フィヨルドの変人 ~Odd person in fjord~

ぇいらっしゃ~い!!!

つじあやのさんとケリィ、そしてぬたりとケリィ

2016年10月08日 20時43分40秒 | 下手っぴギター&ウクレレ
かつてはジブリ映画「猫の恩返し」の主題歌、最近ではNHK教育の「ふるカフェ系 ハルさんの休日」の主題歌で知られる、つじあやのさんの主力ウクレレのブランドはKelii(ケリィ)である(もちろんプロだから今では何本も持ってる。でも「風になる」の頃はホントにケリィ一本槍だった)。
別にメーカーとのつながりがあったわけではなく、たまたま手にしたウクレレの音量や音色が、人前でやるのに実に都合が良く、プロになってからずっと使っている、と言うことらしい。実際、つじさんがケリィ手にした当時、日本に正規輸入は行われていなかった。今では本数は多くないまでも輸入は行われている。
ところが、今現在、「つじさんの使ってるのはここのウクレレですよ」と現行のケリィを扱われるのはなんかこう激しい違和感があるな。現行のフェアレディZあたりを「西部警察でガルウィングに改造されて使われてたのはこの車です」と言われる感覚。名前はそうかもしれないけど別物だろ、という感じである。実際別物なんである。

まず現行のケリィ

そしてつじさんのケリィ

デザインが全然違うでしょ。

ハワイのウクレレメーカー、と一口に言っても様々な規模がある。カマカやコアロハ、カニレアのように従業員を雇ってある程度の規模(と言っても町工場レベルだが)でやってるところから、それこそ個人が庭先の物置みたいなところで作っているものまで様々。
今から20年くらい前、ハワイでは若い世代のウクレレに対する盛り上がりがあり、「自分が満足できるウクレレを作りたい」「ブームになってる流れに乗らなきゃ」という作り手側の動きもあった。この流れで興ったブランドの一つが「ケリィ」だった。ケリィは指板を含めて全てコアという木材で作るという思い切った設計(普通指板は別の材)で、ハワイで好評を博した。つじさんのケリィはまさにこの頃のモデルである。
そしてハワイからやや遅れて、日本にもウクレレブームがやってくる。それなりに著名なギタリスト(忌野清志郎さんとかサザンの関口さんとか)がウクレレの独特の味や深さに触れウクレレを手にするようになり、それに影響される形で、「第2次ウクレレブーム」と呼ばれてウクレレの販売が盛り返してきたわけである。
だが、日本国内のウクレレ生産は完全に下火。日本の第1次ウクレレブームはその更に数十年前の事で、ブームが去ると工房は次々に閉鎖。第2次ブームの頃に国内で組織的にウクレレ生産を行っていたのは群馬の三ツ葉楽器(ブランド名はFamous)くらいしかなく、ハワイからの輸入も全体的に下火。売るウクレレの種類が豊富では無かったのである。
この状況をそのまま放置するほどジャパニーズビジネスマンは甘くない。国内のいくつかの楽器インポーターがハワイに飛んだ。輸入の交渉である。そしてケリィというブランドがとあるインポーター(国内でも有数の会社)の目に止まり、日本への組織的輸出が始まった。
ケリィは決して大きな工房ではない。基本個人経営とも言える。そこに日本でも名の知れたインポーターが組織的な購入の話を打診してきたわけである。そしてそこに示された金額も、組織としての購入にふさわしいだけの立派な金額であった。そしてこれが運命を変えた。
組織的な輸入、これはある程度の金額が提示される事と引き替えに、それなりのまとまった数の納品も求められる。のんびりと個人が作って、できた時だけ輸出する、なんていう形は通らない。これ故かケリィはモデルチェンジをしている。オールコアのボディも変更され、シンプルだった見た目も変更されている。端的に言えば、これまでのケリィとはまるで別物になってしまったわけである。
ケリィの職人の話ではないのだが、一つの実話を披露すれば、そうして個人でやっていて、日本に輸出を始めた頃に、自分で加工したウクレレのネック材と、中国で加工させて取り寄せた物を並べて、「全く変わらない」と言い、ネック材の加工をやめてしまった職人もいたらしい。必要以上の見慣れぬ現金というのは、やはり人をどこかおかしくするらしい。
そうは言っても、ウクレレブームであった日本においては、ここまでならまだ通用する部分はあっただろう。だが、最大の躓きが他にあった。

製品歩留まりの悪さである。

無論、ハワイのウクレレである。チューニングはまともに合わせられなくて当たり前で、バンドでやるなら他の楽器をウクレレに合わせろよ、くらいの緩い楽器ではあり、歩留まりと言っても完全にピッチががっちり合ったウクレレなんてそもそも望めない。だが、クラックや歪み等々の物理的な不具合はいかんともしがたく、しかもこの手の不具合抱えた個体がやたら多かったらしい。
このため、日本で有数のインポーターが扱っているにもかかわらず、あんまり日本で見かけないという、おかしな状況になってしまったんである。正規輸入は早々に打ち切られ、一時期はケリィというブランド自体が消滅してしまった。(続く)
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