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書評③ 各国、世界機関の金融改革を巡って   文科系

2016年10月19日 | 書評・番組・映画・演劇・美術展・講演など
 ドナルド・ドーア著「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」(中公新書2012年6月第5刷発行)の終章である第3章は、計4節に分かれている。「国際協調」、「適切な報酬制度」、「現状維持に終わる金融改革」、「金融化は不可逆的か」。これを、順不同で要約していきたい。サブプライムバブルが弾けた後のG20やそのサミットでどんな改革論議がなされ、対立があって、ほぼ元の木阿弥に戻ってしまったか。リーマン以降、ロンドンG20から、10年のソウルG20とそのサミットまで、世界の金融規制論議経過は省いて、書かれている改革の内容自身を観ていきたい。

 ロンドン大学政治経済学院の「金融制度の将来」には4つの目的がこう書かれているとあった。①実体経済を攪乱しないように。②破綻金融の税金救済の問題。③そんな金融機関の報酬が高すぎる問題。④高報酬により人材が集まりすぎる問題。
 また、2010年11月のG20ソウル会議でもっと具体的に4つの討論がなされ、抽象的合意だけが成されたと言う。①銀行規制。②金融派生商品契約を市場登録すること。③格付け会社の公共性。④新技術、商品の社会的有用性。
 以上から何が問題になってきたかをお分かりいただけたと思うから、G20ソウル会議の4項目の順に討論内容などを観ていきたい。

 ①の銀行規制に、最も激しい抵抗があったと語られる。また、現に力を持っているこの抵抗者たちは規制提案に対して「否」と言っていれば良いだけだから、楽な立場だとも。国家の「大きすぎて潰せない」とか「外貨を稼いでくれる」、よって「パナマもケイマンも見逃してくれるだろう」とかの態度を見越しているから、その力がまた絶大なのだとも。この期に及んでもなお、「規制のない自由競争こそ合理的である」という理論を、従来同様に根拠を示さずに押し通していると語られてあった。

 ②の「金融派生商品登録」問題についてもまた、難航している。債権の持ち主以外もその債権に保険を掛けられるようになっている証券化の登録とか、それが特に為替が絡んでくると、世界の大銀行などがこぞって反対すると述べてあった。ここでも英米などの大国国家が金融に関わる国際競争力強化を望むから、規制を拒むのである。つまり、国家が「外国の国家、法人などからどんどん金を奪い取ってきて欲しい」と振る舞っているから換えられないと、酷く暴力的な世界なのである。

 ③格付け会社の公準化がまた至難だ。その困難の元はこのようなものと語られる。アメリカ1国の格付け3私企業ランクに過ぎないものが、世界諸国家の経済・財政法制などの中に組み込まれているという問題だ。破綻直前までリーマンをAAAに格付けていたなどという言わばインチキの実績が多い私企業に過ぎないのに。ここで作者は「ワイヤード・オン」という英語を使っている。世界諸国家法制にムーディーズとかスタンダードとかの格付けランクがワイアーで縛り付けられているという意味である。この点について、こんな大ニュースが同書中に紹介されてあったが、日本人には大変興味深いものだろう。
『大企業の社債、ギリシャの国債など、格下げされると「崖から落ちる」ほどの効果がありうるのだ。いつかトヨタが、人員整理をせず、利益見込みを下方修正した時、当時の奥田碩会長は、格付けを下げたムーディーズに対してひどく怒ったことは理解できる』(P189)
 関連してここで、つい昨日の新聞に載っていたことを僕がご紹介したいのだが、こんな記事があった。先ず見出しは、『国際秩序の多極化強調BRICS首脳「ゴア宣言」』。その「ポイント」解説にこんな文章が紹介されていた。
『独自のBRICS格付け機関を設けることを検討する』
 15日からブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ五カ国の会議がインドのゴアで開かれていて、そこでの出来事なのである。ついでに、日本でこういう記事はまず大きくは見えないようになっているということも付け加えておきたい。なお、この会議宣言4つのポイントすべてにおいて「国連」が強調されていたということも何か象徴的なことと僕には思われた。国連を利用はするが無視することも多いアメリカと、国連を強調するBRICSと。
 とこのように、国連や、G7などではなくG20やにおいてアメリカ以外の発言力が強くなっていかなければ、金融規制は進まないということなのである。

 最後に、「④新技術、商品の社会的有用性」について。金融商品、新技術の世界展開を巡る正当性の議論なのである。「イノベーションとして、人類の進歩なのである」と推進派が強調するが、国家の命運を左右する為替(関連金融派生商品)だけでも1日4兆ドル(2010年)などという途方もない取引のほとんどが、世界的(投資)銀行同士のギャンブル場に供されているというような現状が、どうして「進歩」と言えるのか。これが著者の抑えた立場である。逆に、この現状を正当化するこういう論議も紹介されてあった。
『「金作り=悪、物作り=善」というような考え方が、そもそも誤っているのだ』
 金融が物作りを「攪乱」したり、現代世界人類に必要な新たな物作りへの長期的大々投資を事実上妨げているとするならば、それは悪だろう。関連して、世界的大銀行は、中小国家の資金まで奪っていくという「罪」を史上数々犯してきたのである。そして、世界の主人公である普通の人人の生活、職業というものは、物(作り)とともにしか存在しない。

 この本の紹介はこれで終わります。ただし、この著作中に集められた膨大な数値などは今後の討論で折に触れて適宜ご紹介していくつもりです。「金融が乗っ取る世界経済 21世紀の憂鬱」という書名をどうかご記憶下さい。

(終わり)
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書評終了に当たって (文科系)
2016-10-20 19:38:24
 この著作、書評の終了に当たって、一言。

 現在91歳になるイギリス人の老政治経済学者が5年ほど前に世に問うた渾身のこの著作は、日本との長い付き合いのある学者生活を賭けたものと読んだ。この著作執筆の最初は、東欧崩壊の後にこんな本を書こうと思って、長い日本との付き合いを生かしていろいろ書きためていたことにあった。
「東欧の諸君。資本主義でも2種類あるよ。英米流金融資本主義と日独のような物作り重視資本主義と」

 ところが、この内容の本がある人に先を越されてしまった。そこで、リーマンで金融資本主義が大破綻を来した後にその最新資料をも入れて、日本人へのこんな警告の書にしようとしたということだ。
「完全に金融資本主義になってしまったら、日本の良さは何もなくなるよ」
 この書の最大眼目は、そういう警告なのである。つまりこうしてこの著作には、1990年以降世界経済変化を巡る2冊分の中身が詰まっているわけだ。

 この作者は、こういう方である。20世紀政治経済学の巨人ケインズの流れを組んだ上で、20代で日本に留学。以降丸山真男や加藤周一らとの知遇も経て色々学びつつ、こんな日本語の本を出せるようになったのである。
 金融マクロ経済学のこれほど豊富な統計数値も、こんな豊富な学者生活から、しかも長く構想してきたその産物なのである。

 最後に、重ねて一言。金融資本主義は常に密かに行動するもの。他人を出し抜くべく密かに成功してこそ儲けも大きくなるからである。また、生き馬の目を抜くようなその行動は恥ずかしいものであったりして、事後もなかなか明らかにはされない。ケイマンやパナマの脱税行為が、明らかにならないのと同じ理屈である。そういう彼らの資料を集めることは困難を極めると推察できるから、20年に近い最新資料のこの目的意識的収集努力には、心から敬意を表したいと思った次第だ。 
金融化の原因 (文科系)
2016-10-24 12:30:38
 改めて、標記のことを一言。
 世界で無数に起こっている通貨危機、通貨戦争。その内の特に大きいものは、世界的バブル・その破裂という形を取る。なぜなのか。僕はまー、相当「信用」があったネズミ講が破綻するようなものだと観ているが、著者が指摘する原因はこうだ。

①「大き過ぎて潰せない銀行」には、ほぼ必ず国家救済があった。それが、銀行商売に最も大事な「信用」になって、以降も金が集まり、金融商品への「信用」も生まれる。

②この「信用」を更に高めるものとして、以下の装置がある。
A CDSという金融商品保険があって、これに入っていると「信用」が出て、AAA格付けが取りやすい。ここが潰れると連鎖倒産が激しくなるので、政府が真っ先に助けるからだ。アメリカのAIG倒産をリーマンショックの時に政府が1兆ドル近く出して真っ先きに助けたように。
B アメリカ私企業である三つの格付け会社が、これらの銀行と連んで世界金融を動かし、得体の知れない「信用」を高めている。この「得体が知れない」というのは、こういう意味だ。リーマンバブル弾け直前まで、リーマンなどのように潰れた会社にもAAAが付いていたし、過去のエンロンなども同じである。

③こうして高まった「信用」は、巨大銀行に世界有数の人材を集める。こういう人材が、「売れれば儲けが多い分、リスクが巨大な金融商品」をどんどん発明して、巨大銀行の「信用」でもって世界に売り出していく。よって、サブプライムバブルという「科学的」ネズミ講ができ、やがて破裂していくことになるわけである。

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