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2017-06-16 13:25:12 | 日記
 明治大学教養論集 通巻428号(2008・1)
3.農家の多様化
 米国では年間農産物販売額が1,000ドル以上の農場を農家として定義して
いる。1997年の米国農業センサスによると,農家戸数が1950年の約539万
戸から1997年の191万戸へと,減少の一途を辿った半面,1戸当たりの農
用地面積は同時期の87ヘクタールから197ヘクタールに拡大した。ちなみ
に日本は1.37ヘクタール,韓国1.19ヘクタール,中国0.53ヘクタールで,
米国と比較するといずれも100分の1以下である。米国政府の大規模農業の
優先政策と農産物の輸出・輸入促進政策により,中規模以下の農家が減少す
る一方で,大規模農家が大きくシェアを伸ばしている。すなわち,世界市場
への拡大をめざす輸出振興政策のもとに,市場開放の裏返しとして逆に米国
内にメキシコなど発展途上国から安い農産物の輸入も増大し,激烈な価格競
争下で農業部門の再編成が進んでいるのである。
 具体的に見ると,1997年農業センサスによれば,年間販売額50万ドル以
上の大農場は,戸数では全農家のわずか3.6%を占めるにすぎないが,全販
売総額の56.6%と過半を占めている(1982年では,それぞれ1.2%,32.5%)。
同じく,販売額10万ドル以上の農家の場合は,全農家数の18.1%で全販売
総額の87.4%が占められている(1982年では,それぞれ13.4%,72.6%)。
大農場の増加傾向が著しいことがわかる。
 一方,販売額1万ドル未満の小規模農家を見ると,全農家数の過半数50.3
%を占あているが,販売額では全体のわずか1.5%を占めるにすぎない
(1982年では,それぞれ48.9%,2.7%)。すなわち,ごく少数の大農場が販
売能力を拡大した半面,多数の小規模農家が兼業等で生活を支えて生き残り,
中規模層が両極端に分化している様子がうかがえるのである2>。
 上述の統計から見られるように,アメリカでもすべての農家が広大な土地
で作業をしているというわけではない。アイダホ州やテキサス州などによく
存在する1,000ヘクタール以上の農地を持つ農家は,あくまで一握りの農家
米国農業の現状と問題点  7
で,それらの農家によってアメリカの桁違いの安価な農作物が作られている
のである。日本でも北海道や東北などの農業地帯に足を踏み入れてみれば,
かなり広大な土地で農業をしている農家を見ることができる。関東より西で
は小さな土地を耕している農家が多い。
 カリフォルニアは,米国における最大の農業州でありながらも最も都市化
が進んだ州でもある。人口は3,387万人であり,全米の10%以上を占めてい
る。そのほとんどがロサンゼルスとサンフランシスコの二大都市を中心とす
る都市部に居住している。今回調査した地域はサンフランシスコ周辺および
その北部に広がる地域であった。見渡す限りの大牧場,コーン畑,野菜畑と
ブドウ園を所有する農家もいれば,住宅地が広がる都市近郊や都市中心の小
さい農地で観光農業や有機栽培と産直販売などを行い,様々な手般を駆使し
て一生懸命存続を図っている農家も少なくなかった。
 実際,カリフォルニアの農業生産はアメリカでは比較的小規模,労働集約
的な特徴を持っている。農地の規模で比較すると,カリフォルニア州の1戸
当たり農家の所有地は約120ヘクタールで,穀物ベルト地帯の平均面積の
6割でしかなく,比較的小規模農家が多い。また,農業人口比率の平均値を
見ると,全米が2%,穀物地帯が3.4%であるのと比べると,カリフォルニ
ア州では1.6%と低いレベルにある。さらに単位農場当たりの労働人口は,
穀物ベルト地帯の平均の1.2人に対し,カリフォルニアは3.1人と,およそ
2.5倍の労働力を比較的小規模の農地に投じていることが分かる(図2)。
 しかし,こうした比較的小規模で,労働集約的農業形態は決して収益性が
悪いという訳ではない。まず,1エーカー当たりの平均年間収益を見ると,
穀物ベルト地帯では平均わずか31ドルに対し,カリフォルニアは190ドル
で,穀物ベルト地帯を6.1倍も上回っている。次に,農業就労者1人当りの
年間収入で見てみると,カリフォルニアは19,000ドルであり,穀物地帯の
16,000ドルに比べて15.8%高くなっている。さらに,1農場あたりの収益で
比較すると,カリフォルニアの約60,000ドルに対し,穀物地帯は19,000ド
8  明治大学教養論集 通巻428号(2008・1)
エーカー
700
600
500
400
300
200
100
 0
    全米平均  カリフォルニア 穀物地帯平均
人14
3
2
EX]1農場当たりの平均農園面積
■○-1農場当たりの平均就業人数
1
0
    出典;USDA, ERS, US Facts Sheet 2001
図2 カリフォルニアの農園の規模と農園当たりの平均農業就業人数
$60,000
$40,000
$20,000
$0
$200
$150
$100
$50
$0
全米平均  カリフォルニア 穀物地帯平均
國圏1人当たりの平均年収
■○-1エーカー当たりの平均収益
出典:USDA, ERS, US Facts Sheet 2001
  図3 カリフォルニアの農園の規模と収益性
ルと,3倍以上の収益力を持っている(図3)。果実,野菜,花卉など地中海
性気候で育つ特殊な付加価値の高い農産物を生産しているという特徴がこう
した高収益性をもたらしたのである3’。
米国農業の現状と問題点  9
ll.調査農家の事例
米国滞在中,友人の斡旋や紹介で十数軒の農場を見学したり,インタビュー
したりしたことがある。以下その中の何軒かについて紹介したい。
1.デイブ・ウィルソン苗木農園(Dave Wilson Nursery)
 2006年6月22~25日の3日間ステナスローズ郡のモデスト市(Stanislaus
County Modesto)に位置するデブ・ウィルソン苗木農園を訪問した。
 ステナスローズ郡は平坦で広大なセントラル・ヴァレー(Central Val-
ley)に属し,カリフォルニア州の中央に位置している。南北600キロメー
トルあり,サクラメント(Sacramento)川とサンホアキン(San Joaquin)
川が流れ込み,デルタを形成し,カリフォルニア州のもっとも豊かな農業地
域として名が知られている。ここは地中海性気候で,乾いた夏では平均気温
30℃で,もっとも暑い日は38℃,時には46℃まで上昇することもあるとの
ことである。冷たく湿った冬には雨が多い。こうした農業に適した地形と気
候ゆえに,全米トップ10に入る農産物の産地となっている。その役所から
もらった資料によると,同郡は人口497,804人で,91%が都市部,9%が農
村部に居住している。農家の平均所有土地面積は75ヘクタールで,そこの
農家土地利用率は44%である。同郡にある農家の84.3%は家庭農家であり,
農家1戸当たりの所持農機具や設備の価値は77,381ドルに上る。トウモロ
コシや小麦などの穀物の収穫面積は2,268ヘクタール,野菜の収穫面積は
17,504ヘクタール,果樹園面積は70,317ヘクタールであり,灌概面積の全
収穫面積に占める割合は96%にも達している。農家1戸あたりの平均農産
物販売額は287,932ドルである。農業は現在でもこの地域の主要産業の地位
を守っており,主要農産物はトマト,アーモンド,アスパラガスなどのほか,
アメリカのフルーツのバスケットと呼ばれ,オレンジからプルーン,イチゴ,
10 明治大学教養論集 通巻428号(2008・1)
チェリー,ブドウ,アンズなどの果物である。
 訪問したデイブ・ウィルソン苗木農園は同郡における大手農場であり,歴
史の長い農場でもある。1938年に創業したデイブ・ウィルソン農園は,当
時小さな借地農家であった。2代目経営者ジョン・ウィン(John Wynne,
Dave Wilsonの娘婿)と3代目ロバート・ウーレー(Robert Woolley,
Johnの娘婿)の努力により,現在,400ヘクタール余りの土地を所有し,
年間200万本もの果実の苗木を供給しているカリフォルニア州で最も大きな
苗木カンパニーの1つとなった。この苗木農園は650種類もの果樹および家
庭ガーデン用苗木の栽培と卸売りを専門的に行っており,その販売先は小売
り苗木ショップやガーデンセンターまたは商業果樹園であり,個人客には直
接販売しない。一一一一L度の最低購買量はブドウの苗木なら500本,それ以外は
150本だそうである。
 当苗木園は販売キャンペーン活動に力を入れている。新品種をアピールす
るために,毎年州各地で果物試食会(Fruit tasting)を開催している。1994
年第1回目の試食会が開催されて以来,1,000種以上の果物が試食され,そ
れぞれ糖分,香り,肉質および成熟度などの項目で評価されている。こうし
て集められた品種の特徴,ユーザーや消費者の意見などのデータをレポート
にまとめ発行し,小売業者,ユーザーや社会に紹介し好評を博している。重
要なイベントなので,どの品種を何時,どこの試食会に出すかまでも検討を
重ねている。私がそこを訪問したとき,ちょうど見学者のための小さな試食
会が催されていた。机の上にスライスした早生の(early-season)桃,ネク
タリン,プラム,アンズとチェリーを入れた紙皿や,塩味のビスケットと水
が並んでいる。試食者が目隠しをして,デイブ・ウィルソン社のスタッフの
助けを得て果物を口に入れ,その甘さ,香り,肉質を吟味し,点数をつけ,
感想を述べる。そして,塩味のビスケットを食べ,水を飲み,味覚を戻して
次の果物を試食する。
 試食の後,私たちは苗木畑に案内された。そこで作業している多様な機械
                     米国農業の現状と問題点 11
(木を掘り出す機械,使用後の畑に肥料を撒いたり,土を耕したりする機械,
勇定する機械など)をみて,その徹底した機械化ぶりに驚いた。紹介による
と,一度木を植えた土地を出荷後4年間休ませ,その間に地力回復のために
追肥を行い土壌作りをし,小麦を作ったりしている。
 また,ここの苗木は80%が種子から20%が挿し木で栽培している。種子
からの場合,毎年10月に種を埋め,2月に発芽し,5月に母樹から切った枝
目を苗木に接木し,苗木の先端を切る。18~21日後,元の苗木の枝を切り,
接木した母樹の枝を成長させる。14ヵ月後商品として出荷できる。接木の
枝を提供する母樹は4年間の生長期間を必要とし,10年ごとに入れ替える
という。
 機械化がかなり進んでいるとはいえ,手作業で完成しなければならないよ
うな工程がまだたくさん残っている。高い品質を保つために,種埋めから横
枝払い,支え杭での固定,切り株の等級付け,接木などをすべて手作業で行
うようにしている。「我々の苗木は本当の手作り工芸品である」と当社責任
者が自慢したほどである。そのために,この苗木園は年中170~200人の農
業労働者を雇っており,そのほとんどがメキシコ人である。見学のときに見
かけた農業労働者一機械を操縦している人,出荷の苗木を搬送している人,
接木をしている人一は,すべてメキシコ人であった。接木をしている1人
のメキシコ人労働者に聞いたら,ここで10年以上働いており,1日1万本
接木ができるそうで,かなりのベテランのようであった。
 常に最新,最良の品種を提供するために,この苗木園はカリフォルニア・
モデスト・ジネティック・ゼーガース会社(Zaiger’s Inc. Genetics of
Modesto, California)と連携して,新品種の開発と普及に積極的に取り組
んでいる。ゼーガース会社は新品種開発研究会社であり,その新品種を導入
しようと世界十数ヶ国の会社がゼーガース社と契約している。米国では農産
物の新品種開発と普及に当たっては,農業研究機関→種苗・苗木園→生産農
家というシステムによって行われる。毎年,ゼーガース社が何万もの新品種
12 明治大学教養論集 通巻428号(2008・1)
苗木を栽培し,その1本1本の苗木は厳選された2つの親木による異種交配
の新種である。その中から,また有望な苗木品種を選んで試験果樹園に移し
栽培する。デイブ・ウィルソン苗木農園にはリードレー試験果樹園(Reedley
test orchard)が設置されており,毎年実りのシーズンになると,ゼーガー
ス社,デイブ・ウィルソン社の代表および業界の専門家で形成された鑑定グ
ループが週ごとにその試験果樹園に視察に赴く。すなわちデイブ・ウィルソ
ン社はゼーガース社の鑑定者でもあれば普及者でもあるのだ。
 「われわれにとってデイブ・ウィルソン社の木はただの木ではない。これ
は長年の企画,土地と設備への投資,栽培研究の結晶であり,また最高の苗
木を提供しようと一生懸命働いている苗木園従業員全員の賜物でもある」。
見学後,最初に案内してくれた責任者のこの言葉に納得した。同社はカリフォ
ルニア産果実が世界市場で成功を収めるために重要な役割を担い,大きく貢
献しているといえる。
2.スミス家族農場(Smith Family Farm)
 スミス家族農場は東コントラ・コスター郡(Contra Costa County)の
ブレントウッド(Brentwood)町に所在し,バークレーから西北に車で約1
時間,サンフランシスコから約1時間20分のところにある。町役場の紹介
によると,このブレントウッド町の総人口が23,284人であり,そのうち
23,238人が都市部に居住し,46人が農村部に住んでいる(2005年)とのこ
とである。また,人種的に見ると,人口の63.1%が白人で,28.2%はヒスパ
ニックであり,残りは他の人種である。この町における家庭の年平均収入は
75,500ドルで,カリフォルニア州平均の53,629ドルと比べてかなり高い水
準にある。しかし,ヒスパニック家庭の平均収入は48,914ドルで,州平均
を下回っており,白人家庭平均の75,565ドルの647%しかないのである。
 2006年10月14日にこの農場を訪ねたとき,ちょうどハロウィーンの前
ということもあって,農場は沢山の家族連れや観光客で賑わっていた。見学
米国農業の現状と問題点  13
料$8を払い,農場の中に進むと畑一面に巨大なカボチャが転がり,その大
きさは一人では抱えきれないほどであった。また,あちらこちらに飾ってあ
るかかし,可愛いらしいものや怖いもの様々あり,童話に出てくる魔女と写
真をとることもできる。さらに,農場動物園や巨大なトウモロコシ畑迷路,
ひまわり林,干草トラックでの農場見学などのイベントも楽しめる。広場の
一角にインディアン原住民の村が再現されている。後にここの経営者ジェニ
スに聞いたら,学生や子供たちに誰が私たちよりも先にここに住んでいたか
を知ってほしいからだという。
 この農場の伝統的な生産物はトマトである。50種類以上のトマトがここ
で栽培されていて,大きさ,かたち,色が様々で,白いトマトを見たとき,
本当に目を疑った。
 農場の経営者はスミス兄弟のジェニス(Janice)とケン(Ken)である。
ジェニスはイベントの企画,実施などを,ケンは農産物の栽培を中心にと,
役割分担してこの農場を経営している。同農場は典型的な観光農業を営んで
いる。都市に近い立地を利用し,都市住民の憩いの場,学生や子供の農業体
験の場として利用されている。いかにして特徴ある農園づくりができるか,
どうしたら来客数を増やすことができ,より多くの人に感動を与え,農業に
親しみを感じてもらえるかは永遠の課題だとジェニスはいう。
 観光農業を営むきっかけを聞くと,ジェニスはこう言った。自分の若いと
き,家が貧しかった。大学の学費を稼ぐために,ハイウェーサイドで野菜や
果物を販売してみたら,飛ぶように売れて手応えを感じた。そこで客を農場
に招いて直接販売するアイデアを得た。農場の一角に摘み取ったばかりの新
鮮野菜や果物を販売するコーナーを設置し,直接販売を始めたわけである。
その後間もないある日,農場にきた客で1人の中学校の先生に,生徒を連れ
て農場を見学してもよろしいかと尋ねられた。その最初の学生見学団が戻っ
てから,ロコミで年々見学しに来る学生が増え,今は全国各地から学生がく
るようになったという。
 14 明治大学教養論
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