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本屋に並ぶ「私家版」、その光と影  (其の四)

2011年04月17日 13時18分16秒 | 文芸社出版の光と影

             

前回は、著者からのクレームの皮をむいていくと、表面的には実にいろいろなことをおっしゃるが、何枚も何枚もむいていくと、やがてあらわれてくるのは、支払ったお金の返還、ローンの免除であることが多い、と書いた。
 
そして、そのクレームの元になった事実関係を詰めていくと、契約担当者が、ああ言った、こう言った、「素晴らしい作品だ、素晴らしい作品だ」と褒め倒された、「必ず売れる」と騙された、「宝くじは買わなければ百パーセントあたらない。とにかく本を出しておけば売れる機会は皆無ではない」と口車に乗せられた…etcということになる。
そこで、契約担当者がいったい何を言ったのか、どんなセールストークをしたのか、ということが問題になる。

ところで、版元の契約担当者というのは、ふつうの商業出版社には存在する必要がまったくない人種(職種)だが、費用を著者が持つ出版ではメインプレーヤーである。あたりもやわらかく、さわやかな笑顔で、セールストークは群を抜いている。女性の担当者はおしなべて会社の受付に置いておきたいような人が多く、おっちゃんやじいちゃんなんかはイチコロだな、という印象である。私のところへはすべての部署から毎日毎日、いろんな人がやって来たが、契約担当者たちの語り口は他部署の追随を許さないもので、舌を巻いたものである。

この人たちは、出版の契約を取る仕事をする前は、何かモノを売っていたという経歴の人が多い。とにかく、総じて人の気をそらさぬタイプで、「人をその気にさせる」口のきき方ができる人揃いだ。その中には、のちに述べることになるが、著者から多額の金銭をだまし取っていた詐欺師というしかない人物も実際あらわれているのである(余談・この人は問題発覚後、三陸の海辺の町に戻って償いの送金を続けていた。仙台からだいぶ北の、海に突き出た岬の突端にある、この人の実家を私は各種協議のため訪れたことがある。その地はこの度の大震災で壊滅したと報じられている。思わず天を仰いだ次第)。

つまり、よく言えば版元の契約担当者たちというのは、“セールスの達人、鉄人”なのである、よく言えばだよ!
そのうえ、著者に合わせて、生まれ故郷はほとんど全国の都道府県にわたっていたり、大学なんかでも六つも七つも卒業しているといった人さえいる。闘病記を書いてきた著者と同じ難病に苦しむ家族・親族がいて、“苦しみを分かち合う”契約担当者も少なくないというのだから、あいた口がふさがらない。

このような担当者がかなりいる(当然ながら、まともな人間もおりますデスよ)ことを私は知っているから、契約担当者の抗弁よりも著者のクレームのほうがホントなのかもしれんな、と思わざるを得ないケースも出てくる。

「オレの原稿が本つくりのプロにどんな評価を受けるのか、ちょっこし聞いてみたいと思って連絡したら、あれよあれよという間に、ローンを組まされ、本を出すことになってしまったんや」という訴えを聞き、担当者の名前を聞くと、うーん、さもありなん、と思えることもあった(もっと困るのは、すでに本を出してしまったという場合)。

そこで、契約担当者を呼んで何を言ったか聴き取るわけだが、これがまた、立て板に水の抗弁が速射砲のごとく飛び出してくる。
曰く、「絶対にそんなことは言ってない」「そんなことをもし言ったとしたら、そりゃあ詐欺ですよ」「舞い上がった結果、墜落した著者の言うことを真に受けてんですか?」。もはや時間の無駄というものだ。

著者側で念のため商談を録音しておいた、という例は今のところ皆無だが、私はむしろ版元側で録音・録画しておくという方法もトラブル防止には寄与するなと感じている。ただし、近年、捜査の可視化がかなり現実味を帯びてきているものの、自費出版の契約話まで録画をもしとかんとあかん、ということになると由々しき信用問題ではある。

さて、きちんと契約書が調印されていて、大切な事項もきちんと説明されているとなると、著者側の主張根拠が証明づけられない限り、支払い金が返還されることはない。版元も営利を目的としている以上、クレームが出たといって、いちいちお金を返すわけにもいかない。
最近の例では、だいぶ前に刊行した著者が、本も出て広告や書店陳列などもすべて完了した段階で、「契約途中で解約するから相応の金額を返してほしい」「この本は印刷屋で作ったとすればいくらいくらくらいで出来る、したがって差額の七十何万円かを返せ」という本人訴訟を熱海簡裁に出した。
もし、このような請求が頻発してきて、裁判をやるのが面倒だからといっていちいち返還に応じていたら、企業は成り立たない。
 
しかし、社外の弁護士に依頼して訴訟代理人を立てれば、著者からの請求金額よりも高くつくのは明らかである。そんな事情もあって、私クンちゃんが熱海まで何度も出向いて訴訟を追行し、「請求に理由なし」の勝訴判決をもらった(著者はかなりの執着ぶりで、現在、静岡地裁で控訴審中)。このように、著者が裁判で争ってきても、支払えない、返還できない、という場合が多い。ただし、まだ編集にまったく着手していない段階での話なら、最近はトラブル回避のため、かなり契約の解除、支払い済み金員の返還が期待できる状況になっている。

 自費出版はかなりの金銭出費を伴うだけに、影の部分には深刻なものがある。
 契約担当者がいったい何を話したのか、可能ならムチ打ちでも加えて聞き出したいような例もある。

ある担当編集者が初老の女性著者宅に打ち合わせに行った。その編集者は打合せが長くなったりして、お昼の食事時にかかったりすることを懸念して、必ず自分が弁当を持参することを事前に連絡する。このときは、そう話すと、「いいえ、たいしたものはないが、昼食はあなたの分も用意しておきます」と著者が強く言う。それで、常になく甘えることにした。
相当年季の入った借家住まいの著者宅で、雑物があたりかまわず積み重ねられているのが印象的だったというが、ともかく打合せをおこない、昼食時になった。そうしたところ、おじいさんやおばあさんなど家族がどこからかぞろぞろと出てきたのはいいが、昼食というのはうどん粉に砂糖を入れて蒸かしたものがひとりに三つほど、食台に直接置かれたというのだ。それだけ。

 昭和20年ごろの話じゃないよ、平成22年だよ!

帰り際に著者が涙ぐんで、「ご覧のとおりの今の生活だが、間もなく御社から本が出て印税がきちんきちんと入ってくる。そうすれば、この借家を出て新しい住まいに移り、きちんとした生活ができる。契約担当者や編集者には、ホントにホントに、感謝しても感謝しきれない」と言ったという。

こうした生活の中でローン(クレジット)で契約しちゃって、この先いったいどうなるのか。その編集者は、逃げるように帰ってきて、「今後どうなるかを考えると胸が痛む。すべてを放りだしてしまいたい気持ち」と、肩を落とした。(このような経済状態の著者が何故クレジット契約できるのか、現時点ではこのような契約は違法とされている。)この項つづく)



 
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2 コメント

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他人事 (やまといちご)
2011-04-21 19:08:13
またまた立ち読みじゃなかった、立ち寄らせてもらいます。いやはやまったく他人事ではありませんね、借家住まいで、念願の著書を一冊、上梓して、その印税で暮らし向きが一気に代わり、全国から講演依頼なんかきてしまう、そう思ってるんですから、この私。うーーん
そう思わせるトークってのは… (クンちゃん)
2011-04-21 20:14:31
やまといちごさま
自発的にそんな夢みたいなこと思いつく人はまれじゃないでしょうか。やっぱ、すごいセールストークなんだと思います。カミワザか?
思いとどまってくださいね。世界一周に投資したほうがずっと有益と思いますね。
それは、そうと「やまといちご」とは、日本古来の、そんなのがあるかどうかしらんけど、イチゴなのか、あるいは奈良地方産のイチゴなのか、はたまた、日本の「イナゴ」の誤なのか、ついでのときにご教示ください。

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