帯とけの古典文芸

和歌を中心とした日本の古典文芸の清よげな姿と心におかしきところを紐解く。深い心があれば自ずからとける。

帯とけの「古今和歌集」 巻第八 離別歌 (372)わかれてはほどを隔つと思へばや

2017-12-26 20:54:34 | 古典

            

                        帯とけの「古今和歌集」

                      ――秘伝となって埋もれた和歌の妖艶なる奥義――

 

平安時代の紀貫之、藤原公任、清少納言、藤原俊成の歌論と言語観に従って「古今和歌集」を解き直している。

貫之の云う「歌の様」を、歌には多重の意味があり、清げな姿と、心におかしきエロス(生の本能・性愛)等を、かさねて表現する様式と知り、「言の心(字義以外にこの時代に通用していた言の意味)」を心得るべきである。さらに、藤原俊成の云う「浮言綺語の戯れに似た」歌言葉の戯れの意味も。

 

古今和歌集  巻第八 離別歌

 

友だちの人の国へまかりけるによめる    在原滋春

わかれてはほどを隔つと思へばや かつ見ながらにかねて恋しき

(友だちが、他の国へ赴任したときに、詠んだと思われる・歌……生まれた時よりのとも立ちが、女のくにへ行ったので、詠んだらしい・歌)(ありはらのしげはる・業平の子

(別れれば、程を隔てると思うからかな、目に・見ているのに、はやくも今から、君が、恋しいことよ……別れれば、ほ門・ほと、を隔てると思うからかな、見ているのに、今からもう・わが貴身が、恋しいよ)。

 

「ともだち…友だち…伴立ち…男は生まれた時から伴に立っているもの」。

「わかれては…別れると…離れると」「ほど…程…距離…時間…ほと…を門…おとことおんな」「ほ…お…おとこ」「と…門…おんな」「へだつ…間を置く…時間を置く…遠ざかる」「かつ…且つ…一方では…すぐに…次から次へと」「見…目で見ること…覯…媾…まぐあい」「かねて…予ねて…前もって」。

 

都と他国に・別れては、距離を隔てると思うからかな、いま君を見ながら、前もって恋しい思いがするよ――歌の清げな姿。

別れわかれになれば、お門、を物が隔てると思うからかな、居続けてそらに見ながらも、予ねて、むなしいわが貴身が恋しいよ――心におかしきところ。


 友達に、生まれて以来の伴立ちに、語りかけた歌。

 

(古今和歌集の原文は、新 日本古典文学大系本による)