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サイケおやじの生活と音楽

胸の振子と男の世界

2017-06-27 20:16:30 | Movie
胸の振子 / 石原裕次郎 (テイチク)

全く早いもので、今年は石原裕次郎没後30年……。

ですから、既に各方面で様々な追想企画が現在進行中ですので、拙ブログもそれに追従し、本日のご紹介は、サイケおやじが故人の数多い主演作品の中でも大好きな、昭和46(1971)年正月明けに公開された「男の世界(日活&石原プロ製作 / 長谷部安春監督)」の主題歌「胸の振子」を取り出しましたが、これは皆様ご存じのとおり、石原裕次郎のオリジナルヒットではなく、作詞:サトウハチロー&服部良一が昭和22(1947)年に提供した霧島昇の大ヒットであり、今では昭和歌謡曲というよりも、我が国の歌謡スタンダードとしても有名な傑作ですから、カバーバージョンも数多吹き込まれてきた中にあって、サイケおやじが石原裕次郎の歌唱が一番に好きなのは、この映画「男の世界」があっての事ですので、まずはその物語を簡単にご紹介させていただきます。

で、石原裕次郎が演じるのは、恋人を突然の出来事から殺害され、失意のうちに国外へ旅立った元クラブ経営者であり、またヨット連盟の会長でもあった粋な男とは、まさに石原裕次郎のイメージそのまんまであり、その主人公が5年ぶりに帰国するという発端も含めて、それは映画デビュー以来の日活で演じてきた劇中の人物とも重なる設定が、実はこの「男の世界」の主題に大きく関わっています。

なにしろ、良く知られているとおり、当時の石原裕次郎は既に昭和38(1963)年に自ら設立した石原プロモーションからの制作をメインにし、日活とは幾分距離を置いての活動になっており、それゆえに主演作品にしても、配給だけは日活という形態はもちろんの事、昭和44(1969)年からは、ついに他社の作品へも出演するという実質フリーな二足の草鞋とでも申しましょうか、そんなこんなも日本映画全体の不況と凋落、日活という会社そのものの低迷があった事は説明不要かと思います。

ですから、当時の石原裕次郎は日活の撮影所に入っても、周囲の冷たい目線を感じる事が常態化していたと云われていますし、また所属俳優の石原プロへの移籍、さらには同プロの資金繰りの悪化等々も相互作用していた時期の制作でしたから、結果的に故人が最後に主演した日活作品という歴史(?)を知ってみれば、劇中の演出や台詞にも、意味深な味わいが様々に散見されるんだなぁ~、とサイケおやじは、ますます愛着が強くなっているというわけです。

物語は、そうした石原裕次郎が空港で出迎える仲間から逃れるようにして、以前自分が経営していたナイトクラブにやってくれば、待っているのは、前述した事件を担当した刑事の宍戸錠という展開が、いきなりのハードボイルドです。

それは問題の事件の首謀者として服役しているヤクザの内田良平が折しも釈放されるという事から、石原裕次郎が帰国したのは、恋人の復讐なのか? という懸念による、なんとも友情と仕事の間にあっての自意識過剰とも思える行動なんですが、そこのところを決して石原裕次郎は曖昧にしたまま、旧友が世話してくれた仕事に就くのですが、当然ながら今は解散している内田良平の組の子分達は穏やかではありません。

そして、様々な登場人物が、各々ハードボイルドな事情を抱えつつ、重なり合うドラマの流れが長谷部安春監督ならではの憎らしいほどカッコイイ演出と映像美学で撮られているのですから、たまりません♪♪~♪

特に主人公が、自分がここに帰ってきたのは間違いだったのか? 自分が帰ってきた事により、それまで穏やかだった仲間の生活や人間関係が縺れてしまったのではないか? 等々と苦悩するあたりは、まさに日活を離れながらも、そこから断ち切れない「縁」と「絆」を感じざるを得なかった石原裕次郎の立場が否が応でも劇中から伝わってくると、サイケおやじは痛切に思いますし、登場人物の各場面における台詞の様々な箇所に、それと思わせる気持ちが滲み出ているところが相当にあるのですから!?

それは共演者が玉川伊佐男、川地民夫、武藤章生、鳥居恵子等々の、所謂石原組のメンバーに顕著ですし、中でも件のナイトクラブでマネージャーを務めている玉川伊佐男が「また、紺野(石原裕次郎)さんの下で働きたいと思っています」云々と語る場面は、過言ではなく劇中劇でしょう。

また、映像構成においても、石原裕次郎の過去の名作のワンシーンを思わせるカットや演出が頻発しているのもニクイばかりですし、往年の傑作テーマ曲「赤いハンカチ」や「夜霧よ今夜も有難う」が再び歌われるのも、また然り♪♪~♪

さて、そこでこの主題歌「胸の振子」は、現在と過去のしがらみに迷いを感じる石原裕次郎が、自分が経営していた時代から今もナイトクラブに入っている黒人ピアニストのジョニーに、そんな独白をするところで歌われるんですが、ここは作品のハイライトともいうべき名場面!

些かネタバレになりますが、この「胸の振子」は亡くなる前にこの店専属の歌手だった恋人の十八番であり、その頃から変わらぬ雰囲気でピアノを弾き続けているジョニーには、落ち込んでいる石原裕次郎が、あまりに悄然と……。

そこでピアノ伴奏だけで、所縁の「胸の振子」を石原裕次郎に歌うように勧めるという展開から、その甘くせつない歌唱は本当に胸に迫ってきますよ♪♪~♪

しかも、この場面、終盤で何時の間にか店に来ていた因縁の内田良平と石原裕次郎のクールで熱い言葉の対決があり、これまた唐突に、同時に自然に二人の間に割って入る宍戸錠が、グラスを渡し、無言で一緒に酒を飲むという演出のバックには、粋なピアノのメロディが流れているという、本当に泣いてしまうハードボイルドが、ここでご覧になれます。

いゃ~、サイケおやじは、本当にここがあるから、この「男の世界」という映画が大好きなのですっ!

そして肝心の掲載盤に収録された「胸の振子」は所謂バンドバージョンなんですが、こっちの映画サントラバージョンは、ピアノだけを伴奏にした、個人的にはその悄然としてハートウォームな歌と演奏に心底、シビレが抑えられないというのが本音ですので、これは皆様にも、ぜひとも鑑賞していただきたいところであります。

幸いなことに、先日はCS放送もあったんですが、いよいよ7月13日に発売がスタートする「石原裕次郎シアターDVDコレクション」で、しっかりと復刻されますので、存分にお楽しみ下さいませ。

ということで、物語はこの後、事件の真相から予定調和とは上手い具合にズレた結末があって、登場人物の個性も活かされた結末になっています。

まあ、今となっては甘いと思われる皆様もいらっしゃるでしょうが、それもまた往年の日本映画の面白さであるとすれば、流石は石原裕次郎の主演作は良く仕上がっていると再認識しているのでした。
 
石原裕次郎、永遠なれっ!
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