テアトル十瑠

1920年代のサイレント映画から21世紀の最新映像まで、僕の映画備忘録。

永い言い訳

2017-08-30 | ドラマ
(2016/西川美和 監督・脚本・原作/本木雅弘、竹原ピストル、藤田健心(=真平)、白鳥玉季(=灯)、深津絵里、堀内敬子、池松壮亮、黒木華、山田真歩、戸次重幸/124分)


-『悪いけど、後片付けはお願いね』
 これが妻と交わした会話の最後の彼女の言葉でした。-

 ってな具合で始まるのかな、小説は。
 去年、予告編を観て面白そうって思っていたこの映画。「ゆれる」の西川監督と「おくりびと」のモッくんのタッグだから絶対に面白いと思っていたのに、少し予想とは違う内容だった。

*

 テレビ番組にも時々出演することもある中堅小説家、津村啓(本名は衣笠幸夫)は、妻が友人とバス旅行に出かけた夜に愛人を自宅に呼び入れるが、翌朝、妻が乗ったバスが山道で事故を起こし友人もろとも氷の張った湖に沈んで帰らぬ人となった事を知る。
 妻の夏子とは大学時代からの知り合いだが、付き合いだしたのは卒業後だった。就職活動の最中に偶然入った美容室で、大学を中退していた夏子と再会したのだ。一年の時に母親が死んで大学を辞めた彼女は美容師の免許をとり既に自活していた。大学時代から作家になると公言していた幸夫は、以後夏子に助けられながら作家修行をしてきたのだった。
 夫婦になって二十年、夏子はともかく幸夫には妻は空気以下の存在で、その夜も髪の毛を切ってもらいながらもイヤミな話を彼女が出かける寸前まで続けていた。そんな状況で夏子は死んだのだ。
 有名人なので葬儀を行った山形まで芸能レポーターがやって来たが、幸夫には悲しみはこれっぽっちも湧いてこなかった。それでも悲しい顔をしないわけにもいかずインタビューにも応じた。家に帰ると早速ネットでエゴサーチをする幸夫。そんな彼の本心はすでに遺骨を抱えている時から所属事務所のマネージャーには見抜かれていた。
 バス事故遺族への説明会があった時に、幸夫は夏子の友人である大宮ゆきの夫、陽一と会う。彼とは初対面だったが陽一は『幸夫君』と名前で呼んできた。夏子が彼ら夫婦の前でそう呼んでいたからに違いなかった。長距離トラックの運転手をしているという陽一は、愛妻を失くした悲しみを隠そうともしなかった。

 サービスエリアで休憩中の陽一がいつものように携帯の留守録に残っている妻のメッセージを再生して涙に暮れていると、幸夫から電話がかかってきた。幸夫の家の留守電に連絡が欲しいと入れていた陽一への返信だった。
 陽一には二人の子供がいた。小学生の真平君と幼稚園の灯(あかり)ちゃん。
 四人で幸夫の行きつけのレストランで夕食を摂った時に、灯ちゃんがアレルギーのショック状態に陥る。陽一が灯ちゃんを救急病院に連れて行き、真平君と幸夫は家で待つことになるが、そこで幸夫はこの家の状況を把握することになる。成績優秀な真平君が今通っている進学塾を辞めざるを得ないという事。長距離トラックという仕事柄、陽一は週に2回は家に帰れない日があるという事。
 大宮家からの帰り、タクシーを捕まえようと道路傍に立っている陽一に幸夫が声を掛ける。
 『週に2回くらいなら僕が来ようか?僕の仕事はパソコンとノートさえあれば大丈夫だから・・・』

*

 妻の友人親子とのふれ合いの中で、妻を亡くしたという現実を徐々に受け入れていき、改めて妻への想いを深めていく主人公・・・みたいな、要するに失って初めて思い知る大事なもの、その相手への想いが描かれるのだろうと思ってたわけです。
 ところが、予想以上に主人公の頑なさは強固で、尚且つ妻への愛情もどれだけのものだったか些か疑いの目を持たざるを得ないような男でありました。
 奥さんを思い出すシーンなんか殆ど無かったですからね。中盤以降で唯一、深津絵里が出てくるのは、幸夫が陽一親子と四人で海水浴に行くシーンで、陽一が発した『夏ちゃんがいたらなぁ』という言葉に触発された幸夫の幻想の中だけでした。
 つまり、妻への想いが映画で描かれることはなく、妻への想いを深めていこうと“思い始める”までが描かれたと言っていいでしょうな。そんな映画です。

 西川さん、そこ面白いですか?その後の方が感動的だと思うんですけどねぇ。
 感動させようなんて思ってません、と言われればしようがないけど。
 ラスト近くの出版記念パーティーなんか没にして、もっと幸夫と夏子のシーンを増やして欲しかったなぁ。

 「人生は他者だ」
 終盤に辿り着いた彼の心境を表した言葉がこれでした。
 自分の事しか考えないで生きてきた主人公が、大宮家の力になっていって、しかし自分が必要とされなくなった後に初めて他者との関わり合いの大事さを知る。その事が、妻との関わり合いをもう一度考え始めることに繋がっていく。そういうプロットなんでしょう。
 「」や「ギター弾きの恋」のように、愛に取り残された男という見方もあるようですが、出版記念パーティーの様子を見るとそういう事でもないようですね。

 お勧め度は★二つ半。
 きめ細かい編集は相変わらずですが、原作にこだわらずにもっと感動的なエピソードが欲しかったです。

*

(↓Twitter on 十瑠 から[一部修正アリ])

西川美和の「永い言い訳」をレンタルで観る。予想とは違って切れが悪い。リズムも悪い。終盤の美容室のシーンをアップだけで済ますのは物足りないし、ラストの出版記念パーティーも白々しい。女性がどう感じるか分からないけど、僕には主人公達の言動が生々しくないな。演技のせいかもしれないけれど。
[ 8月27日 ]

「永い言い訳」2回目を観てる。やはり2時間は長すぎるな。そして主人公のキャラが一定してない感じがする。例えば序盤であんなにネットでエゴサーチしてた人間が、奥さんの壊れたと思ってた携帯が復活した時に、最初に観たメールがショックだったとはいえ、あんなに簡単に壊すかね。もっと見たくなるでしょう。
[ 8月28日 ]





・お薦め度【★★=悪くはないけどネ】 テアトル十瑠
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