加藤九祚(かとう きゅうぞう)氏は、一九二二年(大正十一年)五月、朝鮮の生まれ。一九五三年上智大学文学部ドイツ文学科卒業。文化人類学者で、専攻は、北・中央アジア文化史。現在、国立民族学博物館名誉教授・創価大学名誉教授・ロシア科学アカデミー名誉歴史学博士。
著書に、「シベリアに憑かれた人々」(岩波新書)、「中央アジア遺跡の旅」(NHKブックス)、「シルクロード文明の旅」(中公文庫)などのほか、訳書も多数。(ウィキペディアほか)
加藤氏は、九十二才を過ぎた現在も、現役の学者として、広大無辺の中央アジアにおいて発掘調査に当たっている。その情熱は驚嘆の一語に尽きる。昨年(二〇一三年)九月には、調査報告を兼ねた「シルクロードの古代都市ーアムダリヤ遺跡の旅」(岩波新書)が出版された。
☆著書紹介(岩波書店より)
中央アジアの大河アムダリヤは、パミール高原の氷河に発し、北西へ流れて、中央アジアの沙漠をカラクムとキジルクムに二分してアラル海に注いでいます。まさにシルクロード文明の中心となったさまざまな都市を流域にもっている河。本書は、九十歳を超えてなお発掘現場に足を運ぶ著者ならではの生きたシルクロードの歴史の紹介です。
☆著者メッセージ
ここでとりあげた古代遺跡はいずれも世紀の大発見であり、極めて興味深く、その記述は自分の能力にあまると思いながらも、あえて紹介を試みました。
私はただいまウズベキスタン南部、アムダリヤの右支流スルハンダリヤの上流部にある紀元前後の大遺跡カラテグバパを発掘中です。多くの建物からなる約五千平方メートルの遺跡全体が、古代ギリシア人によって中央アジアにもたらされた工法(砂利と粘土を混ぜた土台、アイハヌムと同じ)の基礎の上にあり、私どもとしては目ぼしい成果を期待しています。
加藤氏は、六十才を過ぎてから、本格的に考古学の道に踏み込んだという。もちろんそこに至る学究の積み重ねがあったからこその展開なのだが、身を捨てるような研究心と努力にはひたすら頭が下がる。人の行いに不可能なんてない、という生き様に驚嘆を禁じ得ない。
私は、この本を手にして、久々に若き日に目指した中央アジアの「さまよえるロプノール」に関する記憶を取り戻し、思わず本の表紙を撫で回した。(2014.9.18)