帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの「古今和歌集」 巻第四 秋歌上 (175) 天河もみぢを橋にわたせばや

2017-03-15 20:51:46 | 古典

             

 

                         帯とけの古今和歌集

                ――秘伝となって埋もれた和歌の妖艶なる奥義――

 

古典和歌を、平安時代の紀貫之、藤原公任、清少納言、藤原俊成の歌論と言語観に従って紐解いている。

仮名序の冒頭に「やまと歌は、人の心を種として、よろずの言の葉とぞ成れりける」とあるように、歌は人の心を表出したものである。四季の風物の描写は、その心を寄せるべき「清げな姿」で、歌の主旨や趣旨は人の心である。その「深き旨」は歌言葉の戯れのうちに顕れる。

 

古今和歌集  巻第四 秋歌上 175

 

(題しらず)                   (よみ人しらず)

天河もみぢを橋にわたせばや たなばたつめの秋をしもまつ

                        (よみ人知らず・女の歌として聞く) 

(天の川、紅葉を橋のように渡すからかしら、織姫星が、秋をよ・彦星をも、待っている……吾女の川、も見じおとこ、身の端に、渡しているのか・渡せ速、織姫が・多なはたまたの女が、飽き満ち足りを待っているのよ)。

 

 

歌言葉の「言の心」を心得て、戯れの意味も知る

「天河…天の川…あまの川…吾女の川…吾がおんな」「もみぢ…紅葉…も見じ…あゝ見ないのだろう…厭き色」「ぢ…じ…打消しの推量の意を表す」「を…対象を示す…お…おとこ」「はし…橋…端…身の端…おとこ…おんな」「に…のように(比喩を表す)…に(場所を示す)」「ばや…だからなのだろうか(疑いを表す)…したいものだ(自分の希望を表す)…はや…早…速く…強烈に」「たなばたつめ…七夕姫…織姫星…多なはたつ女…多のその上またのおんな」「な…の」「はた…機…はたまた…その上に」「つ…の」「め…女…おんな」「あき…秋…飽き…飽き満ち足り」「をしも…お下…お肢も…おとこも」「しも…強意を表す」。

 

秋になれば、天の川にも紅葉が敷き詰められるのかな、織姫は、その橋を渡り来る彦星を待っている。――歌の清げな姿。

あゝ見ないだろうおとこを、吾間の川に渡しているのかしら、わたせや、強烈に、多情な女が飽き満ち足りを待っている。――心におかしところ。

 

七夕伝説を歌の「清げな姿」として、女の心に思うことを表出した歌である。

このような七夕伝説を「清げな姿」にして心に思うことを言い出す歌は、万葉集「巻第十 秋雑歌七夕」の歌に先例が多数ある。原文の漢字が煩わしいので、敢えて、古今集風の歌にして二首紹介する。

2077  渡し守舟はや渡せひととせに ふたたび通ふ君ならなくに

(船頭さん、舟、早く渡せ、一年に再び通ふ、君ではないのだから・今宵だけなのよ……渡し守、夫根、速、渡せ、女と男に、再び通う貴身ではなのだから・一過性なのよ)

2087  渡し守舟出しぬらむ今宵のみ 相見てのちは逢えぬものかも

(船頭さん、舟出したでしょうか、今宵だけなの、逢い見つめあって後は、再び逢えない別れなのよ……渡し守、夫根、出してしまったようね、今宵だけ、合い見て後は、再び・合えないものかなあ)

 

「渡守…船頭…おとこ…渡し場守り…おんな」「舟…夫根…おとこ」「はや…早…すぐに…速…強烈に」。

「出しぬ…出した…出港した…出てしまった(情念のおとこ白玉か)」「相…相互…逢い…合…和合」「見…覯…媾…まぐあい」「ものかも…ものかな…ものなのかなあ」。

 

(古今和歌集の原文は、新 日本古典文学大系本による)

ジャンル:
文化
この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 帯とけの「古今和歌集」 巻... | トップ | 帯とけの「古今和歌集」 巻... »

あわせて読む