黒猫 とのべい の冒険

身近な出来事や感じたことを登載してみました。

伝統的な仕事人

2017年02月09日 11時27分33秒 | ファンタジー

 ラジオを聴くともなく聴いていたら、「やってみたいアルバイトは何?」というテーマでリスナーの声を紹介していた。その中に、マック(マクドナルド)の店員をやったことがある、今やっているという若い女性からの回答が複数あった。彼女たちによれば、マックはあこがれ、夢の仕事だという。事実、アルバイトとはいえ、彼らはクルーと呼ばれ、充実したマニュアルにのっとって、実にスムーズに作業ができる快適な職場なのだ。この会社には、バイトをやりながら試験を受けて正規の社員になった方々もいるようだ。いわゆる自己実現できる働きがいのある職場なのだろう。
 中沢新一氏によれば、レヴィ=ストロースは労働についてこう言っているそうだ。
 欧米では、「労働」という言葉は聖書に記される「苦役」を意味する。エデンの園で、アダムとイブは労働する必要のない恵まれた状態にいたのだが、いろいろな事情で、罪を犯し出て行かざるを得なくなった。なので、ヒトがこの世界で働くことは罪の償い、つまり苦役でしかない。
 ストロース自ら、日本へ調査に来たことがある。人形作り、焼き物、塗りなどの職人から小さな町工場のおじさんたちにまで話を聞いたところ、彼ら仕事人は口をそろえて、「仕事をすること自体が楽しくうれしい。果物が実るのを見るようなものだから」と語った。心の奥底に苦役とは異なる労働観が存在するのを改めて確認し、彼は大変な日本びいきになったという。 
 今の若いヒトは、正規、非正規はそれほど問題にならないのかもしれない。私も若かりしころ、自己のミッションを求めて放浪したものだ。こうした労働観に立っているので、この国では、言葉は悪いが移民でなくても 安賃金に見合わないくらい一生懸命働く。伝統的な産業はこうした職人さんによって支えられている。裏を返せばブラック企業が発生しやすいということになる。悪辣な経営者にとって、この社会風土を悪用し、まじめなヒトたちをだますのは簡単なこと。
 最近のマックは、製造過程の不透明さなどで物議を呼んで評判を落としているが、彼女たちにはまったく関係ない別次元の出来事。この国の職人さんやマックの方々の無垢な生き方に、若干の危うさを感じないわけではないが、伝統的な豊かな思考が生き続けることを望む。

 ところで、別次元の出来事といえば、どこかの国の防衛大臣はだいぶ老化が進んだのか、他国へ派遣している平和維持組織が見たこと聞いたこと体験したことに、耳も目も頭も反応できなくなったようだ。最前線の情報を握りつぶそうとは、大猫帝国の時代とまったく同じあやまちをくり返そうとしているとしか思えない。政府は、この国の人々と伝統を踏みにじって、どこか別次元の世界へ行こうとしているのか。(2017.2.9)

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