不適切な表現に該当する恐れがある内容を一部非表示にしています

OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

地獄にだって、底はある

2016-02-17 15:57:44 | Rock

地獄の叫び / Mitch Ryder & The Detroit Wheels (New Voice / 東芝)

この世の中、お金で大概の事は片付きますが、一度でも落ちてしまった信用信義を取り戻すのには、再び長い積み重ねが必要です。

今回、サイケおやじが襲われた地獄の責め苦にしても、そもそもの発端は下の者のイザコザであり、そこへ順次、上の者が絡んでしまったという有様では、丸っきり出来の悪いヤクザ映画みたいなものでした。

そして結局、ど~解釈しても、こちらに非がある事は避けられないとなれば、後は責任の所在だけが問題になるわけで、サイケおやじは反対したものの、組織の意向としては件の下の者に身を引いてもらうという、いやはやなんとも、当たり前の収拾策……。

ですから、サイケおやじは周囲に大きな義理を借りてしまい、つまるところ、その格好がつけられなければ、今の仕事からは(?)出来ないだろうという、まさに老後は真っ暗ですよ。

しかし、これで地獄の底は見えたような気がしています。

ということで、今の気分にジャストミートな歌や演奏は?

何とも自分じゃ~思い当たらないので、いろんなキーワード入れて、私用のPCに問うてみたところ、鳴りだしたのが本日掲載のシングル盤A面曲「地獄の叫び / Sock It To Me - Baby」でありました。

演じているミッチー・ライダーはハードロックのルーツにも位置するロッキンソウルな白人歌手ですが、日本では些か注目度が低い、所謂過小評価の人気者になりましょうか。

それでもとにかく、一度でも聴けば、好きな人に好きっ!

そうとしか言えない存在かと思います。

う~ん、PCの心も、案外と正鵠を射るものかもしれませんねぇ~~。

 

 

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スカッと熱血なミッチー・ライダー

2011-06-23 15:36:47 | Rock

悪魔とモーリー / Mitch Ryder & The Detroit Wheels (New Voice / 東芝)

全てが鬱陶しい今日この頃、音楽ぐらいはスカッとする1曲を求めて取り出したのが、本日ご紹介のシングル盤です。

主役のミッチー・ライダーは白人ながら、実に黒っぽい声質と熱血のロック魂を自然体で表現出来た天才で、結果的に全盛期は短かったんですが、それゆえにリアルタイムで残した音源は何時聴いてもR&R好きにはたまらないものばかりですよ。

いや、全ての大衆音楽ファンは聴かずに死ねるか!

そう断言して後悔しないものが、確かにあります。

で、この「悪魔とモーリー / Devil With A Blue Dress On & Good Golly Miss Molly」は原題からもネタバレしているように、前半はショーティ・ロングの「Devil With A Blue Dress On」、そして後半はリトル・リチャードの「Good Golly Miss Molly」という黒人R&Bをメドレー形式で演じたものなんですが、その味付けは徹底的なハードロック!

まさにゴリゴリの突進ロックが存分に楽しめますから、アメリカでは1966年晩秋に大ヒットし、我国でも翌年に発売された時には、かなりラジオから流れていましたですねぇ~♪ もちろんサイケおやじも瞬時に虜になりましたが、例によってレコードは買えず、4~5年後になって中古屋で見つけた時は本当に嬉しかった1枚です。

ちなみにミッチ・ライダーはデトロイト育ちということで、自然と黒人R&Bに親しんでいたところからバンドを結成し、当地を訪れる有名スタアの前座を務めていたそうです。

そして1965年、正式レコードデビューする時にミッチー・ライダー&デトロイトホイールズと名乗り、メンバーはミッチー・ライダー(vo)、ジム・マッカーティ(g)、ジョセフ・クバー(g)、ジェイムス・マカリスター(b)、ジョン・バタンジェッ(ds) という5人組となって、幾つかの印象的なハードロックヒットを飛ばすのですが……。

それは本当に初期だけだったようで、巡業ライプを含む実際の活動ではホーンセクションを含むオーケストラ的なバンドと一緒だったようです。

というのも、ミッチ・ライターの歌い方やアクションは明らかにジェームス・ブラウンからの影響が大きく、それゆえにステージマナーも模倣していたと思われますが、近年になってネット等で接する映像にも、それは顕著でしたねぇ。

まあ、個人的にはエリック・バートンのライバル的存在としても評価していただきたいボーカリストだと思っています。

ただし残念ながら、1968年頃には喉がダメになったらしく、セミリタイア状態となって、幾度かのカムバックから現在も地道な活動はやっているらしいのですが、15年ほど前にそれに接した友人の話では案の定、声が苦しくなっていたそうです……。

それとご存じのとおり、この「悪魔とモーリー」はブルース・スプリングティーンが例の原発反対コンサートのライプ盤「ノーニュークス」でも演じていたように、やって良し、ノッて良しの極みつきですから、ついついアマチュアバンドもその気になってしまうのですが、現実的にはボーカルの力量が相当に求められることは言わずもがな!

実はミッチー・ライダーが十八番の演目には、こうしたR&Bや有名曲を焼き直したメドレー形式が多く、必然的に体力と気力、さらにはロック&ソウル魂が絶対条件になっているのです。

そして今日では、そのあたりの同系ヒット曲を収めたベスト盤CDも手軽に楽しめますから、これはぜひっ!

心底、スカッとしますよ♪♪~♪

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

サド・ジョーンズはハードバップか!?

2009-03-03 09:52:22 | Jazz

Detroit-New York Junction / Thad Jones (Blue Note)

サド・ジョーンズはビッグバンドの人というイメージも強いのですが、その活動初期には優れたスモールグループ作品も残しています。

本日の1枚は、その最初期のリーダー盤で、タイトルどおり、このセッション当時のニューヨークでメキメキと台頭していたデトロイト人脈が集合しており、もちろんサド・ジョーンズも、そのひとりというわけです。

録音は1956年3月13日、メンバーはサド・ジョーンズ(tp,arr)、ビリー・ミッチェル(ts)、トミー・フラナガン(p)、ケニー・バレル(g)、オスカー・ペティフォード(b)、シャドウ・ウィルソン(ds) というワクワクしてくる面々ですが、ドラムスとペース以外はデトロイト出身者ですし、サド・ジョーンズにとっては、カウント・ベイシー楽団のトランペットセクションへ加入した直後のセッションと言われています。

A-1 Blue Room
 サド・ジョーンズが書いたグルーヴィでソフトファンキーな隠れ名曲です。その穏やかにスンイグしながら、実は相当に黒っぽい演奏は、デトロイト出身者が持つ資質に共通するものだと思います。
 ここでもビリー・ミッチェルが、たっぷりとした余裕の音色とハードエッジなアドリブフレーズの両立という魅力が全開♪♪~♪ 続くケニー・バレルは都会的なブルースフィーリングを滲ませます。
 そして短いながらも歌心溢れるオスカー・ペティフォードのペースソロを経て、いよいよ登場するサド・ジョーンズは最初、ちょっと人見知りするようなフレーズからハートウォームな持ち味を完全披露♪♪~♪ 途中、ちょいとスケールアウトするような場面もありますが、これは意図的なんでしょうねぇ、きっと。
 またトミー・フラナガンの物分かりの良いピアノが流石です。
 それとシャドウ・ウィルソンのザクザクいうブラシも、個人的には大好き♪♪~♪
 小気味よいアレンジも効果的な名演だと思います。

A-2 Tarriff
 一転してアップテンポの張り切った演奏ですが、それにしてもテーマアンサンブルのアレンジが絶妙! 既にして新しいハードバップという感じです。
 そしてビリー・ミッチェルが真っ向勝負という、モロにハードバップなアドリブが実に痛快とくれば、ケニー・バレルのツッコミも相当なもんです。あぁ、これが時代の勢いって事なのでしょうか。
 トミー・フラナガンのセンスの良さは言わずもがな、満を持してアドリブしていくサド・ジョーンズの、ちょっと浮き上がったような調子は不思議な感覚だと思います。
 そしてこのあたりを聴いていると、サド・ジョーンズは決してハードバップの人ではなく、しかしモダンスイングでも無いし、そんなジャンル分けなんか無用の長物という名手なのかもしれません。

A-3 Little Girl Blue
 このアルバムでは唯一のスタンダード曲で、サド・ジョーンズとケニー・バレルが主役というスローな演奏ですが、寄り添うオスカー・ペティフォードのペースが絶妙のつなぎ役を果たしています。
 実際、温かくメロディをフェイクするサド・ジョーンズのトランペットに素敵なコードを提供するケニー・バレル、そのハーモニーを拡大していくオスカー・ペティフォードのアルコ弾きというコラボレーションは、短いながらも非常に濃い仕上がりだと思います。

B-1 Scratch
 B面ド頭も、これまたグルーヴィなハードバップですが、そのハートウォームな雰囲気が実にたまりません。
 アドリブ先発のサド・ジョーンズも絶好調! 軽妙洒脱にしてオトボケも流石の楽しさという大名演でしょうねぇ~♪ 終わりそうで、なかなか終わらないんですよっ♪♪~♪ するとケニー・バレルが俺にもやらせろっ! という大ハッスルです。
 さらにトミー・フラナガンが、最高ですよっ♪♪~♪ ジェントルなピアノタッチが幾分、硬質な黒っぽさに偏ったあたりも珍しいと思いますが、あの歌心は見事に健在です。
 またビリー・ミッチェルの焦り気味のアドリブも味わい深く、そして安定感抜群のリズム隊の素晴らしさを再認識させられますよ。オスカー・ペティフォードのペースソロも素晴らしいの一言です。

B-2 Zec
 オーラスはアップテンポの快演ですが、個人的にはテーマの煮え切らなさが???
 しかしサド・ジョーンズのアドリブがスタートすれば、そんなモヤモヤは消え去って、思わず手に汗! フレーズ明瞭なれど歌心不明というような、実に不思議な魅力があります。
 そしてケニー・バレルのギターも、決して抜群の技量というわけでは無いと思いますが、そのジャズっぽさというか、黒っぽくて都会的なフィーリングが手クセに直結しているという感じが、やっぱり良いですねぇ~♪
 それはトミー・フラナガンのスイングしまくったアドリブ、またビリー・ミッチェルの真っ黒なテナーサックスにも共通の魅力として存在し、そういうものがハードバップの秘密なのかもしれません。
 クライマックスではドラムソロを起点にしたソロチェンジも熱いですよ。

ということで、正直言うと、最初に聴いた時にはそれほどの作品とは思わなかったバチあたりでした。しかし既に述べたように、サド・ジョーンズのジャンルわけ不可能なトランペットスタイル、そしてデトロイト出身者の当時の勢いが、ほとんど完璧に出た名演集だと思います。

サド・ジョーンズのアレンジも、凝っているわりにはシンプルでイヤミがありません。

ブルーノートにしては地味な1枚かもしれませんが、味わいは特急品だと思います。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

デトロイトはハードバップの街だった

2009-01-05 12:46:29 | Jazz

Motor City Scene (Bethlehem)

デトロイトは自動車と町であり、また今となってはアメリカ大衆音楽の供給地として認識されています。例えば1960年代に大ブレイクしたR&Bポップスの所謂モータウンサウンドは、デトロイトで設立された黒人経営のレコードレーベルで生み出されたものですし、それ以前には優れたジャズプレイヤーを多数、ニューヨークへ送り出しています。

そしてデトロイト周辺も含めて、その地域で活躍していたメンツを集めた企画演奏アルバムも、当然ながら何枚も作られていて、例えばサド・ジョーンズ(tp) をリーダーに据えた「Detroit New York Junction (Blue Note)」とか、新進気鋭の紹介を兼ねた目論見もあった「Jazzmen Detroit (Savoy)」あたりは、特に有名でしょう。

ただし前述のアルバムは、諸事情から参加メンバー全員がデトロイト出身者ではありませんでした。しかしようやく、その目論見が叶ったセッションが、本日の1枚です。

録音は1960年、メンバーとドナルド・バード(tp)、ペッパー・アダムス(bs)、トミー・フラナガン(p)、ケニー・バレル(g)、ポール・チェンバース(b)、ヘイ・ルイスことルイス・ヘイズ(ds) という純粋ハードバップの面々ですから、気心の知れた和みの快演が楽しめます。。

A-1 Stardust
 ホーギー・カーマイケルが書いた、誰もが知っている胸キュンのメロディを、ドナルド・バードが小細工無しに朗々と吹いてくれるのが、まずは嬉しい演奏です。
 そしてなりよりも盤に針を落とした瞬間にポーンと絶妙にエコーの効いたピアノの一音だけというイントロが、実に印象的! そしてすぐさま入ってくるドナルド・バードの艶やかなトランペットの鳴り、それをサポートするベースの寄り添い方も素晴らしいかぎりです。
 もちろんトミー・フラナガンの伴奏も最高ですから、ドナルド・バードも心置きなく原曲メロディのフェイクに勤しみ、じっくりと歌心を醸成させていきますが、これだけのスローテンポで10分を超える演奏時間ということで、ダレる寸前の危うさも否定出来ません。
 しかしそれがギリギリのところでスリルに繋がっているのも、また事実でしょう。それは秀逸なリズム隊によるところ、さらにドナルド・バードの真摯な演奏姿勢というのは、贔屓の引き倒しかもしれませんが……。正直、もう少し緊張感があれば、という気分にさせられますね。
 ちなみにこれはドナルド・バードのワンホーン演奏で、ケニー・バレルさえも休んでいますから、トミー・フラナガンの名人芸が尚更に眩しいのでした。

A-2 Philson
 ペッパー・アダムスが書いたオリジナルのブルースで、まずはポール・チェンバースのウォーキングベースがリードするイントロ、それに続く合奏で気分はグル~~ヴィ♪♪♪ 実際、このヘヴィなファンキー感覚は、かけがえのないリアルタイムのハードバップだと思います。
 そしてアドリブ先発のペッパー・アダムスが、これしかないのゴリ押しバリトンを熱く咆哮させれば、ケニー・バレルはグッとタメの効いたブルースフィーリングで対抗していくのです。あぁ、この雰囲気の良さは、たまりませんねぇ~♪ 重心の低いポール・チェンバースの4ビートウォーキングも最高です。
 またトミー・フラナガンの意図的に抑えたとしか思えないシブイ表現が味わい深く、ドナルド・バードのリラックスした好演を見事に引き出しす露払い♪♪
 ちょっと聴きには非常に地味なムードが全体を覆っていますが、こういうじっくりとしたグルーヴは、秀逸な録音とも密接に影響しあいながら、極上のハードバップを作り出していると思います。

B-1 Trio
 大衆派の名ピアニストとして人気者のエロル・ガーナーが書いたオリジナルですが、この当時はケニー・バレルの十八番としてライブバージョンも残されている楽しいリフ曲ですから、アップテンポで豪快にスイングしていくバンドの勢いが最高です。
 それはペッパー・アダムスのゴリゴリと突き進むバリトンサックスからケニー・バレルのスイングしまくったギターに受け継がれ、さらに溌剌としたドナルド・バードのトランペットからキラキラしたトミー・フラナガンのピアノへと、まさにハードバップの王道を堪能させてくれます。
 ルイス・ヘイズとポール・チェンバースのリズムコンビもハードエッジなリズムを作り出し、クライマックスではドラムスとのソロチェンジも流石ですが、ピアノとギターも含めたリズム隊がコードとビートをぶっつけ合ってゴッタ煮と化したハードなドライヴ感が唯一無二! う~ん、それにしてもルイス・ヘイズが痛快! またポール・チェンバースの唯我独尊も最高ですよっ! このあたりは録音の素晴らしさもあって、尚更にシビレがとまらないです。

B-2 Lebeccio
 ラテンビートと陽気なメロディが黒人感覚で煮詰められた、ニューオリンズのガンボという鍋物料理みたいな演奏です。もちろんその旨みは極上! ルイス・ヘイズのドラミングが同じデトロイト出身のエルビン・ジョーンズっぽいところも憎めません。
 各人のアドリブもコクがあって濃厚な味付けになっていますが、サビの4ビートの部分が全然リラックスしていないのは、凄いグルーヴだと思います。それはやっぱり名人揃いのリズム隊の実力なんでしょうねぇ~~♪

B-3 Bitty Ditty
 オーラスはサド・ジョーンズのオリジナルにして、今に至るもトミー・フラナガンの十八番となったシブイ名曲です。穏かでありながらフックの効いたメロディが、実にジャズ者の琴線を刺戟してくれます。
 そしてアドリブ先発は当然、トミー・フラナガンが薬籠中の名演です♪♪~♪ そのスインギーで奥深いメロディ感覚は本当に飽きません。またドナルド・バードも柔らかな歌心を企図しているようですが、ハードドライヴなベースとドラムスに煽られて戸惑ったり、ケニー・バレルが都会的なブルースフィーリングを漂わせるのは予定調和以上の楽しみでしょう。
 ただしペッパー・アダムスのアドリブソロが出ず、どうもテープ編集疑惑があるような……、

ということで、これは正直、名盤では無いですから、演目とメンツに期待を抱いていると些かハズレる部分も確かにあります。しかし私がこのアルバムを愛聴してしまうのは、その録音の素晴らしさ! ゴッタ煮の中に各楽器の独立した分離の良さ、それでいてガッツ~~ンとぶつかってくるような音の響きが最高にハードバップしていて、ついついボリュームを上げてしまいます。もちろん大音量ならば、なおさらにシビレるでしょう。

そうした観賞方法ではポール・チェンバースとルイス・ヘイズの存在感が強烈に素晴らしく、ウネリと剛直なモダンジャズビートの真髄が楽しめると思います。

ちなみにこのあたりはモノラル、ステレオ両ミックスとも違和感無く楽しめると思いますよ♪ CDは未聴ですが、元々が良いですから、ぜひとも「デトロイトの音」を楽しんでくださいませ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

デトロイトから来た凄い奴ら

2008-11-11 12:23:49 | Jazz

Jazzmen Detroit (Savoy)

デトロイトといえば一般的には自動車産業の都市かもしれませんが、今日では音楽の聖地のひとつとなった感もありますね。

例えば1960年代から大ブームとなった所謂モータウンサウンドと呼ばれるR&Bヒットの数々は永遠に不滅でしょう。そしてジャズの世界にも、デトロイトからニューヨークに出てきて大活躍した名手が大勢いるのです。

このアルバムはそうしたブームを逸早くとらえたタイトルどおりの企画セッションで、メンバーはペッパー・アダムス(bs)、ケニー・バレル(g)、トミー・フラナガン(p)、ポール・チェンバース(b)、ケニー・クラーク(ds) という凄い面々! ただしケニー・クラークだけはデトロイト出身ではなく、しかし当時のサボイのジャズ部門では現場監督的な仕事をやっていましたから、ここでの起用となったのでしょう。まあ、これがエルビン・ジョーンズなら完璧だったんですが、それは言わないのが美しい仕来たりということでしょうね。そのあたり事情から、表ジャケットにはケニー・クラークが登場していないのですから。

ちなみに録音は1956年4月30日&5月9日とされていますが、これはトミー・フラナガンやケニー・バレルにすれば、ニューヨークへ出てきて間もない時期のセッションながら、その演奏は既に超一級の輝きに満ちています――

A-1 Afternoon In Paris (1956年5月9日録音)
 ジョン・ルイスが書いたジェントルな名曲ですから、ここでのソフトタッチの演奏もあたりまえかもしれませんが、個人的には参加したメンツからして、ちょっと意表を突かれた感じです。なにせアルバムのド頭ですからねぇ。
 まずケニー・バレルが意外な感じの小技でテーマをリードし、ペッパー・アダムスのバリトンサックスがそれを補足するアレンジが、なんとなくMJQののムードをハードバップに転換したような……。ケニー・クラークのブラシがさもありなんのムードを増幅させています。
 しかしアドリブパートに入っては、トミー・フラナガンが持ち前の粋なセンスとメロディ優先主義のフレーズ作りで好演♪ するとケニー・バレルもソフトな歌心で続きますから、グッと惹きつけられます。
 このあたりは例えばホレス・シルバーやアート・ブレイキーが推進していたファンキー&ハードドライブな路線とは、一味違ったモダンジャズの快感でしょうねぇ~。
 ですから日頃は白人らしからぬゴリゴリ節のペッパー・アダムスも、微妙に抑制の効いたバリトンサックスがなかなかに良い感じ♪ ミディアムテンポのグルーヴを強靭に支えるポール・チェンバースも自然体です。

A-2 You Turned The Table On Me (1956年5月9日録音)
 トミー・フラナガンの軽快なイントロに導かれ、洒落たアレンジの合奏からペッパー・アダムスが気負いの無いアドリブを聞かせれば、ケニー・バレルは十八番の「節」を出し惜しみしない熱演を披露します。
 このあたりはメンツ的な興味からブリブリのハードバップを期待するとハズレますが、トミー・フラナガンの素晴らしいピアノタッチと歌心が完全融合した日常的な奇跡が楽しめますから、結果オーライ♪
 ポール・チェンバースのベースソロも若さに似合わぬ老獪な味わいがニクイほどですし、全体をビシッと締めるケニー・クラークのスティックは言わずもがなでしょう。

A-3 Apothegm (1956年5月9日録音)
 ポール・チェンバースのグイノリウォーキングから如何にもというテーマメロディは、ペッパー・アダムスの白人らしい感性の作曲ですが、アドリブパートに入るとグッとハードな雰囲気になるのが面白い演奏です。
 ただし曲そのものがあまり冴えない所為か、いずれのメンバーもアドリブに腐心しているというか……。

B-1 Your Host (1956年4月30日録音)
 これもペッパー・アダムスのオリジナル曲ですが、憂いの滲む雰囲気がなかなか琴線に触れますし、力強いミディアムスローのグルーヴもあって、ちょっとシブイんですが、なんとも言えないモダンジャズの快感に酔わされてしまいます。
 特にトミー・フラナガンのミステリアスでソフトな情感が溢れ出たアドリブは秀逸! 流石だと思います。

B-2 Cottontail (1956年4月30日録音)
 デューク・エリントンが書いた、ジャムセッションには最適という景気のよい名曲で、このアルバムの中では特に熱気溢れる演奏になっています。初っ端からいきなり咆哮するペッパー・アダムスのバリトンサックスが、まず最高ですねぇ~。
 アドリブパートでもケニー・バレルとペッパー・アダムスの掛け合いにはゾクゾクさせられますし、珠玉の「トミフラ節」しか出さないトミー・フラナガンの名手の証には最敬礼♪ また些か趣味の良くないポール・チェンバースのアルコ弾きのアドリブも、全体の熱気の中では許せるんじゃないでしょうか。
 
B-3 Tom's Thumb (1956年4月30日録音)
 ケニー・バレルが得意技を出しまくったオリジナルのブルースですから、ハード&グルーヴィなテーマとグイノリのビートにはハードバップの魅力がいっぱい♪
 そしてトミー・フラナガンが素晴らしすぎるアドリブでソフトな黒っぽさを全開させれば、ペッパー・アダムスはブリブリゴリゴリの咆哮でバリトンサックスの醍醐味を堪能させてくれますが、このあたりのムードを完全にとらえたヴァン・ゲルダーの録音技術は、シンバルやベースの響きも鮮やかで力強く、やはり「ハードバップの音」は、これだっ! と痛感させられると思います。

ということで、A面はジェントルサイド、B面はハードバップサイドというアナログ盤ならではの構成もニクイですね。決して名盤ではありませんし、ジャズ喫茶の人気盤でもないでしょうが、やはりハードバップ好きには堪えられないアルバムでしょう。そのハードエッジな録音からはセッション全体の雰囲気の良さが溢れ出てくるという、まさに1956年のニューヨーク&デトロイトの「モダンジャズな音」が楽しめるのでした。

そしてやはりモーターシティをイメージしたジャケットのデザインも、賛否両論の楽しさが横溢しています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする