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随筆紹介 「初笑い」  文科系

2017年01月25日 | 小説・随筆・詩歌など
 初笑い   H・Sさんの作品です

一月二日夕方七時過ぎ、年賀状を出そうとポストの前に立った。年賀郵便物の投入口から突然軽快な音楽が鳴り出した。携帯電話の発信音だ。ええー……。ポストの中に携帯電話、何てことだ? 誰かがうっかり年賀状と一緒に投げ込んでしまったのだろう。着信音は、行方不明になった携帯電話を探すため、投げ込んだ当人が呼び出したのだろう。一分ほどで音は止まった。まさか、ポストのなかにあるとは思っていないだろう。その在処に速く気づいて欲しいものだ。私も、この人と同じように、うっかりによる失敗を繰り返しながら一日を送っているのが現状だ。

 こんな時間に年賀状を出しに来たのは、昼間外出時、ポストに入れるため手に持っていた年賀状を下駄箱の中に置き忘れ、帰宅したとき出し忘れたから。集配時間は明日十時三十分だが、今出しておかないとまた忘れる。ハンドバッグに葉書の束を入れポストに向かうために家を出た。家の前で、外出先から帰ってきたお向かいの苗子さんに出会った。苗子さんと私は、お喋り友達。いろんなことに挑戦活動をするので苗子さんは情報通の人だ。
「今年もよろしく、お喋りしようね」、挨拶を交わし、数分立ち話をした。「それじゃあ」と、苗子さんとさよならをして、私はポストに向かった。
年賀状を出し終えた後、携帯電話の着信音に気を取られた私は、ポストの前にしばらく佇んでいた。携帯電話がポストの中にありますよと伝えたくても誰のものかわからないので途方に暮れた。今日一日の私の予定は終了、帰るとするかと自宅の方に足を向けた。

 こちらに向かって急ぎ足で来る女の人がいる。暗がりだからはっきりしないが、苗子さんのようだ。やっぱり、苗子さんだった。
「携帯、ポストに入れちゃったみたい。息子の携帯で探知してるの」、別の携帯電話を見せた。「さっき、着信音が聞こえたよ」と、私。「ああ、やっぱり、ちょっと付き合ってくれない」、苗子さんが私に要望。またポストに戻って来た。苗子さんが発信した。ポストの中から着信音が響いた。携帯電話の在処を苗子さんは確信したが、どうしたら返してもらえるのか? 郵便局は祝日で休み。明日の集配時間前にここに来て張り込み、集配のおじさんから携帯電話を受け取るしか方法はないようだ。
「御神籤は大凶。地下鉄では足踏み外す。朝出し忘れた年賀状を帰りに出しておこうとして、携帯をポストに放り込んでしまう。正月早々いいことなし。先が思いやられる」と、苗子さんがこぼした。「貴女は、うっかり間違いをやっても気づくのが早い。私だったらそうはいかないよ」、返す私。お互いの顔を見た。今日一日の行動が似通っている。なんだかおかしくなって、どちらからともなく笑いが噴出してきた。これが私達の初笑いなのかとお互いに認識。余計おかしくなって大笑いしたが、自分のうっかりの集積がネタになるって、ちょっと寂しい気持ちも混じっていた。 

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