである」
「自己責任を謳い、他人に厳しい排他的な社会において、社会的弱者が犯罪者として刑務所に送り込まれるのは自然な現象かもしれない」

外国人による犯罪が増えている、しかも凶悪事件が多いと思われている。
しかし、「本当に凶悪な犯罪を犯した者は、外国人受刑者の一部に過ぎない」そうで、たとえば中国人受刑者。
中国人の犯罪者は「日本の刑罰は軽い。日本の刑務所は三食付いて仕事も与えられて、賃金までもらえる」と考えているという論調を見うける。
ところが、浜井氏が実際に多くの中国人受刑者と面接してみると、このような主張は事実とかけはなれていた。
「彼らの多くは、福建省等から就労目的で不法入国してきた者たちであり、日本語はほとんどできない。面接に行くと、異国の地の刑務所で、訳がわからず困惑し、不安に怯えている者がほとんどであった。
加えて、彼らの多くは、不法入国を斡旋する中国人犯罪組織「蛇頭」に200万円以上の借金をして日本に不法入国している。刑務所で得られる作業賞与金は、月平均4000円程度であることを考えると、とても割に合うものではない。
また、彼ら不法入国者は、いつでも国外逃亡できるように考えている人も多いが、蛇頭は、入国の面倒しか見てくれない。中国系の不法在留者が帰国するためには入国管理局に出頭するしかない」

このあたりもマスコミ報道のウソということになる。
「世論では治安悪化は凶悪かつ狡猾な犯罪者によってもたらされたかのように喧伝されている」が、実際はそうではないわけである。

もっとも、治安の最前線にいる刑務官ですら、「最近いやな事件が多いですね。日本はどうにかなってるんですかね」ともらすように、「メディアの影響を強く受け、目の前で起きている事態との落差に気がつかない」のだから、我々一般人が犯罪が増えていると誤解するのも無理からぬところがある。

犯罪被害者やメディア、世論の声が「検察官や裁判官にとっても無視できない存在となり、それが厳罰化への原動力ともなっている」のだが、そのことによって刑務所が過剰収容となり、刑務所の新設せざるを得なくなっている。
「そこには国民の税金が大量に投入されることになる」
厳罰化は税金の節約にならないというわけである。

2007年版『犯罪白書』によると、
「48年から06年の間に刑が確定した100万人を無作為抽出して調査。このうち再犯者は29%だった」
つまり、犯罪を犯し、有罪となった人のうち、約7割は再び罪を犯していないということである。
外国に比べると、日本の再犯率の低さは特筆すべきだと思う。
残る約30%は犯罪を繰り返し、犯罪全体の58%が再犯者によるものである。
しかし、「特に窃盗は8割が無職で就業支援の必要性がある」し、「高齢者は就業が難しく、生活苦や居場所のなさから罪を重ねる場合が多い」わけで、再犯者が矯正不可能な人間だというわけではない。
それと意外なのが、強姦で捕まった人の再犯率は32%だが、再び強姦して捕まったのは3%ということ。
性犯罪をくり返す人は考えられているよりも少ないということになる。
となると、性犯罪者の住所・氏名を公開しろという意見はかえってマイナスになると思われる。

11月10日の毎日新聞の社説から。
「再犯対策の一環として有期刑の上限が引き上げられた後、報復感情を背景にした厳罰化が加速しているため、犯罪者を刑務所に隔離することが重視され、出所後の社会復帰を難しくしていることにも注意したい」
「有期刑についても仮釈放の条件が厳しくなったため、全体的に収容期間が延びている。家族らと疎遠になり、社会復帰がうまくいかずに刑務所に逆戻りする者も少なくない。社会のやっかい者は隔離すればよい、とする考え方には危うさがあり、厳罰を求める風潮を再犯防止など社会防衛的な視点から検証する必要もありそうだ」

厳罰化するよりも、犯罪者をいかに社会復帰させるか、社会が受け入れていくかを考えていくほうが大切だと思う。

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11 コメント

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1/2の神話♪ (万次)
2008-06-28 00:01:34
 浜井さんの講演、また聞きました。やっぱり立て板に水のごとくお話されてすごい。しかも統計をつかった説得力を持っておられる。

 例のスケアード・ストレイト・プログラムのお話もありました。つまり非行少年を刑務所に連れてきて、こんな調子で世の中なめとったらしまいにお前もこうなるで!!と脅す。つまり大人の囚人を反面教師とせよということですね。

 これって釜ヶ崎で今もやる親を見たことがあります。子ども(息子)を連れてきて「勉強せーへんかったらお前もこうなるんや!」と。うーん、あんたみたいな親に育てられたら、ずる賢く生きていく知恵は身につくかもねって思いました(笑)。

 浜井さんは、恐怖を与えるよりも新しい生き方のためのモデルを学ぶ。その方が効果的です、と。まあ、認知行動療法のことをチラリとふれられました。これもずっと書いてきていることで。暴力的な手段を使うより、自分の感情の読み書きに習熟して、別の表現にかえるというのがアミティの原理でした。

 で、次は藤岡淳子さんにその認知行動療法のお話を聞きたいですね。

 >それと意外なのが、強姦で捕まった人の再犯率は32%だが、再び強姦して捕まったのは3%ということ。

 これは訴え出る人が少ないのかも知れませんね。藤岡さんは性犯罪者のプログラムを研究されているとのこと。で、次のようなサイトを見つけました。

 http://www.biwa.ne.jp/~genbu/myths.html

 性犯罪の被害者に少年や男性がいること。これは林真須美被告の息子さんのことをいぜん例にあげましたが。

 男がすべて暴力的で、女性に対する加害の側はいつでも男だ!!ということを延々主張されるとイヤになってきます。学校に行かなくなった生徒に、その心を開かせじっくり話を聞くこともなく、とにかく「学校へ行け!学校へ行け!行かないお前はおかしい」と延々説教され続けたら、ますます依怙地になって行きたくなくなるんやないかな。

 もういい加減、そういう説教は聞き飽きた。そういう人の認識のゆがみは、自己認識できないのかな。
従因向果、従果向因 (万次)
2008-06-28 15:47:57
 加害者であるものの背景に被害者的側面がある。。。という意見があります。まあ、ちょっと勘違いすると、被害者であるものはすべて加害者になるという風に思われてしまいますが。

 んでは。民営の刑務所では、認知行動療法やSSTの他に、虐待によって刑を受けた親に対しての「親業」プログラムというものがあるようです。

 それはたとえば森田ゆりさんの「MY TREE]のようなものなのかな?
 http://www.geocities.jp/empowerment9center/index.html

 光市事件の被告の親などを見てると、虐待を行う親を懲役にしろという大谷昭宏氏のような意見より、親業のプログラムを受けてもらう人を増やしたほうがいいのではないかとも思います。
Unknown (円)
2008-06-28 20:24:31
>例のスケアード・ストレイト・プログラムのお話もありました。

あれは説得力がありますね。
効果がないとは信じられない。
浜井先生の講演用資料にこういうことが書かれています。
http://www.p.u-tokyo.ac.jp/kikou/20051001Hamai-ppt.pdf
「スケアード・ストレイトについては、ある教授が学生に対して、どれほど科学的根拠を説明しても、学生にアンケートをとると「効果はあるはず」と答える者が多いという報告もある。信仰や思い込みに基づく政策を覆すのは容易ではない」

受刑者が脅すわけですが、つまりは精神的な体罰なわけですね。
発想としては戸塚ヨットスクールとか、軍隊で鍛えてたたき直せとか、犯罪抑止のためには厳罰化を、というのと同じ。
私にとっても魅力的な考えです。(笑)

>認知行動療法のことをチラリとふれられました。

結局のところ、実際の効果が認められる心理療法は認知療法しかないということでしょうか。

>男がすべて暴力的で、女性に対する加害の側はいつでも男だ!!

これはマチズモが血となり肉となっているということでしょうね。

>加害者であるものの背景に被害者的側面がある。。。という意見があります。

事件そのものだけでなく、どうしてそういう事件が起きたのかという背景、その背景の中には加害者の生育歴もあるわけで、そこを切り捨てたのでは事件が明らかにならないし、再犯防止にもつながらないんですけど。

>虐待を行う親を懲役にしろという大谷昭宏氏のような意見

これも受け狙いの発言でしょう。
虐待を受けた人が犯罪を犯したとして、情状酌量しろとは大谷氏は言いませんからね。
美輪明宏の不可解な世界 (万次)
2008-06-29 01:20:18
 この人いつから、この歌を継承されているんでしょうか。もののけ姫の歌声からは想像できない感じです。

 http://jp.youtube.com/watch?v=b1yyVAAHblE&feature=related

 泉谷しげるとか桑田とかいろんなヴァージョン聞いたけど、これこの人の迫力にはかなわないですね。
 http://ushiho.blogzine.jp/idobata/2007/02/in_7464.html
迫力=人生経験 (円)
2008-06-29 19:57:25
なるほど、ホモというレッテル貼りをしていました。
「治療費を稼ぐために工事現場で働いていた母を持つ」とのことで、重たいですね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%B3%E8%89%AF%E7%BE%8E%E4%B8%80
刑務所に慰問に行っていること自体も何か思い入れがあるんでしょうね。
失対事業と夢窓国師 (万次)
2008-06-30 01:34:31
 http://byoubyou.cocolog-nifty.com/blog/2006/05/21_f0e9.html

 「ヨイトマケの唄」は丸山明宏さんは、子どもの頃の友達のお母さんのことを歌ったそうですが。

 http://www.cw2.jp/2006-05/0005/hino0523cw2/archives/2007/01/post_9.html

 いろんな人がいろんなカタチで偏見を受けて生きてきたんだなあと思う。
小さな政府と言いつつ (円)
2008-06-30 18:26:05
「余録」は公共事業を減らすな、ということでしょうか。
諮問機関が認めなかった淀川水系の4ダムの計画案が発表されていますし、新幹線は整備計画通りに作られつつあるし、公共事業が減っているようには感じられないのですが。
ムダナダム  (万次)
2008-06-30 23:02:28
 無窓国師などがお寺を次々建てたのは、失対事業だった。。。

 蓮如さんは、目だった福祉活動をしていないではないかとのことでしたが。まあ、寺内町をつくるというのは、おおきな雇用創出ですね。そこで暮らす人たちは様々なものが互いに必要になったでしょうし。ほかの寺内町ができるときも材料や人手を調達したでしょうし。

 働けない人に対しては、病院や養老院のような施設が必要ですけど、働ける人に対しては仕事を出すのがいいでしょうね。

 政府(体制)に向かって、怒りをぶちまけたって何も変わりゃあしない。そのときどきの条件化の下で、自分のできるところから、一歩、また一歩と、自分のその理念とのギャップを少しでも埋める努力をしないと。

 言うはやすし、行うはきよし。小さなことからコツコツと。
あとが大変 (円)
2008-07-01 20:08:39
箱物行政という言葉がありますね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AE%B1%E7%89%A9%E8%A1%8C%E6%94%BF
建物を建てることが雇用促進につながることは間違いないでしょうが、作った後の維持をどうするのかとなると、これは昔も大変だったのではないでしょうか。
BLACK BOXを開けて (万次)
2008-07-02 05:39:39
 まあ、失対事業というのはそもそも1949年に始まった引き揚げ者を対象にした失業対策事業、59年からの炭鉱離職者緊急就労対策事業、69年からの産炭地域開発就労事業、71年からの旧産炭地や農山村域を対象にした特定地域開発就労事業の四つの国の事業のこと。

 従事者は重機に頼らず、道路舗装やフェンス建設など単純労働作業をやってました。美輪明宏さんは、そんな失対事業で働くともだちのおかんを唄ったんですね。

 法律はこういうもので。

 http://www.houko.com/00/01/S24/089.HTM

 63年の世論調査はこんなの。

 http://www8.cao.go.jp/survey/s37/S37-07-37-06.html

 で、今おおさかの釜ヶ崎で行われている高齢者特別就労事業とはこんなの。

 http://www1.odn.ne.jp/~cex38710/street%20clean.htm

  ここで一曲、タイマーズで『ロック仁義』

http://jp.youtube.com/watch?v=NT63KJQt1Ys&feature=related 

 ちーさなことから コツコツとぉ。
 一日一歩 三日で 坊主
 散歩しながら 五歩さがる。。。

 ってオイオイ、後退しとるがな。
そうだったなあ (円)
2008-07-02 17:50:23
門徒さんにも失対で働いていた方がおられましたし、私の行った保育園の近くにも多かったです。
失業対策で働いている人たちの仕事ぶりについて「なまけている」と答えている人が23パーセントもいるんですね。
たしかに蔑称でしたね。

>釜ヶ崎で行われている高齢者特別就労事業とはこんなの。

府の事業なら速攻で廃止でしょうが、市は継続するのでしょうか。

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