復活!?92の杞憂な日々

四十路の92の杞憂な日々を綴ります

日本の社会福祉制度発達史

2006-10-16 22:52:12 | 社会福祉士レポート課題
日本の社会福祉制度の歴史は593年に聖徳太子が建立した「四箇院」などの仏教的慈善にまで溯ることができる。公的救済として718年の「戸令」による現物支給もあったが、救済対象は特に身寄りの無い者に限定された。また、天皇の慈恵や高徳を天下に知らしめる「賑給」にみる政策的慈善もあったが、近親者,村落共同体による救済が主体であった。その後、氏族的,村落的な隣保相扶,支配者による慈恵政策,宗教的思想が複雑に絡み合いながら展開していった。

明治時代に急激な近代国家が形成されていくなか、1874年に「恤救規則」が制定された。中央集権による救済は貧民や弱者に対しての慈善的要素が強く、救済対象も無告の窮民に限定され、公的扶助よりも地域共同体による私的救済に基本がおかれた。しかし、これに疑問を持った慈善事業家の活動が社会問題として世間の注目を浴びるようになる。
 
大正時代になると河上肇が著書『貧乏物語』に「貧乏はもはや個人の問題ではなく社会構造の欠陥に基づく必然的な結果である」と説いた。米騒動や労働運動が勃発し、これら社会不安を乗り切るため1918年に方面委員制度が発足し、民間人による救済行政の協力活動が始まる。この頃に慈善から社会事業と呼ばれるようになる。
 
昭和時代に入り1929年の世界恐慌が日本に深刻な不況をもたらすと、恤給規則が廃止され救護法が制定された。しかし財政難の為に1932年に施行され、ようやく公的扶助の体系が成立したが、救助対象も不十分なものであった。その後、国家総動員体制のもと軍事扶助法などの整備へ向かい、社会事業から救済の対象を国民全体におく厚生事業へと名称が変更されたが、軍事政策を中心としたものでヒューマニズムという視点は排除されていた。敗戦を迎えた1945年を機に日本の社会福祉制度が成立してゆく。占領軍(GHQ)は「社会救済に関する覚書」で公的扶助の原則を示し、政府はこの原則に習い1946年「(旧)生活保護法」制定へ着手。つぎに1947年に児童福祉法が公布され、1949年に身体障害者福祉法が制定された。以上3つを「福祉三法」と呼んだ。1950年に社会保証制度審議会が社会保障,国家扶助,公衆衛生,社会福祉の各分野にまたがる勧告を発表。1951年には社会福祉協議会が発足。さらに同年、社会福祉事業法も公布され、措置制度も定時される。この頃から経済復興中心策におされ社会福祉の後退を示し、1954年には社会保障予算が大幅削減され福祉の危機状態も生じた。こうした状況下に人間裁判と呼ばれた朝日訴訟が福祉運動として大反響を呼び、1957年から10年に及ぶ裁判のなかで生活保護基準の改定や福祉の権利保障が進むこととなった。1958年に国民健康保険法が制定され、翌1959年には国民年金法が制定される。1960年代に現在の知的障害者福祉法、老人福祉法、母子及び寡婦福祉法が制定され福祉三法と併せて「福祉六法」の完成をみたが、これら政策では追いつかない猛スピードで高齢化が進んでいった。施設収容主義は限界に達し、在宅福祉,地域福祉を中心とする時代となる。対象も貧困層中心から中間的勤労層を含む一般国民に拡大され、対象人口の大幅増により財政負担の過重が政治問題となり「高福祉・高負担」が叫ばれる時代となっていった。1980年代に社会福祉の見直しがあり、社会福祉の地方分権化,在宅福祉の政策化,専門職制度整備(1987年制定「社会福祉士および介護福祉士」の拡充),福祉情報ネットワークの構築などへ政策転換してゆく。1989年にゴールドプランが策定され高齢者保険福祉が推進されると、翌1990年に福祉関係八法の改正から改革期を迎える。1994年に高齢者保険福祉が見直され新ゴールドプランが策定され、さらに1999年には更なる見直しを経てゴールドプラン21が策定される。高齢者対策と平行して少子化対策として1994年にエンゼルプランが策定される。さらに本格的な少子高齢社会を背景に1997年に児童福祉法が改正、1999年には新エンゼルプランが策定され、2000年に社会福祉事業法が社会福祉法へ題名改正されるとともに介護保険法が施行される。児童福祉や高齢者福祉サービスを皮切りに社会福祉政策はこれまでの措置制度から契約中心の制度へと大きく転換してゆく。支援費制度で障害者の自立への道が広がりを見たが、財政問題から見直され2006年10月には障害者自立支援法が施行され、さらに介護保険制度の見直しも行われた。これら一連の改革を「社会福祉基礎構造改革」と呼ぶ。

現在の社会福祉制度は個人の自立支援と利用者による選択が尊重されるが、自己負担も求められ、社会的問題が叫ばれている。今後もより良い社会福祉制度の確立を目指し、さらなる改革が積み上げられてゆくであろう。



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