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掌編小説紹介  「誤送」   文科系

2017年05月26日 | 小説・随筆・詩歌など
 掌編小説 「誤送」  K.Yさんの作品です


 日本を襲っている最悪の病気の一つが花粉症である。私も二十年間花粉症で悩まされていた。春先になるとくしゃみ、目のかゆみにとどまらず、皮膚のかゆみ、頭痛を伴う。毎年ひどい症状の繰り返しだ。
 今年二月に、藤田紘一郎教授の話しを偶然耳にした。これに藁をもすがる気持ちでとびついた。回虫と同居すれば、花粉症が消滅するという。何万年もの昔から人間に寄生した回虫がアレルギーを抑制してきたという。数個の回虫との共存を勧める。さっそく行動を開始した。パソコンを開き、インターネットで検索してみる。回虫の卵を2個、一万八千円でネット販売していることを発見。すぐに必要事項を入力し、取り寄せた。
勇気をふるって2個を口に入れた。数日後には花粉症から解放された。藤田教授の説は正しいと確信した。快適な日々。もう頭痛、くしやみもない。
 教授は力説する。かつての日本人には回虫、ぎょう虫が寄生していた。これらに対抗する抗体が花粉症を鎮静化していた。近年、衛生的になり寄生虫での感染症が激減した。対抗する相手がいなくなった抗体が花粉症を攻撃。ところが攻撃するのみで鎮静化する相手がいない。大きくバランスをくずして発症となるという説である。
 現在も寄生虫感染の多い東南アジア、ニホンザルは発症が少ない。だから花粉症対策として回虫がいい。教授は自分の小腸に回虫を飼い、愛着心から〃花子″という名前をつけ可愛がっている。

 四ケ月間の快適な日々。もう花粉症を忘れかけていた。そして五ケ月目に入った。疲れやすい。どうしたのだろう。身体もやせ、肌のつやもなくなっていた。新たな不安が生じた。回虫が小腸で過度に活動しているのだろうか。共同体だから我慢だと言い聞かせた。
 翌月、体重が十二キロも激減した。体力も弱わり、歩くのも大儀だ。回虫の予想を超える繁殖を危惧した。
 いよいよ病院かと迷った。医師からは軽率だとそしられ、看護師からも軽蔑されるだろう。お笑いの対象だ。こうなったら大きな病院がいいと居直り、日赤へかけこんだ。血液検査のみならず、尿検査、そしてMRI・超音波検査と次々に検査があり、疲れ果てた。時刻はすでに夕方だ。医師は回虫かぎょう虫の大量発生と診た。
 夜八時に駆虫剤をコップに三倍飲まされた。小一時間後に白い紐のような、ヌルッとした虫が尻から出たという。とてつもなく長い。引っ張ってもなかなか終わらない。医師と看護師は長い虫に興奮した。
 どんどん引く。十五㍍を超えるサナダムシだった。回虫はせいぜい二、三十センチ、サナダムシは最大二十メートルにもなる。それがお尻から延々と出てきたという。

 インターネット販売での誤送であった。医師から販売先はどこだと迫られ、メールアドレスを教えた。名古屋医師会へ緊急連絡となった。翌日に警察沙汰となった。しかし、メールアドレスの販売先は影も形もなく、警察、保健所から何度も調べられた。特に保健所からは執拗に問いただされた。
 私の花粉症はさらに悪化し頭痛もする。この事件は悪魔が起こしたものと思うようになった。そうだ悪魔が・・・。秋となり私の精神は一段と落ち込み、心療内科を訪れた。


(愛知県東郷町の文章サークル「文友26号」より、著者の許可を得て)
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