三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、インチキ宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり、そしてそのことを日記にまとめてみたり。

浜井浩一、芹沢一也『犯罪不安社会』1

2007年10月31日 | 厳罰化

犯罪が増えていないのに、どうして治安が悪化していると不安に思う人が多いのか。
浜井浩一、芹沢一也『犯罪不安社会』を読むと、犯罪に対する不安がいたずらに高まっている社会の問題点がよくわかる。

 1章「犯罪統計はどのように読むべきか」 浜井浩一

犯罪は増えているのか。
認知件数は増えている。
しかし、2000年から認知件数が増加したのは、桶川ストーカー事件や栃木リンチ殺人事件があり、それまでは民事不介入だった闇金融の取り立て、夫婦間のトラブルなどまで警察が対応するようになった、そして被害者も積極的に届けるようになったことなどが原因である。
2001年の警察庁長官の訓示の中に、
「暴行・傷害等の粗暴犯は、認知、検挙ともに激増しております。国民のこの種事案に対する検挙要望が強くなり、積極的に届出をするようになってきたことが増加の原因として考えられます」
とある。
「警察の統計を正しく理解するためには、それぞれの時期に警察がどのような方針で被害や事件処理に当たっているのか、重大な方針変更はなかったかを知ることが不可欠なのだ」

実態はどうかというと、人口動態統計の「加害に基づく傷害および死亡人員の推移」「年齢別加害に基づく傷害および死亡人員の推移」を見ると、明らかに他殺によって死亡する人の数は減少傾向にある。
また、5歳未満、5歳以上10歳未満のいずれにおいても、他からの加害によって傷害および死亡する子どもの数も減少傾向にある。
他の犯罪も同様。
「客観的統計からは治安悪化はまったく認められない、というのが結論である」

治安が悪化していないにもかかわらず、治安が急激に悪化しているという意識・不安が作り出され、それが維持しされ続けているのはなぜなのか。

通常なら、事件が起きても、時間が経過するにしたがってマスコミの熱は冷めし、マスコミが報道しなくなると、我々のほうも事件のことを忘れてしまうものである。
「マスコミが不安を煽ることである種のパニックは発生するが、パニックに実態がともなっていない場合には、時間経過とともに沈静化し、忘れられるのが常態なのである」
ところが、マスコミ報道によって作られたパニックが、市民運動家(支援者など)、行政・政治家、専門家の参加によって恒久的な社会問題として定着していく。
これを「鉄の四重奏」と言うそうだ。

1,マスコミの影響
「マスコミや警察が、最近の犯罪の凶悪化、それに対応することの困難さ、警察の検挙率の低下等を喧伝することが、人々の安全感を低下させ、犯罪不安を煽ることになる」

「2年前と比較して犯罪が増えたと思いますか?」という質問(2006年実施)
     とても増えた  やや増えた 同じくらい やや減った とても減った
日本全体   49.8%  40.8%    7.8%     1.2%     0.2%
居住地域   3.8%  23.2%      64.2%    5.1%    1.3%

すなわち、多くの人が、「自分の周りでは治安はそれほど悪化していないが、日本のどこかでは治安が悪化している」と感じているわけだ。
つまり、治安の実態は悪化していないのに、体感治安が悪化しているということである。

体感治安が悪化している理由として、犯罪報道が90年代に入って増加傾向にあること、しかも「凶悪」というキーワードが付される記事が増加している、「警察だけでは対応できない」といったメッセージを流し続けるなどのマスコミ報道の影響が大きい。
では、どういう犯罪が凶悪なのかというと、「凶悪犯罪」という言葉は英語にはないそうだ。
「凶悪事件」というのは何となくのイメージに過ぎないように思う。

2,行政の対応
現在、マスコミや政治における治安対策の議論、行政の多くの施策が治安悪化を前提に動いているそうだ。
そして、マスコミに後押しされて行政が対応して制度変更を行うことで、治安悪化という実態なきイメージが固定化してしまった。

3,犯罪被害者支援
犯罪被害者は当事者でありながら忘れられた存在だった。
それが90年代後半から被害者対策がなされるようになり、被害者支援組織が立ち上がった。
「被害者の思いが、人々の心に響き、治安に対する危機意識を喚起する可能性があることは否定できない」

犯罪被害者支援が報道と行政を変えたわけだが、問題なのは、「この治安悪化神話が事実なき「神話」であるにもかかわらず、さまざまな行政の施策に取り込まれ、人々の自由を制限し、コストを増大させる根拠となっていることだ」
しかも、「対策の中身が犯罪を力で封じ込めるための厳罰化、警察力低下を補強するための警察官増員、および防犯カメラの導入といった短絡的なものとなっている」

「厳罰化に犯罪抑止効果のないことは、最先端の犯罪学では常識になりつつある。
厳罰化によって職や家族を失い、ホームレスや犯罪者になる危険性のほうがずっと大きいのである。社会にとって、かえってリスクが高まる結果となるのだ」

では、治安悪化神話を解消するためにはどうすればいいのか。
「マスコミ、市民活動家、行政・政治家、専門家の「鉄の四重奏」の絡みを一つ一つほどいていく必要がある。もちろん犯罪被害者に対する支援は強化した上でである」

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