黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

民法(債権法)改正は「拙速」か?

2010-06-15 21:23:48 | 民法改正
 現在、法務省関係で大きな話題になっている法改正案には、民法(債権法)改正案と、会社法制の見直し案の2つがあります(厳密に言えば、児童虐待防止のための親権見直し案もあるのですが、これはそれほど意見の分かれる問題ではないと思われます)。
 民法改正については、以前からこのブログでも何回か取り上げてきましたが、最近の学者や実務家の意見には、改正の内容自体というよりは、今回の民法改正があまりに拙速に過ぎるという、改正の手続き面を問題にするものが散見されます。
 このブログでも、民法改正について触れるのは久し振りですので、改正手続きの適正さを検証する意味も兼ねて、これまでの経緯を振り返ってみたいと思います。

 一般に、民法や商法をはじめとする法務省所管の重要法案は、次のようなプロセスで作成されていきます。
1 法務省内部に、学者や官僚を中心とする研究会ないし勉強会(少なくとも建前上は私的なもの)が発足し、そこで法律案の中身について議論し、たたき台を作ります。
2 上記研究会で内容が固まると、その研究会の報告書が一般に公表されます。
3 上記研究会報告書を踏まえて、法務大臣が、法務省の公的な法律案の審議会である「法制審議会」に、法律案の中身について諮問を行います。法制審議会は、諮問を受けると、その法律案について審議するための部会を設置し、具体的な審議に入ります。
4 法制審議会の該当部会で議論が一段落すると、その法律案の中身について「中間試案」が公表され、一般に対する意見募集手続(パブリック・コメント)が行われます。
5 上記意見募集で集められた意見を踏まえて、法制審議会の該当部会でさらに議論が進められ、最終的な法律案の「要綱」が法制審議会の総会で採択され、法務大臣に答申されます。
6 上記「要綱」を基に、法務省の官僚たちが法律案を(具体的な条文の形で)作成し、内閣法制局(裁判官出身などのお偉い法務官僚が幅を利かせている役所)の審査と閣議決定を経て、国会に提出されます。
7 上記「法律案」が国会の衆参両院で審議され(国会では法務委員会が審議を担当する)、無事可決されれば法律として成立して公布され、施行されます。

 上記のプロセスを、具体例を挙げて説明してみましょう。
 一時期大変物議を醸した、刑事訴訟法の公訴時効改正は、次のようなプロセスで進められました。
1 法務省は、平成21年1月から、「凶悪・重大犯罪の公訴時効の在り方に関する省内勉強会」を発足させて、法改正の在り方について検討を始めました。
2 法務省は、上記勉強会における検討結果の取りまとめとして、平成21年3月31日、『凶悪・重大犯罪の公訴時効の在り方について ~当面の検討結果の取りまとめ~ 』を公表しました。この報告書は、今でも法務省のHPで見ることが出来ますが、この報告書では公訴時効の見直しについて4つの案を提示するとともに、既に行われた犯罪に対する遡及適用も可能かもしれないという内容になっています。
3 法務大臣は、法制審議会に対する諮問第89号として、凶悪・重大犯罪の公訴時効の在り方に関する諮問を行い、平成21年10月28日に開催された法制審議会第160回会議において、当該諮問について審理するための「刑事法(公訴時効関係)部会」が新設され、公式な審議が始まりました。
4 法務省は、公訴時効の見直しに関する主な論点を提示した上で、平成21年12月22日から平成22年1月17日まで、パブリック・コメント手続きに準じた意見募集手続を実施し、郵送・FAXまたは電子メールによる一般の意見を募りました。
5 法制審議会の上記部会では、上記意見募集の結果も踏まえてさらに審議が進められ、平成22年2月8日、人を死亡させた罪のうち死刑にあたるものについては公訴時効を廃止し、現在時効が進行中の犯罪についても遡及適用を認めるといった内容の要綱(骨子)案が採択され、同月24日の法制審議会第162回会議において、原案どおり要綱が採択され、直ちに法務大臣に答申されました(もっとも、部会では一部委員による修正案が出されており、内部では異論もあったようです)。
6 上記要綱を踏まえ、平成22年3月12日、『刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案』が内閣提出法案として国会に提出されました。
7 上記法律案は、参議院では同年4月14日に、衆議院では同月27日にそれぞれ可決され、平成22年4月27日法律第26号として直ちに公布されました。なお、この法律は一部を除き、公布の日から施行するものとされています。

 公訴時効の見直しについては、世論の強い後押しがあったとはいえ、法務省内で勉強会が設置されてからわずか1年余りで、具体的な法律の成立・施行まで行ってしまいました。刑事の基本法である刑法・刑事訴訟法の改正としては、異例とも言える早さだと言わざるを得ません。
 もっとも、被告人に不利な公訴時効制度の遡及適用に関しては、憲法解釈上の問題もありますので、後日その効力が法廷で争われることになる可能性もあります。しかも法律の素人が加わる裁判員法廷で。

 公訴時効の話は、本筋と関係ないのでこのくらいにしておきますが、今回の民法(債権法)改正が、上記プロセスに照らしてどのような経過を辿っているかを、以下に挙げてみます。
1 2006(平成18)年10月7日、内田貴元東京大学教授(現法務省参与)を中心とする学会の有志が、民法(債権法)改正のための準備作業を行うことを目的として、『民法(債権法)改正検討委員会』を設立し、審理を始めました。
2 上記委員会は、5つの準備会に分かれて民法改正の検討作業を進め、2009(平成21)年4月29日のシンポジウムにおいて、『債権法改正の基本方針』を公表しました。
 なお、この『基本方針』は、株式会社商事法務によって一冊3,675円(税込)で販売されており、一般の人でも購入することはできますが、法務省のHPなどで見ることはできません。
3 法務大臣は、法制審議会に対する諮問第88号として、民法(債権関係)の改正に関する諮問を行い、平成21年10月28日に開催された法制審議会第160回会議において、当該諮問について審理するための「民法(債権関係)部会」が新設され、公式な審議が始まりました。
4 上記部会では、翌年(平成23年)春の中間試案公表を目指して、現在審議が行われています。

 同じ日に法制審議会の審議にかけられた公訴時効の問題に比べれば、民法(債権法)の改正はゆっくり行われているようにも見えます。しかし、公訴時効の改正問題が、主要な論点3つという比較的簡単な話だったのと違い、上記『債権法改正の基本方針』は、全文で438ページにものぼる膨大なものであり、論点も優に三桁はあります。
 法務省の思惑どおり事が進めば、来年春頃に民法(債権関係)改正の中間試案が公表され、意見募集手続が行われるのでしょうが、一般に意見募集手続は、その内容の如何にかかわらず、中間試案が公表されてから1ヶ月くらいの期間を定めて行われます。
 つまり、日弁連や各地の弁護士会などがその中間試案に対して意見を出そうにも、その膨大な分量にのぼるであろう中間試案を1ヶ月足らずで検討し意見をまとめなければならず、はっきり言ってそんなことは神様でもなければ不可能です。
 では、上記『基本方針』を検討して意見を述べればよいのかというとそうでもなく、少なくとも建前上、上記『基本方針』は法制審議会の部会における審議の前提としないということにされていますので、黒猫も参加している弁護士会の委員会関係者は、どういう法律案が出されるのか確定情報が得られないまま、右往左往しているというのが現状です。

 重要法案の審理における意見募集手続(パブリック・コメント)というものは、たしか平成11年頃の閣議決定に基づき行われるようになったものであり、意見は誰でも出せるというのが大きな特徴ですが、法案の中身や分量に関係なく意見募集期間は一律1ヶ月程度であり、しかも1つの法案に関し意見募集手続は1回しか行われないので、今回の民法改正のように膨大な分量の法案については、意見を出そうにもなかなか検討が追いつかないのです。
 ちなみに、法務省所管の法律ではありませんが、金融商品取引法制定(証券取引法の改正)のときは、まだ「投資サービス法案」と呼ばれており法案の中身もいまいち固まっていなかった時期に1回だけ意見募集手続が行われ、東弁は意見を出し損ねました。
 そういうことにならないよう、今回は各地の弁護士会で検討が行われているのですが、法務省の審議会議事録を読んでも、部会委員に選出された弁護士先生の話を聴いても、それぞれの委員がばらばらに意見を言い放しにしているだけで、審理の方向性がどこへ向かっているのか全く読めないのです。
 もっとも、民事の基本法である民法の抜本的改正は、日本の社会経済全般にわたって大きな影響を与えうるものであり、放置するわけにもいかないし・・・。

 こんな感じで、弁護士会サイドは現在悲鳴を上げているような状況ですが、法務省サイドに言わせると、現在の民法(明治31年に制定され、その表記こそ現代語化されているものの、110年以上にわたって抜本的改正が行われず、その解釈をめぐって学者や実務家の間で数え切れないくらいの学説が錯綜している現行民法の抜本的改正を実現するには、少々手荒な手段によることもやむを得ないということなのでしょう。
 ただ、会社法や個人情報保護法の制定など、最近行われた新法の制定や法改正を見ていくと、十分な検討が行われず見切り発車で法改正が行われ、その結果実務に相当混乱を生じさせている例が少なからずあり、このまま平成23年に中間試案公表、平成24年か25年頃に法案成立などというスピード審理で民法改正が行われれば、その後10年くらいは、その解釈をめぐりあらゆる所で実務が混乱するといったことになりかねません。
 しかも現行民法の条文は第1044条までありますが(ただし、枝番の条文もあるので実際の条文数はこれよりやや多い)、諸外国の民法典と比べ日本の民法は条文が少な過ぎると言われており、総則と債権法の全面改正が行われれば、おそらく条文数は少なく見積もっても1500箇条か2000箇条程度になり、一般人にも分かりやすくするというのはどうやったって無理があるでしょう。
 黒猫としては、せめて法務省が、パブリック・コメントを2段階にわたって実施するなど、十分な議論の機会を与えてくれることを願ってやみません。

 ところで日弁連は、各単位会に対し、中間論点整理(上記中間試案のこと)に日弁連の意見を反映させるため、法制審議会の部会で6月までに行われた検討事項に関し、9月末までに意見を出せと言ってきました。しかも、A4版表裏2枚以内でサマリーを付けろと言ってきています。
 法制審議会の民法(債権関係)部会は、現在第10回会議まで行われており、6月末に第11回会議が行われる予定ですが、そこで議論されている論点(問題提起のみ)を羅列しただけでも数十ページくらいの分量になります。これに対する意見の要旨を、一体どうやってA4版4ページで書けるというのでしょう。仮に書くとしても、現在日弁連で起草中の「民法(債権法)改正問題に関する基本姿勢(案)」・・・正式には未決定のため、残念ながら中身は公表できません・・・という中身のない文章に毛が生えたくらいのものしか書けるとは思えません。
 今年日弁連の会長になられた宇都宮先生は、司法修習生の給費制維持には熱心でも、今回の民法改正に関しては、その実態がいまいち分かっていないのではないかと思わざるを得ません。

1 コメント

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んひょひょぉぉぉっ!! (漆黒の亀頭)
2010-06-20 13:15:22

http://dodo.inuchat.net/uymbwjf/
これ寝てるだけなのに気持ちよすぎるだろぉぉぉぉっ!!
尺 八 フ ェ ラで攻められまくって、俺もうずっとヘヴン状態www

報 酬までもらえたし、こりゃもう風 俗とか行く意味ねーな!!wwww
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