三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、インチキ宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり、そしてそのことを日記にまとめてみたり。

佐藤喜宣「臨床法医学からみた子ども虐待」

2017年08月18日 | 日記

佐藤喜宣杏林大学医学部名誉教授の「臨床法医学からみた子ども虐待」という講演録を読みました。
佐藤喜宣氏はこの講演を「子ども虐待入門編」と言われてますが、すごく重たいです。

虐待の加害者は誰か。

一番多いのが配偶者で、これはドメスティック・バイオレンス(DV)。
次に親で、これが子ども虐待。

子ども虐待は2015年は10万件を超えた。

警察の認識が変わり、家庭にDVがあれば、その子は虐待を受けていることになった。

DVは子ども虐待の3倍で30万件だが、内閣府も厚生労働省も実数を発表していない。

DVの約8割はアルコール依存症もしくは問題飲酒者、薬物依存者の関与がある。

子ども虐待を受けて育った人が、自分の子どもに対して暴力を振るってしまう確率は65%。

つまり、加害者の3分の2が自分も虐待を受けていたことになる。
子ども虐待を受けて育った人がパートナーに暴力を振るう確率も65%。

高齢者の虐待は、内閣府の統計だと3万5000件ぐらい。
しかし、高齢者は虐待を受けても本当のことを言わない。
なぜかというと、本当のことを言うと家や施設に戻れないから我慢している。

高齢者虐待は、シングルマザーと一人息子の関係が多い。

親子の力関係が逆転して高齢者の虐待が起こる。

つまり、子ども虐待、DV、高齢者虐待は連鎖している。

どこで断ち切るのがよいのかというと、子ども虐待で対応していかなければいけない。
しかし、日本では相談窓口がそれぞれ違う。
アメリカ、カナダは家庭局という一本の柱になっている。

公園の便所で出産し、赤ん坊を放置する事件がある。

出産には、初産婦であれば12時間、経産婦で6時間かかる。
便所には母親の指紋がべたべたついているが、犯人に行き当たらない。
なぜかというと、若い人だから犯罪歴がない。
誰に助けを求めていいかわからない。
産み落とすけれど、赤ん坊を家に連れて帰れない。
なので、置いてきてしまう。

一年間に虐待で死んでいる子どもは50~55件、嬰児殺(分娩中または分娩直後の新生児に対する殺害行為)は20件。

そして、この子を遺して自分が自殺したら不憫だからと、子どもを巻き添えにする無理心中を加えると、子ども虐待で死亡しているケースは年に130~135件。
嬰児殺や無理心中を防ぐには、パニックに陥っている母親に、足りないものがあれば援助し、立ち上がる力があれば支援する。

赤ちゃんポストができてから、嬰児殺は減った。

預けられた子どもは151人で、名乗りを上げた人は80%。

熊本の赤ちゃんポストを始めた医師は熱心なキリスト教徒。

たとえば、北海道北見市から熊本の赤ちゃんポストに電話相談があれば、北見市でボランティア活動をしているキリスト教徒の仲間に寄り添ってもらう。

キリスト教徒は人口の5%だが、仏教界は大きな団体で、日々活動しているのだから、どうして援助と支援ができないのか。


体罰を肯定する人がいるが、大人の手は大きく、子どものほっぺたは小さい。

ビンタをすると、ピンポイントで当たらない。
耳にかかると鼓膜の損傷、眼にかかったら眼球損傷、口にかかると歯牙の損傷する。
後遺症を遺す可能性があるわけで、体罰はしつけではなく暴力なのである。

マンションのベランダから子どもが転落することがある。

マンションのベランダの柵の高さは決まっていて、120cm(小学校入学時の身長)の身長の子どもがよじ登れない高さを想定してある。
3歳や5歳の子どもは足元に何かなければ登れない。
だから、幼児が家にいる場合は、ベランダにものを置かない心配りが必要となるのに、それをしないのはネグレクトということになる。

アメとムチ、すなわち優しい言葉と暴力というDVのサイクルによって、マインドコントロールを受け、自分で自分の行動を決定できないし、思考も自分で決められない。

目の前で自分の子供が虐待され、殺されるのに、とめられない。
今まで検察庁は、主犯格の男の半分、懲役5年なら2年6月を母親に求刑していたが、現在はDVだとはっきりわかった場合は起訴猶予になる。

子ども虐待は、被害を受けている子どもと、加害者の両者のSOSだ。

とめてくれと言っている。
子どもを傷をつけてしまった母親のSOSをちゃんとくみ取らないといけない。
そして、1歳未満の子どもが検診や予防接種に来ない場合は、子どもの追跡をしていくシステムが必要。

2000年の統計によると、少年院に入っている少年の72%以上が虐待を受けていた。

アメリカで、虐待を受けて施設に入っていた子ども900人を追跡調査したら、施設を出た後、半分が盗み、ひったくりの軽犯罪、20%が傷害、殺人の重犯罪を犯している。

元高検検事長の講演を聞いたのですが、その中で、犯罪や虐待は社会の病理を反映しており、加害者を罰するだけでなく、社会、家族、個人のあり方に手をつけていかないといけないということがありました。

人類は共同で食事や子育てをしてきたが、今は家族が崩壊し、孤食になった。
子育てに悩む母親に親友がいればSOSを出せるが、コミュニケーションの質の低下によって、相談をすることができなくなった。
虐待は社会の病理であり、共同体の回復が必要という話でした。

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