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随筆紹介 「近ごろ医療は」   文科系

2011年11月24日 08時17分50秒 | 文芸作品
 今回紹介するのは、S・Hさんの作品。臓器移植、公的医療保険外治療を体験されたまわりの方々のことを書かれています。途方もない金額に驚きます。「命の長さも、途方もない金次第」と、これが実感。かと言って、こんな金額を保険では難しい。いろんな特許問題がからんでいるらしいですが、せめて医療の特許などなくせないのかって、これはずぶの素人である僕の浅はかさ? 人の命は最も大切なものであるだけに、それに最も大きな差がつく時代ということでしょうか。流石超格差世界!


【   近ごろ医療は  S・H

 腎臓移植を待ちつづけて三十年。心臓死の人からの臓器提供を受け移植手術を受けることが出来たと、五十歳の男性が、人工透析時より体調もよく食欲もあると、喜びを語る写真入の新聞記事を読んだ。
 脳死、心臓死の人からの腎臓の提供を待っている臓器移植希望者は一万二千人もいると併記されていた。
 知り合いのIT企業の社長Aさん六十歳が腎臓移植手術を受けた。臓器の提供者は五十歳の妹さん。Aさんと同業のBさんも同じ病院で腎臓移植手術をうけた。Bさんの提供者は奥さんだ。AさんもBさんも実に簡単に移植手術を受けている。
 新聞記事とはあまりにも隔たりがあるので、Aさんに聞いた。
「親族に提供者があり、お金が用意出来る。移植が患者にとって最良の治療法だと、主治医が判断すれば、移植は受けられます。そんなに大変なことではない」と、返答を得た。
 Aさんとは親しいので「いくら掛かったの」と、思いきって聞いた。
「一億五千万円。公的保険はきかないから」と、Aさんは、あっけらかんと答えた。
 金額の大きさに驚いたが、私の知り合いに移植者が二人もいるということは、移植の必要な腎臓病患者さんは多く、自己資金を用意できるお金持ちも大勢いるということだ。
 AさんもBさんも仕事に復帰して元気に働いている。リスクを承知で臓器提供した人達も、片方の腎臓で通常の生活を送り、体の不具合は無いようだ。
 最近、公的医療保険外の治療の話をよく聞くようになった。
 十二年前、食道がんを患った弟の場合は、手術に使用する臓器の縫い糸は、後のことを考え上質のものを使いたいと、申し入れがあった。保険外なのでお金は自己負担になった。抗ガン剤も保険外だった。当時、がんと心臓病は金の掛かる病気の代表だと言われていた。
「どうして、こんなにお金が掛かるのですか」と、主治医に聞いた。
「検査機器、薬、手術材料等、外国が特許を取ったもの全て、長い年月、特許料を払い続けなければなりません。この国で特許をとったものは、公的保険の対象になります」と、教えてくれた。弟は、大手術のあと大動脈に転移を起こした。十年、命を永らえて死んだ。
 友人が子宮癌になった。保険治療にするか、三百万円の陽子線治療を受けるか、選択を迫られた。年齢八十歳。友人は保険内で賄える抗ガン剤とⅩ線の併用治療を選んだ。
 名古屋市医療改革〔がん治療の選択肢ふえる〕と、新聞の大見出し。名古屋西部医療センターに高精度放射線治療機器導入。市民の為の医療に五億六千万かけたと、報道。この治療は健康保険の対象外、治療費は三百万円が目安。民間の先進医療保険に加入してお金は用意して下さいと、示唆。公的保険治療の一つにこの治療が組み込まれるのなら、選択肢が増えたと喜べるが、門前払いされる患者も出る。市民の為の医療改革とは程遠いよ。】
コメント (1)
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