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2017-07-14 11:30:03 | 日記
その3 捕った命は全て肉

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 南アルプスの麓、豊かな自然に囲まれた、長野県伊那市長谷の「ざんざ亭」は、地元で捕った鹿を使ったフルコースが味わえる民宿だ。
 店主は長谷部晃さん(42)。北アルプスの槍ヶ岳山荘で長いこと働いていたが、「登山というのは山から搾取するだけの立場。今度は山を〝作ろう〟」との思いで林業を志し、槍ヶ岳を下りた後に長野県の上伊那森林組合に就職し、植林や伐採などの様々な技術を習得した。そしてその後に選んだのが、鹿ジビエ料理人の道だったという。一から加工・調理技術を習得した長谷部さんが手間ひまかけてふるまう鹿肉料理目当てに、今では全国から人が訪れる。
 捕獲鳥獣の処理に頭を悩ませ、有効活用の可能性を探る地域も多い中、「捕った命は全て肉」という信条のもと、鹿料理の新たな可能性を探求し続ける長谷部さんにお話を聞いた。


山への興味から鹿ジビエ料理人へ


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 「もともと山が好きで山のことならなんでも興味があったので、猟免許も取得して、以前はチームで猟もしていました。ただ、鹿が捕れてもその扱いや調理法は雑で、当時は食べても全く旨いと思わなかったんです」
 10年ほど前、自身が狩猟をしていた頃のことをそう語る長谷部さん。当時からこの地域ではニホンジカが多く捕れたそうだが、その多くが無駄にされている状況に疑問を持った長谷部さんは、「もっとやり方があるだろうと思った。当時はまだ鹿肉調理のレシピなんかもなかったので、鹿を美味しく調理することに興味を持ったんです」と語る。
 そんな彼がざんざ亭を開いたのは今から5年ほど前。目指したのは「山を使った民宿」だ。


山奥の店だからこそ、地域の味を楽しんでもらう


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 最初は、市街地に地元の人を対象にした居酒屋を開いて、鹿肉カレーを出していた。だが、「地域の人にはジビエはなかなか受け入れられませんでしたね。地域柄、『山肉を食うなら刺身を食べたい』って思うのかな」。そのうち現在の場所に物件が空いているという紹介を受け、この場所でなら、やりたかった「山を使った民宿」ができると思って移転を決めた。
 「この場所に来たら、商圏が変わった」と長谷部さんは話す。地元の人を相手にしていた居酒屋時代と異なり、現在ざんざ亭には、県外から訪れるお客さんの比率が圧倒的に多いという。そんな利用客らに対し「山奥にある店だからこそ、この地域のものが食べたいはず」と、伊那の鹿肉を中心に、地域でとれた野草や野菜などにこだわって提供している。


鹿猟ツアー


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 ざんざ亭を訪れた人が味わえるのは、鹿肉料理だけではない。山をより身近に感じ、猟師の日常について知ってもらおうと年に数回企画している「鹿猟ツアー」というものがある。このツアーでは、希望者が猟師と共に長谷の山の中に入り、わなを仕掛けるところに立ち会い、夜には囲炉裏を囲んで猟師と共に鹿肉料理を味わいながら猟や山にまつわるいろんな話をする。翌朝わなを仕掛けた地点へ行って鹿がかかっていればその場でしめて解体場まで持っていき、解体の様子まで見るという。なんとも濃い内容のツアーだ。「生きていた命がどうやって肉になるのかを見て、考えてもらいたい」と長谷部さん。
 宿泊費まで含めてツアーの参加費用は3万5千円と、決して安い価格ではないが、それでもこのツアーには毎回全国から希望者の申し込みがいっぱいになるそうだ。


個体を見極める『目』が大切


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 現在ざんざ亭では、年間40~50頭の鹿を使用し料理提供している。法整備(野生鳥獣肉の衛生に関する指針)によって直接猟師から肉を仕入れることはできなくなったが、長谷部さんが信頼を置く処理施設で、捕獲された鹿の状態を自らの目で確かめたうえで鹿肉を仕入れることを徹底している。これには「解体前の状態を見なければ、調理はできないはず」という長谷部さんのこだわりがある。一頭一頭、個体によってその状態はさまざまで、それを確認しないことには調理法を見極められないからだ。獣肉を扱う以上は、「食肉解体施設との信頼関係がとても重要」と実感を込めて話した。「法整備された以上は自分で解体場を持つ料理人も増えるのかもしれないね。ジビエと聞くと、衛生面ばかりが重要視される側面があるけれど、個体を見極める技術をもっと広めなければいけない」
 長谷部さん自身は、現在は猟をしていない。「自分は料理を作る人。猟をする人、解体する人、それぞれの役割がちゃんとしたら、回収率も上がってくるんじゃないかな」と語る。


捕った命は全て肉


 「捕った肉は全て使いたい」というのが長谷部さんの信条だ。そのためには、「狩猟の現場から解体施設まで、運ぶ人が必要」と考える。猟師と解体施設をつなげる人がいれば、今よりもっと回収率が上がり、より多くの個体を食肉として使えると考えるからだ。「捕った命は全て肉。それを活かす技術はいくらでもある。それを考えたい」と力をこめて語った。
 さらに、今後は鹿肉を調理提供するだけでなく、それを使用した加工品を作って売る、という事業展開も視野に入れているそうだ。「地域の中で人を雇い、地域のものを売る―事業として成功したら、ジビエがもっと地域に根付くと思う」と瞳を輝かせて語る。
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