黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

司法改革の「A級戦犯」逝く

2013-05-05 21:58:52 | 法曹人口問題・法曹養成制度総論
中坊公平氏死去、83歳=元日弁連会長、「平成の鬼平」(時事通信) - goo ニュース

 5月3日,元日弁連会長の中坊公平氏が死去されたそうです。中坊氏は弁護士業界でも名を知られた人物でしたが,今の弁護士業界には,中坊氏の名を聴いて素直に敬意を表せる人は必ずしも多くないでしょう。
 中坊氏は,司法制度改革審議会で弁護士出身の委員となっておきながら,自ら2016年までに法曹人口をフランス並みの5万人にすべきであり,そのために司法試験合格者数を年間3000人にすべきであると主張した人物です。
 そして,当時の日弁連執行部は,この中坊氏の提案を受け容れる形で司法試験合格者数年間3000人とする総会決議を推進したのですが,そのように弁護士の数を増やしても大丈夫だという根拠となるデータは改ざん,捏造もいいところで,実際合格者数が年間2100人程度となった現段階でも,法曹志望者の激減や司法修習生の就職難で既にこの政策は頓挫しています。
 弁護士改革を進めて弁護士の力量を高める必要があるなどと言っておきながら,実際には旧試験では合格できなかった成績下位の人を合格させ,その多くを1年間に短縮化された司法修習のみで実務に追いやり,「新人や若手の弁護士が作成する訴状や答弁書の中には,誤字脱字違算等の形式ミスや散見されるものや,請求の趣旨と理由が食い違っているもの,書証の証拠が適切に引用されていないものなど形式的にも実質的にも適切さを欠いていると思われるものも少なからず存在する」(宮崎県の平成24年度一審協議会)などと裁判所から指摘される例も出る始末です。
 裁判所自らが新人弁護士の研修に乗り出すところも現れており,弁護士業界はこのまま行くと,裁判所や法テラスの強い支配下に置かれることになりそうです。急激な増員で弁護士会の運営も行き詰まり,数年後には司法修習生の受け入れが出来ない弁護士会が現れる可能性も出て来ました。

 まさしく中坊氏は,法科大学院制度,法曹人口激増,裁判員制度など,司法改革によって弁護士業界を救いようの無い混乱に陥れたA級戦犯なのです。もし,法科大学院制度が廃止されるまで中坊氏が生きていれば,なぜ司法審でこのような増員提案を行ったのか問い質したいところでしたが,中坊氏の死去により年間3000人提案の真意は永遠の謎となりました。

41 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-05-05 23:40:26
中坊公平氏と言えば、詐欺組織関係や、債権回収関係とか反社会的勢力にとっても近い関係の弁護士らしい人。きちんと、弁護士界を反社会的勢力にとっても近い位置に導いただけ。 いまや、弁護士目指して一歩まちがうと、金融取引の制限対象になったりするしね。
Unknown (Unknown)
2013-05-06 00:12:22
最近「こんな日弁連に誰がした?」を読んだばかりだったので、そういえば中坊氏は今頃どうしているのだろう、と思っていた矢先のことでした。本を読んだ印象としては、法科大学院ありきの合格者大増員という規定路線に、日弁連がうまく丸め込まれたという感じでした。真実はよくわかりませんが...。
Unknown (Unknown)
2013-05-06 00:25:12
中坊先生は志のある方だった。
そして行動力の伴う方であった。

サラ金や悪徳商法相手に頑張られている姿は,私と意見が違う場面でも,心から尊敬できるものでした。

自分の利益しか見えていない,今の大多数の弁護士とは大違いです。
Unknown (Unknown)
2013-05-06 00:42:12

学者たちだってそうじゃん。それだけ一途にやってりゃよかったのに・・
Unknown (Unknown)
2013-05-06 01:45:38
礼賛する方もいるようなので、業界の噂話を。

・中坊氏は、ニュースステーションで「弁護士は報酬をもらわず、依頼人が納得するお布施で我慢しろ」と主張して世間の喝采を浴びた(※橋下氏と似ている)。
・中坊氏の実家は京都の有名旅館、父親は京都弁護士会の元会長だから(※事実)、もともと金に困る立場ではなかった(※想像)。
・40歳頃までは金儲けに汲々とし、40歳を過ぎて森永事件に接してから弱者救済に目覚めたという(※野戦の指揮官より、でも遅すぎないか?)。
・中坊氏は400戦して4回しか負けていないと主張しているが(野戦の指揮官)、もともと大企業の鉄板事件しかしていないはずだ(※私見)。
・中坊氏は、豊島・森永・豊田商事等で弁護団の代表を歴任したが、配下の弁護士の手柄を全部自分のものにしたとの指摘がある(※真偽不明)。
・中坊氏の行動力は折り紙つきで、大企業は同氏の逆鱗に触れないよう、こぞって彼の実家の旅館を利用していたとか。
・小渕総理の顧問に就任したとき、一部の弁護士から「弁護士が権力にすり寄るのはおかしい」と指摘された。
・中坊氏はRCC社長時代に債権者に虚偽の売買代金を申告して抵当権を抹消させ差額をRCCに取得させた(詐欺容疑)。「その方が国民(RCC)の利益になるからいいんだ」とか「部下の弁護士がやったことだ」と強弁したものの、特捜から追及され、自ら弁護士を廃業することで逮捕と懲戒を躱した(司法取引)とされる(※公知の事実)。
・中坊氏はそれでも弁護士への復帰を諦めきれず、旧友たちの支援(血判状との噂もある)を得て大阪弁護士会に再登録申請したが、総反対にあって取下げた。
・登録抹消後に家庭内で不祥事があり、週刊誌に取り上げられた。
・晩年、親しい人に、「わしのやった改革は正しかったんやろか」と悩みを打ち明けることもあったという(※伝聞)。

なるほど志と行動力があったことは認めましょう。
でも、途中から謙虚さがなくなった。そして、結論は最悪です。

Unknown (Unknown)
2013-05-06 02:12:15
弁護士といってもいろいろ、途中で故坂本堤氏みたいな方向に行ったり、故中坊公平氏みたいな方向に行ったりして最後まできれいにいくのは、結構難しい。
Unknown (Unknown)
2013-05-06 07:44:34
中坊公平氏のご逝去の朗報に接し、心よりお祝い申し上げます。
Unknown (Unknown)
2013-05-06 10:14:05
↑いくらなんでも,それはないでしょう。 逝かれる前にせめて何かご自身なりの弁解なり今後のための教訓なり残してから逝っていただきたかたと思います。あれだけの実績遺した人なんだし,晩節があのまま終わったのは本当に残念です。ちなみに,私は十数年前の登録時の講話が中坊先生だったので感慨深いです。
Unknown (ひとこと)
2013-05-06 10:59:49
RCCは債権回収業務のために大量の弁護士を採用していたと聞いています。私の想像に過ぎませんが、中坊氏は、RCCだけでなく、その他の社会機構の中にも大量の弁護士が入っていき、世の中を動かす未来像を構想(今から見れば夢想といった方がいいかもしれませんが)していたのではないかという気がします。

 いわば弁護士の「社会主流化」、在野・反権力から権力を行使する側への転換です。

 中坊氏と佐藤幸治氏が、2人とも京都の人物であるのは偶然なのでしょうか。
Unknown (Unknown)
2013-05-06 11:03:39
>最後まできれいにいくのは、結構難しい。

正義感なんてそこそこにして、年収100万未満でもいいというのであれば、比較的きれいな人生を送れるでしょう。

喜んで成仏できるでしょう。