よみびとしらず。

基本的にガラケーしかない環境にありますゆえに、普段は記事の投稿のみの身です。稀にパソコンから、まとめてチェック&編集を。

カントリーロード

2017-05-15 22:00:51 | 小咄(トチ)
モリナガヨウコはなんにもない田舎道を歩いていた。すると向こうから、桜の花柄の布をあしらった日よけ帽子をかぶったおばちゃんがやってきて、モリナガヨウコとすれ違いざま声をかけた。
「あんたね、この道にはたまに男のひとがいるんだから、気をつけなきゃだめよ」
モリナガヨウコは突然の警告に戸惑いつつも、ありがとうございますと小さく口にして頭を下げた。またしばらく歩いていると、今度は煙草をふかしたおじいちゃんが古びたバス停のベンチに座っていて、モリナガヨウコをじろじろ眺めていた。モリナガヨウコはなるべく目を合わせないようにしてたけど一瞬、目があってしまいそして、声をかけられた。
「なにみてんだよ!」
モリナガヨウコは口のなかですみませんとかそけくつぶやき、そそくさと通りすぎた。

よく分からないままこの道を歩いてきてしまったことをモリナガヨウコはすこし、後悔した。でも目的の駅へ向かうには、ここしか歩く道がない。まわりは田んぼや畑ばかりで、たまに民家もみえるがひとの気配はほとんどない。目の前に広がる空と田園の風景を楽しむ余裕ももはやなく、モリナガヨウコはいっしんに歩き続けた。すると行く手の右斜め前にこんもりとした森があらわれた。モリナガヨウコの位置からはまだ鳥居もお社も見えなかったが、なんとなくそこには神社があると思われた。その場所に、白いシャツを着たひとりの男性が立っていた。

「あんたね、この道にはたまに男のひとがいるんだから、気をつけなきゃだめよ」

モリナガヨウコは最初にすれ違ったおばちゃんの言葉を思い出した。
男のひと。さっきあったおじいちゃんも、男のひと?気をつけなきゃいけない男のひとって一体、だれのこと?

モリナガヨウコはもう泣きたい気持ちになって、足が止まった。引き返したらまださっきのおじいちゃんがいるかもしれないから、前にも後ろにも進めない。
こんもりとした森の前にいる男性も、モリナガヨウコの存在に気がついた。突然立ち止まり、なんだか泣きそうな顔をしているモリナガヨウコに戸惑っているようすだった。その男性はおずおずとモリナガヨウコに近づき、声をかけた。
「どうかしましたか?ご気分でも悪いんでしょうか?」
モリナガヨウコはただ歯をくいしばり、荷物を両腕にぎゅっと抱えて首をぶんぶんと大きく横に振った。こんもりとした森の近くには一本のソメイヨシノがあり、ソメイヨシノも森の木も、青々とした葉っぱが気持ち良さそうに風にざざあっと、揺れていた。
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