九条バトル !! (憲法問題のみならず、人間的なテーマならなんでも大歓迎!!)

憲法論議はいよいよ本番に。自由な掲示板です。憲法問題以外でも、人間的な話題なら何でも大歓迎。是非ひと言 !!!

ギリシャ危機、ゴールドマンによる活用法  文科系

2016年11月19日 02時21分11秒 | 国際政治・経済・社会問題(国連を含む)
 この拙稿は「ギリシャ財政危機と金融 2016年10月14日」の姉妹編に当たります。岩波新書、進藤榮一著「アジア力の世紀」からの引用です。今の国際金融の暗躍、政治との結びつき、その世界大諸影響の凄まじいまでの大きさを示しています。同書の202~203ページから引用します。

『 金融危機が海を越えて伝播する構造は、〇七年夏にフランス最大手銀行BNPパリバのローン凍結ショックが、米国サブプライム・ローン危機の発端となつて、〇八年九月のリーマン・ショックにつながったことにも象徴される。
 BNPパリバは、傘下のファンドを通じて、米国金融機関の発行する低所得者向けサブプライム・ローンを大量に購入し、そのローンが支払不能に陥り、解約を凍結した。そのニュースが金融市場を駆け巡って市場は混乱し、〇八年九月一五日、全米四位の投資銀行リーマンプラザーズ社が破綻、金融危機が勃発した。のち、全米一位のゴールドマンサックス社と二位のモルガンスタンレー社は、銀行持ち株会社に業務転換し、五大投資銀行すべてが姿を消すことになる。
 その間、欧州の金融機関が、米国製の証券化商品を大量に買い込んでいることが明らかになり、欧州金融機関の信認が揺らぎ始めたのだった。そして〇九年一〇月、ギリシャ政府の債務残高隠しの発覚をきっかけに、ユーロの信認が一挙に失われて、危機は欧州の大手金融機関に及んだ。
 EUは〇三年、ユーロ加盟の条件として、財政赤字がGDP比三%以内、政府債務残高がGDP比六〇%以内にあることを定めていた。ギリシャは、ユーロ圏に加盟するために、紛飾決算まがいの手法を使って、財政赤字も累積債務も実態より低く報告していたことが判明した。その報告書に、ゴールドマンサックス社が関与していた。かつて八七年夏に始まるアジア通貨危機の陰で、米国のヘッジファンドが暗躍していたように、ギリシャ危機の背後に、米国のファンドと財務省が暗躍していると噂された。米国が金融危機回避のため、欧州に仕掛けた危機だとも、時に位置付けられる。
(中略)  
 米国発金融危機が、リーマン・ショックを経て欧州債務危機へと転形し拡大したのである。危機はギリシャからアイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアへ波及した。メディアはそれら諸国の頭文字を取って、豚を連想させる「PIIGS(ビッグス)」と呼び、EUとユーロの脆弱さを侮蔑気味に指摘して、EUの分裂・解体を予測した。』

 さて、以下の言及は文中のこの部分に関わります。
『ギリシャは、ユーロ圏に加盟するために、紛飾決算まがいの手法を使って、財政赤字も累積債務も実態より低く報告していたことが判明した。その報告書に、ゴールドマンサックス社が関与していた。・・・・・ギリシャ危機の背後に、米国のファンドと財務省が暗躍していると噂された。米国が金融危機回避のため、欧州に仕掛けた危機だとも、時に位置付けられる』
 米国の「金融危機回避」のために欧州に仕掛けたギリシャの「粉飾決算まがいの手法」とは何か。デリバティブ、金融派生商品はまさにこの粉飾決算にこそ使いうる物。そのことを示した拙稿が当ブログに存在します。
 〇七年一月二一日拙稿「日本財界が1週間に七五〇〇万ドルをパクられた話」がそれ。元モルガン・スタンレーのトレーダー、フランク・パートノイが実体験を書いた「フィアスコ」という本の内容紹介です。AAAの格付けが付いたデリバティブを売って時価計上で決算書に載せると、何割高かの粉飾決算ができることになっているという、そのことが書いてある興味深い本です。
「シンガポール発、英国ベアリングズ社のデリバティブ大穴によって損失を被ったのが日本大企業だと分かったときの喜び! 四月決算を控えて、デリバティブがさー無数に売れるぞ! 我々は今まで、死に物狂いに金が欲しい人々をこそ、最上の顧客にしてきた!」
 世が不景気で荒れるほど、投資銀行の出番という訳なんです。

 それにしても、このギリシャ危機をユーロ瓦解に結びつけようとして、これでさらにドイツマルクの空売りにまで折を見ては度々結びつけていくというゴールドマン、アメリカ財務省の大仕掛け! その凄まじさには身震いが出ます。そして著者はこの一〇〇年に1度のリーマンショックが、「一九二九年世界大恐慌から世界大戦へ」とならなかった今回の事情までを、こう説明している。「大欧州」と「新興国市場」がショックアブソーバーとして働いたからだ、と。世界の有効需要創出こそ争いを協調に転化する最大の鍵とは、正にケインズ経済学の焦点。現在世界のマクロ経済問題解決方向を深く考える最大のヒントがここにあると読むのは、この著者や僕だけではないはずです。

 なおまた、こういう米国自らが作ったという事情もあるのに、いくつかの南欧諸国などを日米などが「PIIGS(ビッグス)」と呼ぶのを聞くと、何とも複雑な、嫌な気分になります。自らが貶めた人々を「ブタ」と嘲笑っている、この感覚! ここにこそ、世界の暗い現実の全てが存在しているようで・・・。

コメント (5)    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« サウジ戦 ... | トップ | ハリルジャパン(75) 強... »
最新の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
日経ビジネス (文科系)
2016-11-19 02:18:52
 最近いろんな経済誌を人生で初めて読んできたが、今週は日経ビジネスというのを読んでみた。ちょっと前に読んだWedgeとか東洋経済とかと比較した感想を書いてみよう。

 日経ビジネス九月二一日号のテーマが正に時宜を得た「世界j経済の新リスク」。
 金があるのだろうが、凄まじい「世界のオールスター登場」ぶりだ。巻頭がイアン・ブレマーで、以下、スティグリッツ、サマーズと来る。もっとも全体が四章に別れていて、その最初が「世界の知の巨人が読む英離脱後の世界」だから、これはマー仕方ないか。最後四章目の題名に特に目が行くが、それは「リーマンよりも怖い現実 世界を覆う『低成長』の雲」。

 さてところで、この経済誌には根本的欠陥があると分る。英米流しか書いてないのだ。それも、マクロ経済学は完全に欠如している。だからこそ、「リーマンの意味」も、「リーマンよりも怖い明日」も、さっぱり無内容、解説さえ無しだ。代わりにあるのは 「株価への一喜一憂だけ」とそんな金融中心主義の感じがとても強い印象。それも、「日本の持ち上げ」に大腐心している。例えばこんな記事で。
「欧州、中国、韓国にもデフレの波、世界が日本に追いついた」
「英金融サービス機構元長官 日本は今こそヘリコプターマネーを」
 
 さてさて、こんな内容のどこを読んでも、「世界の有効需要創出」などは出て来ないし、これが読者層である日本大企業経営者たちの視点だとすると、日本の未来は当分暗いなと感じたものだ。

 かくして先進大国がどこも、国家関連財政総動員で自国株価を買い支える? 何という異常な、変な世界、国家なのだろう! 経済界の要人が皆、酔っぱらっているようにしか見えないのである。それとも僕が酔っ払っているのか。
「世を挙げて皆濁り、吾独り醒めたり」なのか、その逆なのか。これがこの本への最大の感想。
花見酒の経済という (らくせき)
2016-11-19 10:16:38
言葉を思い出しました。
四季折々の世界の花見ですね。
造花ですが。


Unknown (Unknown)
2016-11-21 17:23:29
ギリシャを毟っているのは、どう見てもドイツなんだけどね。
不動産、インフラ系に注目。
ギリシャ人は、その事を知っている。
文ちゃんの「取り敢えず、アメリカが悪い!」は、色々ズレているよ。
誤り! (文科系)
2016-11-22 20:09:04
 『文ちゃんの「取り敢えず、アメリカが悪い!」は、色々ズレているよ』
 これは、二重の誤り。

①まず「文ちゃんの・・・」が誤り。僕は上を、進藤榮一著「アジア力の世紀」の引用で論じている。もし誤りというのなら、まず進藤の誤りと言うべきだろう。

②なお、14日には同じギリシャ問題で、ドナルド・ドーア本の引用から以下のように始めた。上のエントリーも、「姉妹編」としてこれを受けて書いていると記してある。
『企業ばかりではない。国家もそうである。ギリシャの金融危機が深刻化したのはギリシャ国債の空売りに加えて、新契約の裸のCDSの掛け金がどんどん上がってギリシャ政府が発行する新国債の利子率が急騰したためである。ドイツなどはその裸のCDSの取引を禁じているのだが、そういう取引を歓迎する金融センターが世界中にたくさん残っている』

③これらが誤りというのなら、今は君がこの本二つを批判すべきだろう。特に、後者②への批判では、この点についてこそね。ドイツには「裸のCDS」が無いのだから、ギリシャにこれを売りつけたのが誰かも含めてね。

④ギリシャの不動産、インフラにドイツが多少絡んでいることは知っている。が、これでもって①②を打ち消すのは誤りである。と言うよりも、規模が全然違うから、デマに近いことになるはずだ。関連して、同じドイツと言ってもドイツ国家とドイツの銀行とは厳然と区別すべきで、犯罪性としては月とスッポンくらいだろう。こういう国家の絡みという点では、ドイツ国家を僕はまだ信用し、アメリカ国家はより信用していない。ドーアははっきりとアメリカ国家絡みと書き、進藤もこれを臭わせている。

⑤気楽に流したにしても、なぜこんなデマを流すのか。また、このギリシャという弱みも活用しながら現在ドイツ銀行の空売りが進んでいるはずだが、これは誰がやっていると君は考えているのか?!
トランプ! (文科系)
2016-11-22 20:21:03
 アメリカは今までの国際約束をかなぐり捨て、保護主義へと開き直るためにトランプを選んだと、僕は観ている。それだけぎりぎりの逼迫した国になったと、観ている。早速のTPP(でさえ)破棄が、その証拠と言える。
 過去に成した国の約束には縛られませんとなったら、これはもう「ならず者国家」の宣言である。こんな宣言国に付いて行く馬鹿は、自らがこれ以上の「ならず者国家」になるしかないはずだ。日本はそれで良いのか!

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。